第2節 長期修繕計画の作成及び修繕積立金の額の設定手順

1 長期修繕計画の作成及び修繕積立金の額の設定の手順
 新築マンションの場合は、分譲事業者が提示した長期修繕計画(案)と修繕積立金の額について、購入契約時の書面合意により分譲事業者からの引渡しが完了した時点で決議したものとするか、又は引渡し後速やかに開催する管理組合設立総会において、長期修繕計画及び修繕積立金の額の承認に関しても決議することがあります。
 既存マンションの場合は、長期修繕計画の見直し及び修繕積立金の額の設定について、理事会、専門委員会等で検討を行ったのち、専門家に依頼して長期修繕計画及び修繕積立金の額を見直し、総会で決議します。なお、長期修繕計画の見直しは、単独で行う場合と、大規模修繕工事の直前又は直後行う場合があります。

 〔コメント〕〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

◆新築マンションの場合は、分譲事業者が提示した長期修繕計画(案)と修繕積立金の額について、重要事項説明に併せて説明を受け、購入契約時の書面合意により分譲事業者からの引渡しが完了した時点で決議したものとするのが一般的です。また、引渡し後速やかに管理組合設立総会を開催し、長期修繕計画及び修繕積立金の額の承認に関しても決議することもあります。

◆長期修繕計画の見直しは、大規模修繕工事と大規模修繕工事の中間の時期に単独で行う場合、大規模修繕工事の直前に基本計画の検討に併せて行う場合、又は、大規模修繕工事の実施の直後に修繕工事の結果を踏まえて行う場合があります。


 〔参  考〕〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

標準管理規約 第48条(議決事項)
第48条 次の各号に掲げる事項については、総会の決議を経なければならない。
一 収支決算及び事業報告
二 収支予算及び事業計画
三 管理費等及び使用料の額並びに賦課徴収方法
四 規約及び使用細則等の制定、変更又は廃止
五 長期修繕計画の作成又は変更
六 第28条第1項に定める特別の管理の実施並びにそれに充てるための資金の借入れ及び修繕積立金の取崩し
七 第28条第2項に定める建物の建替えに係る計画又は設計等の経費のための修繕積立金の取崩し
八 修繕積立金の保管及び運用方法
九 第21条第2項に定める管理の実施
 (以下略)

区分所有法 第39条(議事)第1項、第2項
第三十九条 集会の議事は、この法律又は規約に別段の定めがない限り、区分所有者及び議決権の各過半数で決する。
2 議決権は、書面で、又は代理人によって行使することができる。

標準管理規約 第47条(総会の会議及び議事)
第47条 総会の会議は、前条第1項に定める議決権総数の半数以上を有する組合員が出席しなければならない。
2 総会の議事は、出席組合員の議決権の過半数で決する。
3 次の各号に掲げる事項に関する総会の議事は、前項にかかわらず、組合員総数の4分の3以上及び議決権総数の4分の3以上で決する。
一 規約の制定、変更又は廃止
二 敷地及び共用部分等の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。)
三 区分所有法第58条第1項、第59条第1項又は第60条第1項の訴えの提起
四 建物の価格の2分の1を超える部分が滅失した場合の滅失した共用部分の復旧
五 その他総会において本項の方法により決議することとした事項
 (以下略)

〇長期修繕計画の見直し及び修繕積立金の額の設定の手順
(例)(長期修繕計画の見直しを単独で行う場合)

発意(理事会等)
  下矢印
理事会、専門委員会等による検討
(長期修繕計画の見直し事項等)
  下矢印  下矢印
  下矢印
総会決議
(見直しの実施、専門家の選定)
  下矢印  下矢印
  下矢印
専門家への依頼
(業務委託契約)
  下矢印  下矢印
  下矢印
調査・診断の実施
設計図書等の資料調査、現地調査
必要により区分所有者のアンケート調査
  下矢印  下矢印
  下矢印
  下矢印
長期修繕計画及び修繕積立金の額の見直し
(マンションのビジョンの検討)
  下矢印  下矢印
  下矢印
区分所有者への事前説明会
  下矢印  下矢印
総会決議
(長期修繕計画及び修繕積立金の額の見直し)
  下矢印
長期修繕計画(総会議事録)の配布
  下矢印
保管



2 検討体制の整備
 長期修繕計画の見直しに当たっては、必要に応じて専門委員会を設置するなど、検討を行うために管理組合内の体制を整えることが必要です。

 〔コメント〕〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

◆例えば、大規模修繕工事の実施を踏まえて長期修繕計画を見直す場合は、理事会の発意から計画修繕工事の実施、計画の見直しに至るまでに数年の期間を要しますし、専門的な知識が必要とされます。しかしながら、役員は、1年・2年で交代することが多く、管理組合の通常の運営だけでも多忙です。長期修繕計画の見直しや大規模修繕工事を成功させるためには、理事会の諮問機関として、維持管理に関する検討や実施のための継続性のある専門委員会を設けて、経験や知識のある区分所有者の参加を求めることが必要です。

◆専門委員会の運営は、潜在している組合員個々の能力を引き出し、管理組合全体の取り組みとするような仕組みを考えて実施することが望まれます。また、必要に応じて、適切なアドバイスをしてくれる専門家を選ぶことも必要です。


