管理委託契約の変更(管理会社も変更)で共同の利益追求
             Aマンション管理組合理事長


それは管理費会計の赤字問題から始まりました。

 平成18年8月の総会で、私は理事長にさせられました。全くその気がなく、総会の抽籤で役員に選任された時も「理事長になる人に、管理費会計の赤字問題を考えてもらう」と軽い気持でいましたから、理事会の抽籤で自分がその職になった時には「来年の総会までに改善策を考えましょう。そのため、理事長OBの5名で検討委員会を作りましょう。」と提案するのが精一杯でした。しかし、振り返ってみて、この検討委員会設立は、正解の一つでした。

 私たちのところは、平成4年建設の単棟型、33戸の小規模マンションです。管理会社は分譲会社のC社で、管理規約や管理委託契約書を作り、入居の条件のようにして入居者に承認させ、管理組合が発足しています。開設以来14年、賃貸が1/4ありますが、内部のトラブルもなく、昨年は、初めての大規模修繕事業も無事終わりました。スタートの数年間は管理費会計も黒字で、約400万円の繰越金を作りました。それが、平成11年から連続単年度収支は赤字となり、このままでは数年後に、管理費の値上げは必至という事態になっていました。年次別の経過を簡単に書きますと表1の通りです。

表1 年次別赤字の推移                 (年額:単位円)

  平成11 平成12 平成13 平成14 平成15 平成16 平成17
管理費収入 3,984,000 3,984,000 3,984,000 3,954,600 4,013,400 3,984,000 3,984,000
駐車場収入 3,622,984 3,160,080 3,321,249 3,410,483 3,387,500 3,292,137 3,387,500
上記収入の計 (1) 7,606,984 7,144,080 7,305,249 7,365,083 7,400,900 7,276,137 7,371,500
委託費支出
 (2)
5,299,560 5,299,560 5,299,560 5,299,560 5,299,560 5,299,560 5,299,560
当期収支 ▲ 102,263 ▲ 667,097 ▲ 192,396 ▲ 170,212 ▲ 63,834 ▲ 325,586 ▲1,660,161
次期繰越 3,942,522 3,275,428 3,467,824 3,297,612 3,233,778 2,908,192 1,248,031
委託費支出割合 (2)/(1) 70 % 74 % 73 % 72 % 72 % 73 % 72 %

(注:主要収入に対する管理委託費の割合は70%を超え、小修繕費等の不定期支出が発生すると直ぐ赤字になる体質です。平成17年度は、連結送水管移設¥861,000のため。なお、管理費は\120/m2で平均的、駐車料金は\12,500/台・月)

 そんな時に運悪く理事長にさせられましたが、いずれ遅かれ早かれ、誰かが当面しなければならないことでした。検討委員会の立ち上げとともに、組合員にアンケートを行ないました。回答してくれたのは約半数で、成功といえませんが、回答者の半分が「管理費会計の単年度収支赤字を知らない」と答えたのには、一寸ショックを受けました。

 もっとも、これには毎年の決算書に単年度収支が表示されず、次期繰越が相当額あったところにも原因があるかもしれません。9月、初めての検討委員会は、管理委託費も問題に取り上げましたが、管理委託費の内容別の金額を誰も知りません。どのように改善するのか、その手掛かりもありません。 具体的な提案は、廊下の照明を節約しようかという程度で終わりました。その翌日、一人の委員から「道管連という団体があり、相談に乗ってくれる」と教えられました。これが、すべてのキッカケになりました。翌日、道管連を訪ねました。相談員のマンション管理士さんはとても親切に対応してくれ、マンション適正化法があることをはじめて知り、道管連の古い機関紙もコピーしてくれました。 その中に、住宅金融公庫の「We'll」(現在休刊)が紹介されており、早速、公庫からWe'llのバックナンバーを取り寄せました。さすがは住宅金融公庫−親方日の丸−、とても綺麗な印刷物で、「マンションすまい・る債」のPRも兼ねていたのでしょうが、マンション関連団体の情報が豊富で、後でお世話になる「北海道マンション管理問題支援ネット」(以下「支援ネット」)も載っていました。


管理委託契約書の熟読から始まる

 管理委託費の詳細は、偶然、管理委託契約書原本から知ることになりました。その原本は歴代理事長が引き継いできた書類ですが、誰も気付かなかったようです。ある時、ふと全文を読んだ契約書の一番最後に、委託業務費の内容と金額が書かれているのを見付ました。しかし、その額が適正なのかどうか分かりません。検討委員に見せると「理論武装が必要」といわれました。それで、その内容の診断―本会の経営診断―を頼むことにし、道管連と支援ネットに電話しました。道管連には断られましたが、支援ネットは無料で引き受けるといってくれました。しかも、診断結果をマンションに来て解説までしてくれるというのです。これが支援ネットとの出会いです。10月中旬、理事会と検討委員会の合同会議を開き、支援ネットから診断結果の報告を聞くことになりました。


診断内容に衝撃を受ける

 そして、その報告の内容は衝撃的でした。曰く「管理委託費の年額約500万円は半額で済む」「管理会社との現行の委託契約(平成4年に締結したものを、そのまま自動更新してきた。) は、マンション適正化法に違反しているから管理会社を変更したほうがよい」などなど。
 この診断結果は、大変強力な「理論武装」になりました。直ぐに、理事会を開き「次年度から標準管理委託契約書に準じた契約とすること、管理委託費は数社の見積書を取って管理会社を決めること」を決定しました。
 また、診断で指摘された「エレベーター保守管理費」については、C社に申し入れして、12月から保守業者との直接契約に変えました。その差額は、月7万3千円でした。支援ネットにも「こんな話は前代未聞」といわれました。(これについては、C社に「不当な過払い分の返還」を求めるべく準備を進めています。)


