第3章 長期修繕計画の作成の方法


第1節 長期修繕計画の作成の方法

1 長期修繕計画の構成
長期修繕計画の構成は、次に掲げる項目を基本とします。
@ マンションの建物・設備の概要等
A 調査・診断の概要
B 長期修繕計画の作成・修繕積立金の額の設定の考え方
C 長期修繕計画の内容
D 修繕積立金の額の設定

 〔コメント〕〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

◆長期修繕計画の標準的な構成として必要とされる項目は、次のとおりです。

(〇長期修繕計画の見方)

@ マンションの建物・設備の概要等
 建物の概要、設備・外構等の概要、関係者、管理・所有区分、維持管理の状況、会計状況、設計図書等の保管状況

A 調査・診断の結果の概要
 劣化の現象と原因、修繕(改修)方法の概要

B 長期修繕計画の作成・修繕積立金の額の設定の考え方
 長期修繕計画の目的、計画の前提等、計画期間の設定、推定修繕工事項目の設定、修繕周期の設定、推定修繕工事費の算定、収支計画の検討、計画の見直し及び修繕積立金の額の設定の考え方

C 長期修繕計画の内容
 a)計画期間の設定
 b)推定修繕工事項目の設定
 c)修繕周期の設定
 d)推定修繕工事費の算定
 e)収支計画の検討

D 修績積立金の額の設定
 修繕積立金の積立方法、修繕積立金の額の設定方法、住戸タイプ別月当たりの修繕積立金の額


 〔参  考〕〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

管理標準指針(四 建物・設備の維持管理 (二)長期修繕計画の作成・見直し)
1 計画の作成・見直し

標準的な対応 調査・診断を行い、建物・設備等の状況を把握したうえで、@計画期間、A修繕工事項目、B修繕周期、C修繕工事費及びD収支計画の全ての項目について定めている。

標準管理規約 第32条(業務)関係コメント@〜B
@ 建物を長期にわたって良好に維持・管理していくためには、一定の年数の経過ごとに計画的に修繕を行っていくことが必要であり、その対象となる建物の部分、修繕時期、必要となる費用等について、あらかじめ長期修繕計画として定め、区分所有者の間で合意しておくことは、円滑な修繕の実施のために重要である。
A 長期修繕計画の内容としては次のようなものが最低限必要である。
1 計画期間が25年程度以上であること。なお、新築時においては、計画期間を30年程度にすると、修繕のために必要な工事をほぼ網羅できることとなる。
2 計画修繕の対象となる工事として外壁補修、屋上防水、給排水管取替え、窓及び玄開扉等の開口部の改良等が掲げられ、各部位ごとに修繕周期、工事金額等が定められているものであること。
3 全体の工事金額が定められたものであること。
 また、長期修繕計画の内容については定期的な(おおむね5年程度ごとに)見直しをすることが必要である。
B 長期修繕計画の作成又は変更及び修繕工事の実施の前提として、劣化診断(建物診断)を管理組合として併せて行う必要がある。



2 長期修繕計画標準様式の利用
 長期修繕計画は、標準様式を参考として作成します。
 なお、マンションには様々な形態、形状、仕様等があるうえ、立地条件も異なっていることから、これらに応じた適切な長期修繕計画とするため、必要に応じて標準様式の内容を追加して使用します。

 〔コメント〕〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

◆分譲時における分譲事業者、又は見直し時において管理組合から依頼を受けた専門家は、標準様式を参考として、長期修繕計画を作成します。
 また、作成に当たっては、別添の「長期修繕計画標準様式記載例」(以下「記載例」という。)を併せて参考にしてください。

◆標準様式は、標準的な構成に次のように対応しています。
  @ マンションの建物・設備の概要等 ⇒  【様式第1号】
  A 調査・診断の結果の概要 ⇒  【様式第2号】
  B 長期修繕計画の作成の考え方 ⇒  【様式第3―1号】
  C 長期修繕計画の内容  
     a)計画期間の設定 ⇒  【様式第3―1号】
     b)推定修繕工事項目の設定 ⇒  【様式第3―2号】
     c)修繕周期の設定 ⇒  【様式第3―2号】
     d)推定修繕工事費の算定 ⇒  【様式第4―3号第4―4号
     e)収支計画の検討 ⇒  【様式第4―1号第4―2号
  D 修績積立金の額の設定 ⇒  【様式第5号】

