管理組合の基本的業務の進め方


はじめに

 昨年の10月と11月に別々の管理組合の理事会が前期の理事会から業務を引き継ぐ実態を目の当たりにし、これほど基本的業務の違い方に驚きを禁じえませんでした。

 10月に開かれた新規の理事会は「前期の理事会からの引き継ぎ事項が無く、共有部分の鍵のみが新理事長に引き継がれ、理事長印の引き継ぎ、引き継ぎ文書も無く」これでは、どうして新理事会が業務を執行するのか疑問になりました。「理事会は休眠状態で、運営は管理会社に全てお任せであったことを予想させる」のに充分な理事会の引き継ぎセレモニーでした。

 それにしても、「管理会社の業務とは何か。引継も理事会に教えてなかったのか。」確かに、「適正な情報を伝えれば管理組合の当事者能力が向上するし、管理会社にとっては理事会を眠らせたままにしておいた方が楽だ」と勝手に解釈してしまいました。

 一方、11月に開かれた別の管理組合理事会は「前理事全員と新理事全員が一同に集まり、前理事長から総括的なこれまでの業務と未処理事項の報告、各担当理事からは新理事担当理事へ直接引き継ぎが」行われました。そして、感心したのは日常業務のマニュアルが制定されて、業務に連続性があることでした。

 これまで、管理組合の基本的業務は「委託している管理会社の流儀」に流されている側面が大きく、管理組合主体からの情報に欠落している点がありました。

 平成13年8月1日施行のマンション管理適正化法以来、マンションの管理を巡る情勢に変化が生まれているところですが、管理組合運営の基本的業務の有りようにはあまり進歩がなされていないように見受けられます。従いまして、今一度基本的運営について議論してみる必要があります。


マンション管理標準指針

 昨年の12月国土交通省はマンション管理適正化指針で示している行政の支援を進める一環として、「マンション管理標準指針」を制定し広く国民に示しました。

 この内容は「別紙資料」を参照すれば明らかのように、管理組合の理事会が業務として日常取り扱わなければならない全ての事項について、標準的対応と望ましい対応を示して、且つ、該当する法令とコメントを列挙した非常に丁寧なアドバイスの実用書と言えます。

 まず、本指針を参考にして、示している業務内容以下の管理組合は直ちに指針水準まで引き上げることが当面の基本的業務の進める方向であることを力説したいと思います。

 しかし、指針以上の内容の業務を執行している管理組合はレベルを引き下げる必要はさらさらなく、もっと質の高い管理業務の開発に挑戦して、モデル仕様を作り上げて下さい。

 本指針は総ページ数160ページ程度のボリームがあり、ホームページからプリントアウトすることも非常に難しいところであります。従って、当マンションネットは50ページ程度(両面印刷)に圧縮して安価で頒布することを計画しております。皆さんの、ご利用をおねがいします。


総会と理事会の開催

 総会は法令で規定され、必ず年に1回は定期総会は開会しなければなりません。しかし、特定の管理組合では何年間も総会を開かないで文書の配布で済ませているところもあります。

 総会の通知期間は標準管理規約では2週間必要とされているが、重要議題があるにもかかわらず1週間前に文書が配布されている例も見受けられます。また、総会で議決権を行使する方法の法定義務の書面投票(議決権行使書)を認めていない管理組合もあり問題であります。

 理事会は毎月1回は開いて課題の打開にあたることが望ましいと指摘されていますが、毎月1回開かないと理事会の機能が喪失するとしている活発な理事会も出現し頼もしい限りです。

 また、理事会を毎月開きはするが、意見交換会的な自由討論に終始し、理事会としての議決が中々なされていない理事会もあります。そして、異論があるにもかかわらず、短時間の不十分な議論で採決している管理組合もあり、管理組合の進める方向としては大いに問題があります。

 このような進め方は派閥の形成や無関心の造成に拍車をかけることになるでしょう。理事会の議論は様々な意見を述べて、異論があれば改めて検討し早急に結論を出すことを避けた「組合員の共同の利益が確保されるような進め方」を追求することが重要と考えられます。