 〔参  考〕〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

管理標準指針(一 管理組合の運営(二)理事会の運営 5 専門委員会の設置)
標準的な対応 大規模修繕工事の実施、管理規約の改正等、必要に応じて設置している。
望ましい対応 委員会(委員)の位置づけ、設置期間、任期等が運営細則等で明確となっている。

標準管理規約 第55条(専門委員会の設置)
第55条 理事会は、その責任と権限の範囲内において、専門委員会を設置し、特定の課題を調査又は検討させることができる。
2 専門委員会は、調査又は検討した結果を理事会に具申する。

標準管理規約 第55条(専門委員会の設置)関係コメント
@ 専門委員会の検討対象が理事会の責任と権限を越える事項である場合や、理事会活動に認められている経費以上の費用が専門委員会の検討に必要となる場合、運営細則の制定が必要な場合等は、専門委員会の設置に総会の決議が必要となる。
A 専門委員会は、検討対象に関心が強い組合員を中心に構成されるものである、必要に応じ検討対象に関する専門的知識を有する者(組合員以外も含む。)の参加を求めることもできる。

適正化指針(一 マンションの管理の適正化の基本的方向 3)
3 マンションの管理は、専門的な知識を必要とすることが多いため、管理組合は、問題に応じ、マンション管理士等専門的知識を有する者の支援を得ながら、主体性をもって適切な対応をするよう心がけることが重要である。

標準管理規約 第34条(専門的知識を有する者の活用)
第34条 管理組合は、マンション管理士(適正化法第2条第五号の「マンション管理士」をいう。)その他マンション管理に関する各分野の専門的知識を有する者に対し、管理組合の運営その他マンションの管理に関し、相談したり、助言、指導その他の援助を求めたりすることができる。

標準管理規約 第34条(専門的知識を有する者の活用)関係コメント
@ マンションは一つの建物を多くの人が区分して所有するという形態ゆえ、利用形態の混在による権利・利用関係の複雑さ、建物構造上の技術的判断の難しさなどを踏まえ、建物を維持していく上で区分所有者間の合意形成を進めることが必要である。
 このような中で、マンションを適切に維持、管理していくためには、法律や建築技術等の専門的知識が必要となることから、管理組合は、マンション管理業者等第三者に管理事務を委託したり、マンション管理士その他マンション管理に関する各分野の専門的知識を有する者に対し、管理組合の運営その他マンションの管理に関し、相談したり、助言、指導その他の援助を求めたりするなど、専門的分野にも適切に対応しつつ、マンション管理を適正に進めることが求められる。
A 管理組合が支援を受けることが有用な専門的知識を有する者としては、マンション管理士のほか、マンションの権利・利用関係や建築技術に関する専門家である、弁護士、司法書士、建築士、行政書士、公認会計士、税理士等の国家資格取得者や、区分所有管理士、マンションリフォームマネジャー等の民間資格取得者などが考えられる。
B 専門的知識を有する者の活用の具体例としては、管理組合は、専門的知識を有する者に、管理規約改正原案の作成、管理組合における合意形成の調整に対する援助、建物や設備の劣化診断、安全性診断の実施の必要性についての助言、診断項目、内容の整理等を依頼することが考えられる。



3 長期修繕計画の作成業務の依頼
 管理組合が、専門家に長期修繕計画の見直しを依頼する際は、標準様式を参考として、長期修繕計画作成業務発注仕様書を作成し、依頼する業務の内容を明確に示すことが必要です。

 〔コメント〕〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

◆長期修繕計画の見直しや事前に行う調査・診断の業務は、一般的に、管理会社との管理委託契約に含めたり、建築士事務所等と個別に契約を締結するなどの方法が採られます。
 その際、依頼の内容が不十分であると、成果物である長期修繕計画の内容も不十分になることも考えられますので、標準様式第1号や次ページの例を参考にして、「長期修繕計画作成業務発注仕様書」を作成し、専門家に依頼してください。なお、発注仕様書の内容で不明な点は、専門家に相談し確認してください。


 〔参  考〕〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

長期修繕計画作成業務発注仕様書(例)
長期修繕計画作成業務発注仕様書(例)



4 調査・診断の実施
 長期修繕計画の見直しに当たっては、事前に専門家による設計図書、修繕等の履歴等の資料調査、現地調査、必要により区分所有者に対するアンケート調査等の調査・診断を行って、建物及び設備の劣化状況、区分所有者の要望等の現状を把握し、これらに基づいて作成することが必要です。

 〔コメント〕〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

◆長期修繕計画の見直しに当たっては、建物・設備の劣化状況などを把握するために調査・診断を行います。
 劣化の調査・診断のレベルは、一般的に次表のように分類されています。1次診断(簡易診断)は、建物の劣化の状況を大まかに把握し、2次・3次診断(詳細診断)は、劣化の要因を特定し、修繕工事の要否や内容等の判断を行う目的で行います。

表 調査・診断レベルの分類
診断レベル主な目的調査方法調査対象
予備調査・診断現状把握、本調査・診断の要否資料調査、目視調査、アンケート調査設計図書、修繕等履歴情報、外観