◆標準様式では、中高層の単棟型マンションを想定しており、その仕様は、記載例の様式第3―2号では、「公共住宅改修工事仕様」などを参考としています。
 なお、マンションには、様々な形態、形状、仕様等がありますので、これらに応じた適切な長期修繕計画の内容とするために、必要に応じて内容を追加して使用します。追加した場合は、その内容を明示します。


 〔参  考〕〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

〇公共住宅改修工事共通仕様書  (公共住宅事業者等連絡協議会編集、(株)創樹社発行)
 独立行政法人都市再生機構、都道府県等により構成される公共住宅事業者等連絡協議会により、公共住宅の適切な維持保全を図るために作成されたものです。



3 マンションの建物・設備の概要等
 敷地、建物・設備及び附属施設の概要(規摸、形状等)、関係者、管理・所有区分、維持管理の状況(法定点検等の実施、調査・診断の実施、計画修繕工事の実施、長期修繕計画の見直し等)、会計状況、設計図書等の保管状況等の概要について示すことが必要です。
 特に、管理規約及び設計図書等に基づいて、長期修繕計画の対象となる敷地(団地型マンションの場合は土地)、建物の共用部分及び附属施設の範囲を明示することが重要です。
 また、建物及び設備の劣化状況、区分所有者の要望等に関する調査・診断の結果について、その要点を示すことも必要です。

 〔コメント〕〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

◆長期修繕計画の対象となるマンションの敷地(団地型の場合は土地)、建物の共用部分及び附属施設の概要とこれらの維持管理の現状などについて確認し、その状況を示しておくことが必要です。
 特に、組合管理部分である敷地、建物の共用部分及び附属施設(団地型の場合は、土地、団地共用部分及び附属施設並びに各棟ごとの建物の共用部分)について、所有区分・使用区分・管理区分のそれぞれの範囲を、管理規約、設計図書等に基づいて、明示しておくことが重要です。

◆また、調査・診断の結果について、建物や設備の劣化の現象とその原因、区分所有者の要望など、これらに対する修繕(又は改修)の方法などに関して、推定修繕工事項目別に要点をまとめて示します。なお、同趣旨の記載がある調査・診断報告書の概要をまとめたもので代えることもできます。



4 長期修繕計画の作成の考え方
 長期修繕計画の作成の目的、計画の前提等、計画期間の設定、推定修繕工事項目の設定、修繕周期の設定、推定修繕工事費の算定、収支計画の検討、計画の見直し及び修繕積立金の額の設定に関する考え方を示すことが必要です。

 〔コメント〕〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

◆長期修繕計画を作成する目的、計画の前提等、長期修繕計画の内容(計画期間の設定、推定修繕工事項目の設定、修繕周期の設定、推定修繕工事費の算定、収支計画の検討)、計画の見直し及び修繕積立金の額の設定に関して、作成に当たっての基本的な考え方を整理しておきます。

◆長期修繕計画を作成する目的と計画の前提等に関しては、本ガイドラインの第2章第1節の1と2、長期修繕計画の内容や修繕積立金の額の設定を参考にします。
    【ガイドラインの該当箇所】
  @ 長期修繕計画の目的 ⇒   【第2章第1節の1】
  A 長期修繕計画の前提等 ⇒   【第2章第1節の2】
  B 長期修繕計画の内容  
    〇 計画期間の設定 ⇒   【第3章第1節の5】
    〇 推定修繕工事項目の設定 ⇒   【第3章第1節の6】
    〇 修繕周期の設定 ⇒   【第3章第1節の7】
    〇 推定修繕工事費の算定 ⇒   【第3章第1節の8】
    〇 収支計画の検討 ⇒   【第3章第1節の9】
  C 修繕積立金の額の設定 ⇒   【第3章第2節の3】



