第3編 長期修繕計画作成ガイドライン・同コメント




(注)コメント及び参考で用いた用語
区分所有法 建物の区分所有等に関する法律(昭和37年法律第69号)
適正化法 マンションの管理の適正化の推進に関する法律(平成12年法律第149号)
適正化指針 マンションの管理の適正化に関する指針(平成13年8月国土交通省告示第1288号)
標準管理規約 マンション標準管理規約(単棟型)平成16年1月国土交通省住宅局住宅総合整備課マンション管理対策室)
標準管理委託契約書 マンション標準管理委託契約書(平成15年4月国土交通省総合政策局不動産業課)
管理標準指針 マンション管理標準指針(平成17年12月国土交通省住宅局住宅総合整備課マンション管理対策室)




第1章 総則

1 ガイドラインの目的
 このガイドラインは、マンションにおける長期修繕計画の作成又は見直し(以下「作成」という。)及び修繕積立金の額の設定に関して、基本的な考え方等と長期修繕計画標準様式(以下「標準様式」という。)を使用しての作成方法を示すことにより、適切な内容の長期修繕計画の作成及びこれに基づいた修繕積立金の額の設定を促し、マンションの計画修繕工事の適時適切かつ円滑な実施を図ることを目的としています。

 〔コメント〕〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

◆マンションの居住環境や資産価値を良好に維持するためには、敷地、建物の共用部分及び附属施設について、法定点検などの保守点検や軽微な破損などに対して経常的な補修を行うほか、経年劣化に対応して計画修繕工事を適時適切に実施することが不可欠です。

◆計画修繕工事の実施には多額の費用を要します。計画修繕工事の実施時にその工事に必要な費用を一度に徴収すると、区分所有者の負担能力を超えて必要な費用が徴収できず、計画修繕工事を実施できなくなることも想定されます。このような事態を避けるためには、必要な費用を修繕積立金としてあらかじめ積み立てておくことが必要です。
 そのためには、適切な長期修繕計画を作成し、これに基づいて修繕積立金の額を設定し、これらについて区分所有者の間で合意しておくことが重要です。

◆しかしながら、現状では、計画期間の不足、推定修繕工事項目の漏れなどによる不適切な内容の長期修繕計画が見受けられます。また、これに基づいて設定する修繕積立金の額も十分でないこともあり、計画修繕工事の実施時に、修繕積立金の不足が生じる原因となっています。

◆長期修繕計画の作成と修繕積立金の額の設定に関しては、管理標準指針において、「何を」、「どのような点に」留意すべきかを「標準的な対応」、「望ましい対応」として示しています。
 このガイドラインは、「管理標準指針」の内容をより具体的なものとし、長期修繕計画の基本的な考え方等や標準様式を使用しての作成方法を示したものです。これを参考として活用することで、長期修繕計画の作成者(分譲事業者、管理組合等)が適切な内容の長期修繕計画を作成できること、また、購入予定者や管理組合が長期修繕計画の内容の理解やチェックを容易にできることにより、計画修繕工事の適時適切かつ円滑な実施を図ることを目的としています。


 〔参  考〕〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

管理標準指針(四 建物・設備の維持管理(四)大規模修繕工事の実施 1大規模修繕工事の実施)
標準的な対応 適切な長期修繕計画に定められた時期を目安とし、調査・診断の結果に基づいて、計画された工事の要否、実施する工事内容等を決め、実施している。

適正化指針(二 管理組合が留意すべき基本的事項 5 長期修繕計画の策定及び見直し等)
 マンションの快適な居住環境を確保し、資産価値の維持・向上を図るためには、適時適切な維持修繕を行うことが重要である。特に、経年による劣化に対応するため、あらかじめ長期修繕計画を策定し、必要な修繕積立金を積み立てておくことが必要である。 (以下略)

