マンションの大規模改修と設備システム


建築物(マンションなど)と設備

1 設備とは建築物に含まれるが、一般的には建築物本体以外のもので、生活を行うために必要なもの、あるいは安全を確保するためなどに不可欠のもの等がある。適用される法令も多く、建築基準法以外に消防法や電気関係各種法令によるものもあります。

2 建築物本体を身体に例れば、本体は骨格、筋肉と言える。それに対して設備は頭脳、血管やリンパ管、神経、消化器官等に例えられよう。いずれも生活には欠かすことの出来ないものであり、適切な日常のメンテナンスと保全が不可欠であります。


設備の種類や区分

1)給水、給湯、排水等の水に関するもの(場所によっては浄化槽設備が有る場合も)

2)暖房、冷房、換気設備などの空気調和設備

3)エレベーター等の搬送設備

4)消火栓、連結送水管、消火栓ポンプあるいは消火器等の消火設備・・(都心のマンションで地下駐車場などには炭酸ガスや泡消火設備などがあるかもしてません)

5)マンションによっては集合液化ガス(LPG)設備などのガス設備あるいは都市ガスの配管等。

*規模によっては他にも種々ありますが、これらを一般的に機械設備と称しています。

  また電気関係と言われる設備として

1)受電設備(大きな施設では受変電設備)電灯設備、動力設備、コンセント設備また規模によっては非常照明設備や避難口、あるいは通路誘導灯(階段通路誘導灯など)設備

2)セキュリティ関係として自動火災報知設備(今度からは一般住宅も対象になりましたね)、非常通報設備、防犯監視設備(監視カメラやレコーダー)など。

3)通信関係として電話用設備(端子板など)やテレビ共聴設備(今後は地上デジタル対応が問題ですか?)さらに最近ではインターネットや有線放送などのネットワークや共聴設備。

4)避雷針設備(同様に普段は気にしておりませんが、各種の保安接地工事などもあります)

  等が通常のマンションには電気設備として設置されていることと思います


設備と保全

 キーワードとして

1)生活の近代化に伴う各種設備の複雑化、増大化

2)日常点検(建築本体より日常的には注意が払われるものも多い)

3)事前保全と事後保全

4)定期的な改修の効果と費用(保全曲線)

5)大規模修繕(大型改修というもの)(点検、修繕、)

6)消防設備など法令による失効〔法令点検〕

7)エレベーターなど高度の専門性を有する設備(フルメンテナンス契約 または部分メンテナンス契約)


日常的な修繕と大規模修繕

 これらの各種機械や電気設備は、日常皆様あるいはご家族、さらには管理員や外注の技術者が見るなどされており、不具合があったばあいには、それなりに対処されているものですが、設備関係特に機械関係の設備は全体で一体となって機能を発揮しているものですが、通常の修繕に当たっては、建築本体や専用区分と共用部分との関係取り合いなどから各居住者との調整も有り、ついつい一時的な修繕に終わって、根本的な改善がなされていない場合も多いと思われます。
 このように専用部分と、共有部分の垣根を越えて全体のシステムとしての設備をリニューアルし日常の不具合の発生を低減するとともに、かつ、今の時点で求められる性能にグレードアップし資産価値を増大させることが大規模改修の目的だと思います。
 設備システムというものは、全体がいつもは見えていないが、毎日休むことなく動いているか、あるいは内部に液体などが流れており、絶え間なく減耗、あるいは劣化し続けており、一定程度の年月(資材の種類によるが)で更新することが必要となります。


大規模修繕と設備の工事

 大規模修繕時期に合わせて改修を必要とするものは、資材の寿命などから給水排水関係や給湯、換気設備などが特に多いと思われます。
 さらに改修に当たっては、建物本体(構造、仕上げ)に手を加える必要がある場合や、高所の場合では足場などの問題が有るものもあり、その様な観点から専用設備であっても大規模修繕に合わせて改修を行うことが有利である設備も考えられます。