5 計画期間の設定
 計画期間は、新築マンションの場合は、30年以上とし、既存マンションの場合は、25年以上とします。

 〔コメント〕〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

◆計画修繕工事の実施時において修繕積立金が不足することがないように、多額の推定修繕工事費が見込まれる年度を含むように計画期間を設定する必要があります。
 したがって、新築時は、経年が30年程度において実施が見込まれる昇降機設備、給水設備、排水設備の取替えなどを含めた期間以上とします。また、外構の塗装や屋上防水などを行う大規模修繕工事の周期が12年程度ですので、見直し時には、これが2回含まれる期間以上とします。
 ただし、新築時に計画期間を30年とした場合であっても、住戸の玄関ドアや窓のサッシ等の建具の取替えなどは、修繕周期が36年程度であるため含まれていないことがありますので、見直しの際には注意が必要です。

◆毎月積み立てる修繕積立金の額は、できる限り一定額としたいものです。そのためには、計画期間をさらに長期間とし、見込まれる多額の推定修繕工事費をすべて包含することが考えられますが、計画の作成時点で非常に長期間の劣化状況や推定修繕工事費を推定することには限度があります。

◆ついては、多額の推定修繕工事費が見込まれる年度を含む計画期間を25年以上(新築時は30年以上)とし、一定期間ごとに見直すこととしています。


 〔参  考〕〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

管理標準指針(四 建物・設備の維持管理 (二)長期修繕計画の作成・見直し)
 1 計画の作成・見直し @計画期間

標準的な対応 25年程度としている。(新築時30年程度としている。)

標準管理規約 第32条関係コメントA 1
A 長期修繕計画の内容としては次のようなものが最低限必要である。
1 計画期間が25年程度以上であること。なお、新築時においては、計画期間を30年程度にすると、修繕のために必要な工事をほぼ網羅できることとなる。



6 推定修繕工事項目の設定
 推定修繕工事項目は、新築マンンョンの場合は、設計図書等に基づいて、また、既存マンションの場合は、現状の長期修繕計画を踏まえ、保管されている設計図書、修繕等の履歴、現状の調査・診断の結果等に基づいて設定します。
 なお、マンションの形状、仕様等により該当しない項目、又は修繕周期が計画期間に含まれないため推定修繕工事費を計上していない項目は、その旨を明示します。
 また、区分所有者等の要望など必要に応じて、建物及び設備の性能向上に関する項目を追加することが望まれます。

 〔コメント〕〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

◆推定修繕工事項目は、標準様式第3―2号(推定修繕工事項目、修繕周期等の設定内容)を基本としますが、設計図書などに基づいて項目を追加し、漏れがないようにします。小項目は、補修と取替(撤去・新設)の区分、また、部位別に分けることが考えられます。
 さらに、部位別の仕様レベルまで詳細に項目を設定することも考えられますが、作成の費用が増加するため、どこまでの精度を求めるかは、費用対効果の面からの判断が必要です。

◆中項目に仮設工事を設けています。例えば、大規模修繕工事における複数の計画修繕工事に用いられる仮設足場などの直接仮設工事と、現場事務所や資材置き場などの共通仮設工事の費用を計上します。ただし、設備関係の専門工事のように単独で行われることが多いものについては、必要とする仮設工事の費用をその推定修繕工事項目(小項目)の単価に含めます。

◆新築時に計画期間を30年とした場合において、例えば、「建具関係」の取替は、修繕周期が36年程度ですので、「修繕周期に到達しないため推定修繕工事費を計上していない。」旨を明示します。なお、計画期間内に修繕周期に到達しない「建具関係」の取替などについて、多額の費用を要することから推定修繕工事費を計上しておくことも考えられます。
 また、例えば、外壁等がすべてタイル張りであれば、「外壁塗装の塗替」の項目は「該当なし」とします。

◆計画修繕工事は不確定要素が多く、施工時において予想外の劣化や施工条件の制約などにより工事費が増加することがあります。計画修繕工事における想定外の工事の発生や数量の増加、物価上昇等による費用の増加、災害や不測の事故などによる緊急の費用負担などの対応として、その都度一時金を徴収することが考えられますが、推定修繕工事項目として「予備費」を設定し、例えば、各年度ごとに推定修繕工事費の累計額に定率を乗じた額を計上しておくことも考えられます。