見積書の提出依頼

 支援ネットの協力も得て、8社に管理委託費の見積書の提出を依頼しましたが、或る大手の2社からは、反応がありません。(後日、そのうちの1社と偶然電話でこの件を話し合うことになりましたが、相手方の回答は『色々と注文(例えば、管理員の時給は900円以上とすること等)の付いた申込を受けたことがなかったので』でした。ちなみに、それらの注文はすべて支援ネットの助言によっています。12月中旬、6社の見積が集まり、検討委員会にかけました。その内容は表2のとおりです。

表2 各社別見積額                 (年額:単位円)

会社名 診断
事務管理費 23,100 21,450 19,800 19,800 33,000 23,100 23,100
管理員費 102,068 98,600 91,590 92,800 107,400 89,032 91,600
定期清掃費 23,335 22,200 15,300 15,000 11,600 15,392 13,333
受水槽清掃 5,250 4,250 5,000 6,167 6,000 4,500 5,417
管理報酬 16,500 19,800 19,800 19,800 23,700 13,200 19,800
消費税 8,662 8,315 7,574 7,678 9,085 7,261 7,663
合計 178,915 174,615 159,064 161,245 190,785 152,485 160,913

(注:最終欄の「診断」は、支援ネットの経営診断結果の金額です。2社が、支援ネットの診断額を下回っています。)


従来の管理会社に未練等

 ところがここで思いがけない意見が出されました。検討委員の多数が「マンションの管理は、単に金額の問題だけでなく、信頼性も重要だ。出来れば従前どおりC社と契約したい」という意向なのです。C社の見積額は、これまでの同社の委託額に比較すると約2割安くなっていますが、それでも一番札を2割も上回ります。やむなく妥協案として、C社に「一番札の額との差額の半分を減額してくれたら、契約を継続する」と申し入れすることにしました。12月26日、この案はC社から最終的に拒否されました。今になって考えると、C社が拒否してくれたことは私にとって大変幸運なことでした。もし、妥協案で契約することにしたら、金額の問題だけでなく、組合員にどのように説明するかで困ることになったでしょう。残りの5社から2社を選び、会社の面接と管理マンションの現地調査を行なって、最終的にH社に内定したのは、年を越えた19年2月中旬です。「安かろう、悪かろう」という反論もありましたが、順当に一番札の会社に決まって、ほっとしました。

 3月24日の臨時総会で、新しい管理委託契約書と管理会社H社は無事承認されました。半年前の「次の総会までに改善案を考えましょう」という提案からみると、かなり速いテンポで改善策を実現したことになります。
 現在、次年度の予算案を考えていますが(本会の会計年度は、6月〜5月)、施設設備保守点検等の契約がこれからのため、正確ではありませんが、単年度で約250万円の余剰が出るものと想定されます。それで4月に、組合員に余剰金の使途についてアンケートをとりました。その結果は、第1位、修繕積立金とする。第2位、駐車場使用料を引き下げる(本会の駐車料金は、屋外・ロードヒーティングなしで、月額12,500円と相当高額です)。第3位、管理費の引き下げ。第4位、施設等の改善でした。何とかこれらの組合員の意向に沿った予算を作るべく、ない知恵を絞っています。


全面委託から関係業者と直接契約

 マンションの管理業務については、これまで管理会社にすべてお任せでした。今回の改善に当っては、前にも言いましたが、支援ネットの助言をほとんど受け入れています。その内容は、「全面的委託」から「必要な部分のみの委託」にすることです。支援ネットの言い分は、委託分を増やすだけ管理会社のマージンを増やし、管理組合の負担増になるということのようです。今後、施設設備の保守点検業務の多くを、管理組合が直接業者と契約することになります。この点ついては、役員特に理事長の負担が増えることにならないよう十分配慮する必要があると思っています。また、新しい試みとして、敷地内の植栽保守管理を自分たちの手でやってみようとしています。これも支援ネットの紹介で、元造園業のIさんに技術指導をお願いすることにしました。無理をしないで出来るところから手をつけようと考えています。


住民の無関心をどのようにして克服するのか

 今回の管理会社変更の経過で強く感じたのは、管理組合と管理会社のあり方と組合員の無知・無関心です。国土交通省主導の「マンション管理標準指針」のコメントに「管理会社は、マンション管理を進める上での管理組合にとって重要なパートナーで、コミュニケーションを密にし、協力関係・信頼関係を築き上げることは重要」とあり、委託契約書にも「信義誠実則」をうたっていますが、C社の対応にはその片鱗もなかったように思います。また、我々組合員も、マンション管理に無知・無関心で、すべて管理会社に「おんぶにダッコ」でした。
 そのことが、長年、管理会社の言いなりの高額な委託管理費を払い続けた最大の原因だと、自分自身深く反省しています。もっとも、私がマンションを選んだ理由の一つは「近所付き合いのないこと」でしたから、最近はなんとも矛盾した気持です。一つの土地、建物等を共有するマンションには宿命的な管理組合の存在に必要最小限に係わることの限界を見定めようと努力しています。


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