標準管理規約 第32条(業務)
 管理組合は、次の各号に掲げる業務を行う。
一 管理組合が管理する敷地及び共用部分等(以下本条及び第48条において「組合管理部分」という。)の保安、保全、保守、清掃、消毒及びごみ処理
二 組合管理部分の修繕
三 長期修繕計画の作成又は変更に関する業務
四 建物の建替えに係る合意形成に必要となる事項の調査に関する業務
五 適正化法第103条に定める、宅地建物取引業者から交付を受けた設計図書の管理
六 修繕等の履歴情報の整理及び管理等
七 共用部分等に係る火災保険その他の損害保険に関する業務
八 区分所有者が管理する専用使用部分について管理組合が行うことが適当であると認められる管理行為
九 敷地及び共用部分等の変更及び運営
十 修繕積立金の運用
 (以下略)

標準管理規約 第32条(業務)関係コメント@
@ 建物を長期にわたって良好に維持・管理していくためには、一定の年数の経過ごとに計画的に修繕を行っていくことが必要であり、その対象となる建物の部分、修繕時期、必要となる費用等について、あらかじめ長期修繕計画として定め、区分所有者の間で合意しておくことは、円滑な修繕の実施のために重要である。



2 対象とするマンション
 このガイドラインは、主として区分所有者が自ら居住する住居専用の単棟型のマンションを対象としています。
 しかしながら、マンションには、様々な形態、形状、仕様等があり、立地条件も異なっていることから、これらの諸条件に応じた長期修繕計画とするため、必要に応じて内容を追加して使用します。したがって、団地型のマンションにおいても内容を追加することで使用できます。

 〔コメント〕〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

◆このガイドラインは、主として区分所有者が自ら居住するマンションを対象としていますが、長期滞在用マンション(リゾートマンション)、一部に賃貸住宅を併設するマンション及び賃貸を目的としたマンション(投資用マンション等)にも使用できます。
 なお、住宅の形態は、ファミリータイプを想定していますが、ワンルームタイプも使用できます。

◆単棟型のマンションを対象としていますが、必要な内容を追加することで、団地型のマンションにも適用できます。団地型マンションの形熊としては「団地内の土地と集会所等の附属施設が数棟の区分所有者全員の共有となっているもの」と「土地の共有関係は各棟ごとに分かれ、集会室等の附属施設が数棟の区分所有者全員の共有となっているもの」がありますが、一般的な前者を想定しています。

◆建物の規模は、中高層のマンションを対象としています。例えば、階数が11階以上の場合、消防用設備や避難設備などについて考慮する必要があります。また、超高層(高さが60m以上)の場合、免震構造などの躯体関係、航空障害灯などの設備関係のほか、修繕工事の仮設足場にゴンドラを使用するなど施工方法も異なりますので、これらについて考慮する必要があります。

◆複合用途型マンションは、低層階に店舗や事務所などがあり、上層階に住宅があるマンションが一般的です。店舗等の部分には、様々な形態や仕様、設備等が考えられることから、このガイドラインの対象からは除外しています。複合用途型マンションの管理区分としては、全体共用部分、住宅部分の区分所有者が共用する住宅一部共用部分及び店舗等の区分所有者が共用する店舗一部共用部分がある場合が多く、長期修繕計画を作成する場合は、これらの範囲や費用負担のあり方などに考慮する必要があります。

◆その他、海沿いなど立地条件により、仕様や推定修繕工事の周期が異なりますので、これらについて考慮する必要があります。


 〔参  考〕〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

〇図 団地型の形態(例)
団地型の形態(例)



3 ガイドラインの利用方法
 長期修繕計画の作成者(分譲事業者及び管理組合)は、本ガイドラインを参考として、長期修繕計画を作成し、これに基づいて修繕積立金の額の設定を行います。
 新築マンションにおいて、分譲事業者は、本ガイドラインを参考として、長期修繕計画(案)を作成し、これに基づいて修繕積立金(修繕積立基金を含む。)の額の設定を行います。これらに関しては、購入予定者に説明を行うことが必要です。また、作成した長期修繕計画(案)は「推定修繕工事費内訳書」を含めて管理組合に引き渡すこと、及び総会(設立総会)において議決を行う場合に協力することが望まれます。
 購入予定者は、提示された長期修繕計画(案)の内容について、本ガイドラインを参考としてチェックすることができます。
 既存マンションにおいて、管理組合は、長期修繕計画の見直し及びこれに基づく修繕積立金の額の設定に関する業務を専門家に委託(管理委託契約に含める場合を含む。)する際に、本ガイドラインを参考として依頼します。 また、作成された長期修繕計画の内容を、本ガイドラインを参考としてチェックすることができます。
 長期修繕計画の見直し等の業務を受託した専門家は、その成果物に関して管理組合に説明を行うことが必要です。また、総会における議決に協力することが望まれます。