◆区分所有者等からの要望などに応じて、建物・設備の性能・機能を向上させる改修工事を行うことが望まれます。長期修繕計画にその項目を設定して必要な工事費を計上し、修繕積立金を増額することが必要です。特に、昭和56年5月31日以前に着工したマンションで、耐震診断の結果により耐震改修が必要となった場合において、耐震改修工事の費用が負担できないなどの理由によりすぐに実施することが困難なときは、推定修繕工事項目として設定することが考えられます。
 なお、改修工事については、「マンション耐震化マニュアル」、「改修によるマンションの再生手法に関するマニュアル」などを参考にして検討します。


 〔参  考〕〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

管理標準指針(四 建物・設備の維持管理 (二)長期修繕計画の作成・見直し)
標準的な対応 調査・診断の結果に基づいて、別表に掲げる18項目のうち、必要な項目の工事内容を定めている。
望ましい対応 社会的背景や生活様式の変化等に応じ、性能向上(グレードアップ)工事の項目を計画に含めている。

管理標準指針(四 建物・設備の維持管理 (五)耐震性の検討 1 耐震性の検討)
標準的な対応 必要に応じて耐震診断を行い、専門委員会等において検討している。
望ましい対応 耐震診断の結果に基づいて、必要な耐震改修工事を実施している。

標準管理規約 第32条(業務)関係コメントA 2
A 長期修繕計画の内容としては次のようなものが最低限必要である。
2 計画修繕の対象となる工事として外壁補修、屋上防水、給排水管取替え、窓及び玄開扉等の開口部の改良等が掲げられ、各部位ごとに修繕周期、工事金額等が定められているものであること。

〇改修工事の参考資料
@ 改修
 「改修によるマンションの再生手法に関するマニュアル」(平成16年6月 国土交通省)
  http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/mansei/manseitatekae.htm
A 耐震
 「マンション耐震化マニュアル」(平成19年6月 国土交通省)
  http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/torikumi/torikumi.html#mansyonseisaku
B 省エネルギー
 「エネルギーの使用の合理化に関する法律」の改正(平成18年4月施行)
 「住宅に係るエネルギーの使用の合理化に関する建築主等及び特定建築物の所有者の判断の基準」
  (平成18年3月改正 平成18年経済産業省・国土交通省告示第3号)
  http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/syouene/shouene.html
C バリアフリー
 「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」(平成18年12月施行)
  http://www.mlit.go.jp/houritsuan/164-9/03.pdf
 「長寿社会対応住宅設計指針」(平成7年6月 国土交通省)
  http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/torikumi/sisin01.htm
D 防犯(セキュリティ)
 「共同住宅に係る防犯上の留意事項及び防犯に配慮した共同住宅に係る設計指針」
  (平成18年4月改正 国土交通省)
  http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha06/07/070420_.html
E ICT(情報通信技術)
 「インターネットアクセスの円滑化に向けた共同住宅情報化標準」(平成14年7月 国土交通省)
 「既存共同住宅のインターネット接続環境の整備に係る合意形成マニュアル」(同上)
 「既存共同住宅のインターネット接続環境の整備に係る技術指針」(同上)
  http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha02/07/070719_.html



7 修繕周期の設定
 修繕周期は、新築マンションの場合、推定修繕工事項目ごとに、マンションの仕様、立地条件等を考慮して設定します。また、既存マンションの場合、さらに建物及び設備の劣化状況等の調査・診断の結果等に基づいて設定します。
 設定に当たっては、経済性等を考慮し、推定修繕工事の集約等を検討します。

 〔コメント〕〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

◆修繕周期は、劣化する建物の部位や設備の性能・機能を実用上支障がない水準まで経済的に回復させることができなくなるまでの期間をいいます。

◆記載例の標準様式第3―2号に掲げる修繕周期は、中高層単棟型のマンションの一般的な仕様や工法を想定し、関係する既存文献を参考にしておおよその目安として設定したものです。マンションの仕様、立地条件等に応じて修正します。その際は、その理由を明示しておきます。また、見直しの際は、さらに建物及び設備の劣化状況などの調査・診断の結果に基づいて設定することが必要です。

◆修繕工事の時期は、早すぎると不要な修繕となりますし、遅すぎても劣化が進み計画修繕工事費を増加させます。また、修繕工事を集約すると、直接仮設や共通仮設の設置費用が軽減できるなどの経済的なメリットがあります。なお、集約を過剰に行うと、修繕積立金が一時的に不足することにもつながりますので、注意が必要です。