給水設備の構成や改修の考え方

1)受水槽、滅菌設備、加圧ポンプ・・・・・今後は直結加圧ポンプ方式(自治体水道局の確認)・・・・・受水槽の廃止でメンテナンス低減衛生的」
受水槽式の場合では、水槽の6面点検を実施できるように改修あるいは新設を検討することとなりますし、受水槽や高置水槽が有る場合には、耐震性能を確認し補強する事や管の接続に耐震性能のある可撓継ぎ手や緊急遮断弁などを設置するのも有効と思います。(災害時に内部の水を利用できるので)

2)給水配管・・・・加圧された水は給水主管で各ブロックに縦配管され、分岐バルブを経て各戸に分岐されそれ以降は、寒冷地の場合凍結をさけて各戸の床下、天井配管あるいは壁内配管でカランなどに接続されるのが一般的かと思います。
給水管は種々の配管種類がありますが、水道用亜鉛メッキ鋼管、合成樹脂ライニング鋼管、ステンレス管、銅管、塩化ビニール管(最近ではポリブデン管)などを設置場所、費用などを検討して決定します。
ステンレス管などは当初設置費用は少し高いものですが、耐用年数なども考慮すると必ずしも高いものでは無いという事も有りますので、総合的に判断します。

〇給水については内部に錆こぶが発生すると、アカミズ、水の出が悪い、また給水の圧力が不足になり、瞬間湯沸器が上手く点かないなどの症状があり、住んでいてわかりやすい。詳細にはカットコアを採取して錆や肉厚を調べます。肉厚が十分ある場合には、内面ライニング再生工法で改修することも有ります。(費用時間、耐用年月など比較検討して決定することになります)

3)排水配管・・・・排水管は塩化ビニール管、セラミックを外装した耐火二重管、塗覆装鋼管・配管用炭素亜鉛メッキ鋼管、鋳鉄管、排水用塩ビライニング鋼管、鉛管、エタニットパイプなどで配管され、古い設計では各戸の排水管を通常下の階の天井裏に配管し、配管シャフトにある排水縦主管に接続する(今では床を一部2重にするなどして自分の専有部分で納めるのが多いと思います)

〇排水の不具合は、流れが悪い、ゴボゴボ音がする、下水管などのにおいがするなどありますが、下の階で配水管が詰まりますと、それ以上の階の排水が逆流し大きな被害を及ぼします。
配水管に不要なものや油などを流さないように、居住者のモラルが不可欠でありますが、どうしても経年で錆や尿石によるつまりや、油分などの固着、接続部分の劣化による配管の外れなども起こってきます。
排水管では通常キッチンの排水管が傷みが早いと言われますが、これは塩分や酸など腐食性の有るものが流されることや、温度差のある排水が頻繁に流されることに依る劣化の進行が有ると言われております。
改修するための事前調査として、最近はファイバースコープなどを使ったり、カットコア採取し調べることなどがあります。

4)通気管・・・・空気しか流通しない配管である通気管の虫等による閉塞などもあります。
通気管はまたその開口部分によっては、その近くの住戸に悪臭をもたらすこともあります。(通気管の重要性については余り知らない方が多いと思います)

5)給排水管の設置位置
給排水管は寒冷地の場合特に凍結のおそれから、屋外部分に設置できず、共用部分と専用部分を貫通していること。
また、上階の配管がその下の階の天井懐に配管されることが多かったこと。(最近はこれをさけるため、各々の床を2重にしてその中に配管する事例もふえているしまた床面以上の高さに排水管を設置できる機器も出来ている。)
古い施設では、このような取り合いから、上の階の故障が下の階に被害あるいは迷惑を及ぼすことも多い。

新しいものを建てるので有れば、2重床方式も良いが、大型改修に当たっては極力その後の改修や修繕に容易に対応できるように、工法、資材とも非常に多くの種類が有りますので、それぞれの利害得失を総合的に十分検討し、決定されたらと思います。