 〔コメント〕〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

◆分譲事業者は、分譲時において修繕積立金の額とその根拠となる長期修繕計画(案)を作成して、購入予定者に説明します。また、管理組合は、その重要な業務の1つとして、長期修繕計画を作成又は見直し、これに基づいて修繕積立金の額の設定を行います。その際に、本ガイドラインを参考にすることを想定しています。

◆新築マンションの分譲時において、分譲事業者が、本ガイドラインを参考として、長期修繕計画(案)を作成し、重要事項説明時に説明することで、購入予定者は、長期修繕計画(案)の内容や修繕積立金の額の理解、その比較検討が容易になります。また、より深く理解することにより、分譲事業者からの引渡し後に開催する総会において決議が必要な場合に合意形成が進めやすくなります。
 なお、長期修繕計画の「推定修繕工事費内訳書」が管理組合に引き渡されていると、その見直しの時に作業が軽減されるため、管理組合が負担する費用も少なくなります。

◆管理組合は、長期修繕計画の見直しに関する業務を管理委託契約に含めて管理業者に、又は委託契約により建築士事務所等に依頼する際に、本ガイドラインを参考にすることで、適切な内容に作成されることが期待できます。また、標準様式と比較することで、作成された見直し案の内容を容易にチェックすることができます。
 業務の委託を受けた専門家が、このガイドラインを参考として説明することにより、管理組合は、長期修繕計画の内容や修繕積立金の額の理解が容易になり、総会における合意形成が進めやすくなります。


 〔参  考〕〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

適正化指針(三 区分所有者等が留意すべき基本的事項等)
 マンションを購入しようとする者は、マンションの管理の重要性を十分認識し、売買契約だけでなく、管理規約、使用細則、管理委託契約、長期修繕計画等管理に関する事項に十分に留意する必要がある。
 (以下略)

〇中高層分譲共同住宅(マンション)に係る管理の適正化及び取引の公正の確保について
 建設省建設経済局長・住宅局長通達(平成4年12月25日付け建設省経動発第106号・建設省住管発第5号)

第三 長期修繕計画の策定の促進及び修繕費用の適切な積立て等
 宅地建物取引業者にあってはマンションの分譲時に、また管理業者にあっては管理受託時に、マンションの実態に即した長期修繕計画の策定、これに基づく適切な修繕積立金の積立て及び適時の劣化診断の実施の必要性について、管理組合に対する周知に努めること。

標準管理委託契約書 第3条(管理事務の内容及び実施方法)
 管理事務の内容は、次のとおりとし、別表第1から第4に定めるところにより実施する。

 別表第1 事務管理業務 1 基幹事務
(3)本マンション(専有部分を除く。以下同じ。)の維持又は修繕に関する企画又は実施の調整
一 乙は、甲の大規模修繕の修繕周期、実施予定時期、工事概算費用、収支予想等を記載した長期修繕計画案を作成し、甲に提出する。当該長期修繕計画案は、○年ごとに見直し、甲に提出するものとする。