 〔参  考〕〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

管理標準指針(四 建物・設備の維持管理 (二)長期修繕計画の作成・見直し)
 1 計画の作成・見直し B 修繕周期

標準的な対応 部材の耐用年数、修繕履歴等を踏まえ、調査・診断の結果に基づいて設定している。

〇修繕周期に関する既存資料の例
〇「長期耐用都市型集合住宅の建設・再生技術の開発 ―ストック長命化技術の開発最終報告―」
   /H14.3(独)建築研究所
〇「建築物のライフサイクルコスト」/H17.9国土交通省大臣官房官庁営繕部監修
〇「長期修繕計画の作成および適正な修繕積立金の設定について(改訂版)」/(社)不動産協会
〇「長期修繕計画案作成の手引き」/H18.1(社)高層住宅管理業協会
〇「建築物のLC評価用データ集(改訂第3版)」/H14.4(社)建築・設備維持保全推進 協会発行
〇「マンションの修繕積立金算出マニュアル」/H16.11(財)マンション管理センター発行

修繕周期の例(標準様式3―2号記載例の修繕周期(参考)から)
修繕周期の例(標準様式3―2号記載例の修繕周期(参考)から)



8 推定修繕工事費の算定
一 数量計算の方法

 数量計算は、新築マンションの場合、設計図書、工事請負契約による請負代金内訳書、数量計算書等を参考として、また、既存マンションの場合、現状の長期修繕計画を踏まえ、保管している設計図書、数量計算書、修繕等の履歴、現状の調査・診断の結果等を参考として、「建築数量積算基準((財)建築コスト管理システム研究所発行)」等に準拠して、長期修繕計画用に算出します。

 〔コメント〕〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

◆標準様式第4―4号(推定修繕工事費内訳書)では、推定修繕工事項目ごとに推定計画修繕工事費を算定するための欄を設けていますが、具体的な部位別の項目の設定や項目ごとの数量の算出については、作成者に委ねています。何により、どのような方法で算出したかを明示します。

◆新築マンションの場合、(社)不動産協会が会員の分譲事業者者に対し、長期修繕計画の作成に関する指針(「長期修繕計画の作成および適正な修繕積立金の設定について(改訂版)」)を示しています。
 この指針に基づき、設計図書のほか、工事請負契約により施工会社から提出された請負代金内訳書、数量計算書などを参考として、長期修繕計画用に概算の数量を算出します。
 なお、長期修繕計画の見直しの際に利用するため、工事請負契約による数量計算書が設計図書と併せて管理組合に引き渡されることが望まれます。

◆既存マンションの場合、適正化法第103条第1項の規定により分譲事業者から引き渡された設計図書のほか、保管している修繕等の履歴、現状の調査・診断の結果などを参考として、長期修繕計画用に概算の数量を算出します。
 なお、建物や設備は、工事中に設計変更が行われることがありますが、同法施行規則では「工事が完了した時点の」とされており、竣工時の設計図書が引き渡されることになっています。
 また、同法の施行以前に引き渡されたマンションにおいて、設計図書(又は工事が完了した時点の設計図書)が引き渡されていないときは、現状の調査・診断の結果などを参考とし、長期修繕計画用に概算の数量を算出します。

◆具体的な数量計算の方法については、「建築数量積算基準((財)建築コスト管理システム研究所発行)」等に準拠して行います。


 〔参  考〕〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

管理標準指針(四 建物・設備の維持管理 (二)長期修繕計画の作成・見直し)
 1 計画の作成・見直し C 修繕工事費

標準的な対応 修繕工事項目、部位ごとに、仕様、数量、単価等の工事費の算定根拠を明確に示している。

〇「長期修繕計画の作成および適正な修繕積立金の設定について(改訂版)」(社)不動産協会
1.建設会社との関係
(1)工事請負契約等について
 長期修繕計画の策定に当たっては、自ら関連する資料の取りまとめを行い、作成の準備をする必要がある。また、自ら資料収集が整わない場合は、建設会社との工事請負契約または設計会社との設計契約に、修繕計画の原案作成または関連資料を提出する内容の特約を盛り込む必要がある。
(2)具体の対応
 具体的には、当該マンションの修繕計画に必要な工事項目、単価、数量、耐用年数等について、重要事項説明書の作成時期までに建設会社から提出させる旨、特約すべきである。
2.管理会社との関係
(1)長期修繕計画の作成方について
 長期修繕計画の作成に当たっては、管理会社と連携して作成するのが望ましい。
(2)長期修繕計画の見直し
 長期修繕計画の一定期間(5年程度)における見直しの必要性については管理会社にその旨説明しておく必要がある。