排水の系統は雨水(通常ベランダ周りなので建築で施工することが一般的)を別として、便所などの汚水系統と台所や洗面風呂の雑排水系統、さらに先ほどの通気管の3系統の配管で構成されておりますが、改修に当たってこれらを一本の縦管に集約する工法もありますので、設置スペースなどを検討して決定いたします。

※昔の建築断面と配水管など納まり(下の階の天井で納める)

※現在のもの(自分の床面で納める)・・・・さらに2重床システムなど採用


給湯や暖房用のボイラーについて

 ボイラーの種類は大変多く、熱源でもガス、灯油、電気などが普通です。
 このうち電気については、運転に当たって空気を必要としませんし、排気ガスの問題もありませんが、石油やガス熱源で有れば、燃焼用空気を供給し、排気ガスを安全に排出しなければなりません。
 一般的にガスや石油のボイラーは、少し古いマンションでは、室内の空気を使って燃焼させ、排気ガスを強制的にファンで排出する(FE型)ものが有ります。
 最近はストーブもFFタイプ(吸気排気とも直接外部に行う)として、室内に給排 気の問題をなくしたものも多いですが、先ほどのタイプでは、大規模改修の頃には概ね 機器の寿命が来ると思われます。
 北海道では割と少ないと思いますが、バランス型と言うものもあります。バランス型は一種のFF型ですから、室内に排気ガスの心配は無いのですが、設置されている場所によっては(通路や高所)メンテナンスに問題のないシステムに変更することも良いかと思います。

 排気のみを強制的に行っているものでは、強風で種火が吹き消されたり、台所の大きなレンジフードファンを運転しますと、室内の空気の圧力バランスが悪くなって、湯沸かしボイラーの排気ガスが室内の逆流したりという問題があります。(今までのお住まいは如何ですか?)
 これを改修するには、電気にすればよいのですがガスや灯油の熱源の場合は、一般的にはFF対応のボイラーに変更することが多いと思います。
 この場合に問題となるのは、既設の排気ダクトの大きさよりFF型の場合の給排気ダクトの方が直径が大きなことです。
 通常ダクトは、外壁面に出ており、特にベランダのないところでは、外壁の貫通部分を広げるには足場を組む必要がありますので、大規模改修に当たって同時に施工することが重要かと思われます。


換気ダクトについて

 また同様にダクトでは台所からのものや、キッチン、洗面トイレの排気ダクトがボイラーと同様に外壁面までもうけられております。このダクトは通常専有のものとされて管理されていると思いますが、フイルターやグリル周りの清掃は、何とか日常のメンテナンスで各人がやって居られると思います。
 しかしそのダクトの内部の清掃は普通の人ではなかなか困難で、まず清掃されていないと思います。その結果、ダクト出口のギャラリ周りが油分や内部からの塵埃で汚損しているケースが多いものです。また衛生的にも是非清掃は必要です。
 せっかくの大規模改修で、外壁のお化粧直しをしても、ダクトの清掃がなされていませんと、すぐにまた汚損されることが考えられますので、ダクトの点検と清掃を是非改修に併せてご検討されたらよいと思います。


地震と設備

 また最近地震が多くその都度大きな被害を及ぼしておりますが、瞬間型の湯沸かし器で有れば内部の水量が少ないので余り問題はないのですが、貯湯式の深夜電力温水器などのものは地震で転倒しないように十分固定に留意することが大切です。転倒しますと内部の熱湯が流れ出て被害を大きくしがちです。


大規模改修についてのキーワード

1)計画の立案はどうするか(現在の管理会社の能力、施工会社の能力、設計{管理}能力)事務所

2)大型改修の費用の積算(見積もり 積算資料 物価版 国土交通省 歩掛かり単価)

3)共用部分の設備と専用部分の設備や建築部分の再度区分仕訳?(これをどうするのかは今後検討されることが改修などをスムースに実行するため必要だが組合員の合意総会での議決と規約の改正が不可欠・・・特に給排水管)

4)現状の設備をより良く改修し、メンテナンスコストを低減する(受水槽から直圧へ・・・水道管の引き込み口径 料金 メーター?等)