調



1次診断
(簡易診断)
現状把握、劣化の危険性の判断資料調査、目視調査、軽微な機器設計図書、修繕等履歴情報、外観
詳細
診断
2次診断劣化の危険性の判断、修繕の要否の判断非破壊試験、微破壊試験主に共用部分
3次診断より詳細な診断、評価局部破壊試験を伴う主に共用部分、一部の専有部分を含む
  (出典:「既存マンションの躯体の劣化度調査・診断技術マニュアル」/独立行政法人建築研究所に加筆)

◆長期修繕計画の見直しのために単独で行う場合は、長期修繕計画に必要とされるすべての項目について漏れのないように行います。なお、著しい劣化がないかぎり目視調査など簡易なものにとどまります。また、計画修繕工事の実施のために行う場合は、劣化状況に応じて、目視調査から非破壊試験、破壊試験とより詳細になります。

◆長期修繕計画はマンションのビジョンを描く作業でもあるので、現状の問題点だけではなく、区分所有者の要望などを把握するためにアンケート調査などを行うこともあります。


 〔参  考〕〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

適正化指針(二 管理組合が留意すべき基本事項 5 長期修繕計画の策定及び見直し等)
(略)長期修繕計画の策定及び見直しにあたっては、必要に応じ、マンション管理士等専門的知識を有する者の意見を求め、また、あらかじめ建物診断等を行って、その計画を適切なものとするよう配慮する必要がある。 (以下略)

管理標準指針(四 建物・設備の維持管理(二)長期修繕計画の作成・見直し)
1 計画の作成・見直し

標準的な対応 調査・診断を行い、建物・設備等の状況を把握したうえで、@〜Dの全ての項目について定めている。

標準管理規約 第32条(業務)関係コメントB、C
B 長期修繕計画の作成又は変更及び修繕工事の実施の前提として、劣化診断(建物診断)を管理組合として併せて行う必要がある。
C 長期修繕計画の作成又は変更に要する経費及び長期修繕計画の作成等のための劣化診断(建物診断)に要する経費の充当については、管理組合の財産状態等に応じて管理費又は修繕積立金のどちらからでもできる。
 ただし、修繕工事の前提としての劣化診断(建物診断)に要する経費の充当については、修繕工事の一環としての経費であることから、原則として修繕積立金から取り崩すこととなる。



5 マンションのビジョンの検討
 マンションの現状の性能・機能、調査・診断の結果等を踏まえて、計画期間においてどのような生活環境を望むのか、そのために必要とする建物及び設備の性能・機能等について十分に検討することが必要です。
 また、現状の耐震性、区分所有者の要望等から、必要に応じて「マンション耐震化マニュアル(国土交通省)」、「改修によるマンションの再生手法に関するマニュアル(国土交通省)」等を参考とし、建物及び設備の耐震性、断熱性等の性能向上を図る改修工事の実施について検討を行います。
 高経年のマンションの場合は、必要に応じて「マンションの建替えか修繕かを判断するためのマニュアル(国土交通省)」等を参考とし、建替えも視野に入れて検討を行うことが望まれます。

 〔コメント〕〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

◆マンションの建物及び設備の現状の性能・機能を踏まえて、今後どのような生活環境を望むか、それを実現するためにどのような性能・機能を必要とするかなどについて、理事会、専門委員会等で十分に検討することが必要です。
 その検討のなかで、必要な推定修繕工事の内容が明らかになってきますので、これに沿って長期修繕計画を作成すれば、計画の作成や修繕積立金の負担の目的が明確となり、その合意が得やすくなると考えられます。

◆マンションは適切に維持管理を行って、できるだけ長く住み続けたいものですが、高経年のマンションの場合は、経年に応じて改修工事などに必要な費用が多額になっていくことが考えられます。必要に応じて、建替えも視野に入れた修繕や改修の検討を行うことが望まれます。


 〔参  考〕〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

適正化指針(二 管理組合が留意すべき基本事項 5 長期修繕計画の策定及び見直し等)
(略)なお、建築後相当の年数を経たマンションにおいては、長期修繕計画の検討を行う際には、必要に応じ、建替えについても視野に入れて検討することが望ましい。建替えの検討にあたっては、その過程をマンションの区分所有者等に周知させるなど透明性に配慮しつつ、各区分所有者等の意向を十分把握し、合意形成を図りながら進めることが必要である。

〇マンションの性能向上(改修)工事に関する参考資料
 1)「改修によるマンションの再生手法に関するマニュアル」(平成16年6月 国土交通省)
  http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/mansei/manseitatekae.htm

 2)「マンション耐震化マニュアル」(平成19年6月 国土交通省)
  http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/torikumi/torikumi.html#mansyonseisaku

 3)「マンションの建替えか修繕かを判断するためのマニュアル」(平成15年1月 国土交通省)
  http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/mansei/manseitatekae.htm




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第3編 長期修繕計画作成ガイドライン・同コメント
第2章 長期修繕計画の作成の基本的な考え方
第3節 長期修繕計画の周知、保管 へ