〇「建築数量積算基準」((財)建築コスト管理システム研究所発行)
 官民合同の「建築工事建築数量積算研究会」(事務局:(財)建築コスト管理システム研究所、(社)日本建築積算協会)で制定されたものです。主に建物の新築工事を対象にしていますが、改修工事に係る数量計算の方法が示されています。
〇「公共建築数量積算基準」(平成18年度版)第7編改修(「建築数量積算基準」と同じ内容です。)
  http://www.mlit.go.jp/gobuild/kijun/touitukijyun/060406s_a_suuryou_sekisan_kijyun.pdf



二 単価の設定の考え方
 単価は、修繕工事特有の施工条件等を考慮し、部位ごとに仕様を選択して、新築マンションの場合、設計図書、工事請負契約による請負代金内訳書等を参考として、また、既存マンションの揚合、過去の計画修繕工事の契約実績、その調査データ、刊行物の単価、専門工事業者の見積価格等を参考として設定します。
 なお、現場管理費及び一般管理費は、見込まれる推定修繕工事ごとの総額に応じた比率の額を単価に含めて設定します。

 〔コメント〕〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

◆標準様式第4−4号(推定修繕工事費内訳書)では、推定修繕工事費を算出するための部位別の項目ごとの具体的な単価の設定については、作成者に委ねています。何に基づき、どのような構成の単価を設定したかを明示します。

◆修繕工事は、発生する数量、作業の条件(時間、場所等の制約)、既存部分の養生、既存部分の除去・処分などが新築工事と異なります。したがって、新築の単価を利用する場合はこれらを考慮することが必要です。

◆長期修繕計画において推定修繕工事費を算定するために採用されている単価には、過去の計画修繕工事の契約実績、その調査データ、刊行物の単価、専門工事業者の見積価格などがあります。

◆仮設工事(共通仮設及び直接仮設)について、複数の部位の推定修繕工事を集約して行うこととした場合は推定修繕工事項目(中項目)として設定しますが、設備関係の専門工事のように単独で行うこととした推定修繕工事においては、必要とする仮設工事の費用をそれぞれの推定修繕工事項目(小項目)ごとの単価に含めます。

◆諸経費(一般管理費及び現場管理費)は、推定修繕工事項目別の費用を分かりやすくするため、推定修繕工事ごとの直接工事費等の総額に応じた比率を、それぞれの推定修繕工事項目(小項目)ごとの単価に含めます。なお、計画修繕工事を実施する際の見積りにおいては、項目を立て内訳が示されます。


 〔参  考〕〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

管理標準指針(四 建物・設備の維持管理 (二)長期修繕計画の作成・見直し)
 1 計画の作成・見直し C 修繕工事費

@ 新築時の建設費(契約価格)に基づいた単価
 (例)「建築物のLC評価用データ集(改訂第3版)」/H14.4(社)建築・設備維持保全推進協会発行「建築物のライフサイクルコスト」/H17.9(財)建築保全センター・(財)経済調査会発行
A 計画修繕工事費の実績(契約価格)の調査に基づいた単価
 (例)「長期修繕計画の作成適正な修繕積立金の設定について(改訂版)」/H14.7(社)不動産協会
 「長期修繕計画作成の手引き」/H18.1(社)高層住宅管理業協会発行
B 計画修繕工事費の実績(契約価格)を調査・分析したマクロデータの単価
 (例)「改修工事(集合住宅)のマクロ的価格傾向に関する研究(その3)」/H19.9(財)建設物価調査会
C 計画修繕工事費に冠する調査結果をまとめた刊行物の単価
 (例)「積算ポケット版マンションRe」/(財)経済調査会発行
D その他
 メーカー、専門工事業者等の見積価格、カタログ掲載単価(×一定率)