4 用語の定義
  このガイドラインにおける用語の定義は、次の各号に掲げるところによります。
一 マンション マンション管理の適正化の推進に関する法律(平成12年法律第149号、以下「適正化法」という。)第2条第1号に規定するマンンョンをいいます。
二 管理組合 適正化法第2条第3号に規定する管理組合をいいます。
三 区分所有者 建物の区分所有等に関する法律(昭和37年法律第69号。以下「区分所有法」という。)第2条第2項の区分所有者をいいます。
四 購入予定者 マンションの購入に係る売買契約を締結しようとする者をいいます。
五 分譲事業者 マンンョンを分譲する宅地建物取引業法(昭和27年法律第176号)第2条第3号に規定する宅地建物取引業者をいいます。
六 管理業者 適正化法第2条第8号に規定するマンション管理業者をいいます。
七 専門家 管理業者、建築士事務所等の長期修繕計画の作成業務を行う者をいいます。
八 敷地 区分所有法第2条第5項に規定する建物の敷地をいいます。
九 附属施設 駐車場施設、自転車置場、ごみ集積所、外灯設備、樹木等建物に附属する施設をいいます。
十 専有部分 区分所有法第2条第3項に規定する専有部分をいいます。
十一 共用部分 区分所有法第2条第4項に規定する共用部分をいいます。
十二 管理規約 区分所有法第30条第1項及び第2項に規定する規約をいいます。
十三 推定修繕工事 長期修繕計画において、計画期間内に見込まれる修繕工事(補修工事(経常的に行う補修工事を除く。)を含む。以下同じ。)及び改修工事をいいます。
十四 計画修繕工事 長期修繕計画に基づいて計画的に実施する修繕工事及び改修工事をいいます。
十五 大規模修繕工事 建物の全体又は複数の部位について行う大規模修繕工事をいいます。
十六 修繕積立金 計画修繕工事に要する費用に充当するための積立金をいいます。
十七 推定修繕工事費 推定修繕工事に要する概算の費用をいいます。
十八 修繕工事費 計画修繕工事の実施に要する費用をいいます。
十九 推定修繕工事項目 推定修繕工事の部位。工種等による項目をいいます。

 〔コメント〕〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

◆長期修繕計画の作成業務を行う専門家としては、管理業者や建築士事務所などがありますが、長期修繕計画の作成や修繕積立金の積立てを含めたマンションの管理運営に関する助言、指導その他の援助業務を行う専門家としては、マンション管理士などがあります。

◆建物の全体又は複数の部位について行う大規模な計画修繕工事とは、例えば、外部足場が必要な屋上防水と外壁塗装等を同時に行う場合などがあります。


 〔参  考〕〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

適正化法 第2条(定義)第1号
一 マンション 次に掲げるものをいう。
イ 二以上の区分所有者(建物の区分所有等に関する法律(昭和三十七年法律第六十九号。以下「区分所有法」という。)第二条第二項に規定する区分所有者をいう。以下同じ。)が存する建物で人の居住の用に供する専有部分(区分所有法第二条第三項に規定する専有部分をいう。以下同じ。)のあるもの並びにその敷地及び附属施設
ロ 一団地内の土地又は附属施設(これらに関する権利を含む。)が当該団地内にあるイに掲げる建物を含む数棟の建物の所有者(専有部分のある建物にあっては、区分所有者)の共有に属する場合における当該土地及び附属施設

適正化法 第2条(定義)第3号
三 管理組合 マンションの管理を行う区分所有法第三条若しくは第六十五条に規定する団体又は区分所有法第四十七条第一項(区分所有法第六十六条において準用する場合を含む。)に規定する法人をいう。

区分所有法 第2条(定義)第2項
2 この法律において「区分所有者」とは、区分所有権を有する者をいう。

〇宅地建物取引業法 第2条(用語の定義)第3号
三 宅地建物取引業者 第三条第一項の免許を受けて宅地建物取引業を営む者をいう。

適正化法 第2条(定義)第1項第8号
八 マンション管理業者 第四十四条の登録を受けてマンション管理業を営む者をいう。

区分所有法 第2条(定義)第5項
5 この法律において「建物の敷地」とは、建物が所在する土地及び第五条第一項の規定により建物の敷地とされた土地をいう。

区分所有法 第2条(定義)第3項
3 この法律において「専有部分」とは、区分所有権の目的たる建物の部分をいう。

区分所有法 第2条(定義)第4項
4 この法律において「共用部分」とは、専有部分以外の建物の部分、専有部分に属しない建物の附属物及び第四条第二項の規定により共用部分とされた附属の建物をいう。

区分所有法 第30条(規約事項)第1項及び第2項
第三十条 建物又はその敷地若しくは附属施設の管理又は使用に関する区分所有者相互間の事項は、この法律に定めるもののほか、規約で定めることができる。
2 一部共用部分に関する事項で区分所有者全員の利害に関係しないものは、区分所有者全員の規約に定めがある場合を除いて、これを共用すべき区分所有者の規約で定めることができる。




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