5)階段灯などの自動制御でやポンプのインバーター運転など節電や省エネルギー化の推進

6)配管についての留意事項

ア・・・・・配管の勾配と建築構造

イ・・・・・材質と防音や防火区画

ウ・・・・・メンテナンスの考慮(シャフトの共有化 防火戸 防音 耐火区画掃除)

エ・・・・・配水管のつまりを減らすには横引きを極力短くし、横引き主管の直径を縦主管よりサイズを上げる事も有効です。

オ・・・・・屋外の各種埋設管では地盤沈下に依る傷みや、土質による劣化がないか調べる(排水管等なら懐中電灯を排水ますの中におろし、他のますから潜望鏡のように鏡を入れて簡単に調べることも可能です。また植物の根が張りだしていて詰まると言うことも良くある事です。)

カ・・・・・植裁用カランなどは良質排水として下水道料金を低減できないか?
(ボイラブロー水など・・まあ無いと思いますが)


その他の設備など

1)受電電力について
 ここまではとかく問題が多いと思われる給排水などを主として話しましたが、近年の生活の高度化によって、家庭の電力需要は益々増える傾向にあります。
 その場合に問題となりますのは各戸の配線の容量が不足したり、あるいは200ボルトの機器が使用できないなどの事があります。
 大規模改修に当たっては、住民の電力使用状況を良く調査されてその結果によって電力会社とうち合わされて適切に受電容量を増やし、各戸へ至る電力の幹線を改修したり、各戸の分電盤を含めて改修したりもお住まいの資産価値の増大になり、検討の必要があると思います。
 方法論はマンションの規模などで異なりますので、詳細は申しません。

2)エレベーターの耐震改修と非常用バッテリーなど
 地震時にエレベーターの安全を確保し、かつ最寄り階に着床させたり運転を制御するなど地震についての改修がされていない場合には、併せて検討されたらよいと思います。

3)その他にも電気設備は各種セキュリティを含めて多様なものが有りますが、一般的に機械設備関係よりも、改修などを比較的に行いやすいと言うことはあります。
 しかしながら、大規模改修に当たっては、バラバラに改修するよりも仕上げが上手くできるとか、無用な工事期間を必要としないなどの利点も多いと思いますので、検討に当たっては漏れの無いように、長期計画を確認しつつ、それにに沿って検討されることが良いと思います。


最後に

 マンションであれ一戸建てであれ、ご自分の住まいをいかに保全し快適に、かつ安全でさらに資産価値を保つかと言うことは、何をおいてもそこに住んでいる個々人の自覚でありますし、区分所有法に基づく所有者の責任であります。
マンションの大規模修繕というと何だか難しいと思われて、改修の委員になることなども逃げ腰になられる方が多いのですが、良いコンサルタントさえ参加してもらえれば、実際は個々の委員がそんなに難しい技術を持って検討しなければならないと言うほどのことは特に設備については余り無いように思います。
 むしろ素人の方が、常識的に何故だろうと言うことの方により本質的な事があることも多いです。
 是非今後の改修の計画に当たっては、その様な観点からお住まいになって居られる組合員の方々に大いに参加を戴くように出来たら、本当に良い大規模改修が成功裏に終わられることと思っております。


参考文献

マンション設備改修の手引き
  編  著  マンションリフォーム技術協会
  編集協力 社団法人 日本建築家協会
  発  行  株式会社 ぎょうせい

管理組合・実務家のための 改修によるマンション再生マニュアル
  監  修  国土交通省国土技術政策総合研究所
  編  集  マンションリフォーム技術協会  マンション再生協議会
  著  者  マンション再生技術研究会
  発  行  株式会社 ぎょうせい

※ いずれも図版や写真などを掲載してわかりやすく構成されているように思います。基本的考えや関係法なども出ており図書館でも蔵書しているところが有ります。(私は道立中央図書館で借りてきました)是非一読されたらと思います。


積算資料ポケット版マンション修繕編
  編  著  建築工事研究会
  発  行  財団法人 経済調査会



   

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