〇工事費の構成(計画修繕工事を実施する際の見積りの場合)
工事費の構成(計画修繕工事を実施する際の見積りの場合)
 (注)※:費用に応じて積み上げにより算定した額を加算



三 算定の方法
 推定修繕工事費は、推定修繕工事項目の、詳細な項目ごとに、算出した数量に設定した単価を乗じて算定します。
 修繕積立金の運用益、借入金の金利及び物価変動について考慮する場合は、作成時点において想定する率を明示します。また、消費税は、作成時点の税率とし、会計年度ごとに計上します。

 〔コメント〕〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

◆標準様式第4−4号(推定修繕工事費内訳書)により、「推定修繕工事項目の設定」により設定した推定修繕工事項目の小項目ごとに、「数量計算の方法」により算出した数量に、「単価の設定の考え方」により設定した単価を乗じて、小項目ごとの推定修繕工事費を算定します。

◆次に、「修繕周期の設定」により小項目ごとに設定した修繕周期を基に、標準様式第4−2号(長期修繕計画表)の推定修繕工事項目ごとに該当する年度(周期)に小項目ごとの推定修繕工事費を入れ、推定修繕工事項目別及び年度別の合計額を算出します。物価変動について考慮する場合は、作成時点において想定する率を明示します。

◆標準様式第4−3号(長期修繕計画表)の推定修繕工事項目の中項目別及び年度別の推定修繕工事費を基に、標準様式第4−1号(長期修繕計画総括表)及び標準様式第4−2号(収支計画グラフ)を作成します。修繕積立金の運用益及び借入金の金利の変動について考慮する場合は、作成時点において想定する率を明示します。

◆消費税は、標準様式第4−3号(長期修繕計画表)において、年度別の推定修繕工事の合計額に対する税率分を計上します。



9 収支計画の検討
 計画期間に見込まれる推定修繕工事費(借入金がある場合はその償還金を含む。以下同じ。)の累計額が示され、その額を修繕積立金(修繕積立基金、一時金、専用庭等の専用使用料及び駐車場等の使用料からの繰入れ並びに修繕積立金の運用益を含む。以下同じ。)の累計額が下回らないように計画することが必要です。
 また、推定修繕工事項目に建物及び設備の性能向上を図る改修工事を設定する場合は、これに要する費用を含めた収支計画とすることが必要です。
 なお、機械式駐車場があり、維持管理に多額の費用を要することが想定される場合は、管理費会計及び修繕積立金会計とは区分して駐車場使用料会計を設けることが望まれます。

 〔コメント〕〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

◆収支計画は、計画期間中に見込まれる推定修繕工事費の累計額と修繕積立金の累計額の関係が把握できるように示されていることが必要です。
 計画期間の終期における推定修繕工事費の累計額が示され、その額を修繕積立金の累計額が下回らないように計画することが必要です。修繕積立金が下回ると、計画修繕工事を実施できなくなることも懸念されます。

◆推定修繕工事費は、消費税を含めた各年度ごとの合計額と累計額が示されること。また、年度ごとの収支のほか、次年度繰越金(年度ごとの修繕積立金の残高)が示されることが必要です。

◆支出としては、推定修繕工事費のほか、実施した計画修繕工事のための借入金がある場合は償還金を含めます。また、収入としては、修繕積立金のほか、専用庭等の専用使用料や駐車場等の使用料などからの操入金、修繕積立金の運用益のほか、分譲時に負担する修繕積立基金や必要に応じて徴収する一時金も含めます。

◆推定修繕工事項目に建物及び設備の性能を向上する改修工事に係る項目を設定する場合には、その費用を含めた収支計画とします。

◆二段式、多段式等の機械式駐車場があり、その点検や修繕に多額の費用を要することが想定される場合は、平置駐車場を含めて、管理費会計及び修繕積立金会計とは区分して駐車場使用料会計を設けることが望まれます。
 その場合の長期修繕計画の作成については次の方法が考えられます。
@ 全体の長期修繕計画とは別に、駐車場単独の長期修繕計画を作成する。
A 駐車場単独の長期修繕計画及び保守点検の計画等に基づき、駐車場使用料の額を算定する。なお、機械式駐車場のメーカー又は保守会社が作成する「長期保全計画」がある場合はこれを参考にします。
 この場合に、駐車場数が住戸数の100%未満で、駐車場使用料で駐車場の点検や修繕の費用が賄えないときは、利用者の負担増とすること(駐車場使用料の値上げ)が考えられますが、近隣の駐車場使用料がマンション内よりも低いときは、値上げが難しいため除却の検討も必要となります。


 〔参  考〕〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

管理標準指針(四 建物・設備の維持管理(二)長期修繕計画の作成・見直し)
 1 計画の作成・見直し D 収支計画

標準的な対応 修繕工事費の計画期間の累計額が示され、その額を修繕積立金の計画期間の累計額が下回らないように計画している。
望ましい対応 性能向上(グレードアップ)工事費を含めた収支計画としている。

標準管理規約 第29条(使用料)関係コメント
 機械式駐車場を有する場合は、その維持及び修繕に多額の費用を要することから、管理費及び修繕積立金とは区分して経理することもできる。

〇収支計画のグラフの例
収支計画のグラフの例
  A:支出(推定修繕工事費)の累計額を示したもの
  B:収入(修繕積立金)の累計額を示したもの(現状の場合)
  B’:収入(修繕積立金)の累計額を示したもの(見直し(引上げ)案の場合)



10 長期修繕計画の見直し
 長期修繕計画は、次に掲げる不確定な事項を含んでいますので、5年程度ごとに調査・診断を行い、その結果に基づいて見直すことが必要です。また、併せて修繕積立金の額も見直します。
 @ 建物及び設備の劣化の状況
 A 社会的環境及び生活様式の変化
 B 新たな材料、工法等の開発及びそれによる修繕周期、単価等の変動
 C 修繕積立金の運用益、借入金の金利、物価、消費税率等の変動

 〔コメント〕〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

◆長期修繕計画は、作成時点において、計画期間の推定修繕工事の内容等に関して計画を定めるものであり、本文に掲げる不確定な事項を含んでいますので、5年程度ごとに調査・診断を行い、その結果に基づいて見直すことが必要です。なお、見直した時点から25年以上の計画期間とします。

◆例えば、新築後15年目以降の見直しでは、新築当初の30年の計画期間では推定修繕工事費を計上していなかった建具や給・排水管の取替えなどについても計上が必要となります。これに伴って計画期間の推定修繕工事費が増加しますので、修繕積立金の額の見直しも必要となります。

◆長期修繕計画の見直しは、大規模修繕工事と大規模修繕工事の中間の時期に単独で行う場合、大規模修繕工事の直前に基本計画の検討に併せて行う場合、又は、大規模修繕工事の実施の直後に修繕工事の結果を踏まえて行う場合があります。
 したがって、その時期は、おおよそ大規模修繕工事(12年程度ごと)の直前又は直後とその中間程度となります。

◆建物・設備の劣化状況等の現状を踏まえた見直しを行うために、事前に調査・診断を行います。大規模修繕工事の中間の時期に単独で行う場合は、目視等による簡易な調査・診断を行いますが、大規模修繕工事の直前又は直後に行う場合は、その基本計画を作成するために行う詳細な調査・診断の結果によります。


 〔参  考〕〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

〇図 長期修繕計画の見直し(例)
図 長期修繕計画の見直し(例)
  (注)▽:大規模修繕工事の実施

管理標準指針(四 建物・設備の維持管理(二)長期修繕計画の作成・見直し)
 2 見直し時期

標準的な対応 5年程度ごとに見直しを行っている。

標準管理規約 第32条(業務)コメントA
A 長期修繕計画の内容としては次のようなものが最低限必要である。
 (一、二 略)
三 全体の工事金額が定められたものであること。
 また、長期修繕計画の内容については、定期的な(おおむね5年程度ごとに)見直しをすることが必要である。




【長期修繕計画標準様式、長期修繕計画作成ガイドライン及び同コメントの添付資料の入手方法】


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第3編 長期修繕計画作成ガイドライン・同コメント
第3章 長期修繕計画の作成の方法
第2節 修繕積立金の額の設定方法 へ