理事の任期

 理事の任期が1年となっている管理組合が多く、管理組合としての当事者能力の蓄積がなされていない実態であります。少なくとも任期は2年間で50%交替方式が最低限必要でしょう。

 ある分譲業者が作製した原始規約では「任期は2年間の50%交替方式」が規定されていたのに、第1期の理事会は何を勘違いしたのか、最悪の1年間任期に後退させた規約に改悪しました。

 特定の組合員が長期に役員に就任することも弊害を生みますが、短期間の交代は管理組合の運営にとって問題を生みつつあります。管理組合の運営に取って有効な役員の任期を追求すべきと思料します。


理事会の引き継ぎ

 先に事例を示したところですが、管理組合の理事会の業務引継が制度化されていない管理組合が圧倒的な存在であります。何とか、管理組合の運営の継続性を確保するためにも、引き継ぎを文書化して保存することが必要です。

 また、理事長とか特定の理事の方に業務を押しつけないためにも、担当理事がそれぞれ関係業務を引き継ぐ体制をつくることが焦眉の課題になっています。


理事会の広報活動

 管理組合の情報は全て開示することをお薦めします。これまで、定期的に広報を発行している管理組合では、管理組合に対する関心度が高まっています。

 理事会は組合員から業務の執行を委任されており、その状況は組合員に通知する義務があります。それを怠っている管理組合の場合「定期総会でつまらない事項で紛糾すること」になり、常々情報公開していれば本質的な進め方で議論になっても、些末な問題は発生しないところです。

 広報活動を通じた沢山の事例がありますが、共通していることは「管理組合の情報を媒介にして、入居者間のコミュニケーションが旺盛になり、お互いに挨拶するようになった」という事実です。

 また、総会出席率の悪い管理組合の理事長に就任した方が自ら広報作成を買って出て、継続的に発行し続けました。その結果、一年後の総会はかってないほどの参加があり、継続は力というところでしょうか。 今年は、是非各管理組合の広報の交流集会も計画し、広報活動の飛躍の基盤を造ろうと思います。


専門委員会の設置

 改正標準管理規約では、専門委員会の設置を規定しております。現在、多くの管理組合では「大規模修繕工事に関する委員会」「管理規約の改正に関する委員会」等が設置され、理事会の諮問内容に対して調査・研究して答申することになっています。

 組合員が積極的に参加して組合の運営に寄与することは望ましいところでありますが、場合によっては二重権力構造をつくるようなことになっている事例も見受けられます。

 専門委員会はあくまでも理事会の諮問内容に関して、検討して報告することであり、理事会に対して強制的従わさせることはできません。理事会は答申に関して議論して、成案を総会に提案することになります。


理事会議事録・会計書類等の閲覧

 理事会議事録や会計に関する書類の閲覧は組合員の当然の権利であり、拒否することはできません。日時を決めて担当理事の立ち会いの下に、疑問には応えることで対応しなければなりません。

 ある管理組合の事例「組合員が会計書類の閲覧請求をしたところ、その殆どを拒否されたために、臨時総会を招集し、理事長等を解任しました。その後、関係書類を調べたところ、業務上の横領などが発見された。」

 この事例にあるように、閲覧拒否には、このような不正な執行があり、常日頃組合員が業務に関心を持ち参加するようにしなければ、特定の理事長のために莫大な組合財産が喪失してしまうこともあります。

 従って、理事会は関係書類の閲覧が何時でも気軽るにできる体制をつくることが管理組合民主主義にとって重要であること認識すべきでしょう。


理事会の業務分担

 理事会の業務分担を大まかに区分すれば、総務担当、会計担当、広報担当、建物・設備担当、環境担当、等になります。理事長一人では物理的に不可能であり、理事全員の分業制で集団として、業務を遂行することが、マンション管理指針の要請であります。

 従って、それぞれの担当理事は理事会に於いて、担当範囲の業務の報告を必ず行い、理事会の承認を受けることが肝要です。もし、間違った運営が行われていたならば、当然議論になり次回から是正しなければ成りません。


防災・防犯の対策

 理事会業務で、どちらかというと軽んじられていた部門であり、関心も低い分野であります。しかし、マンションの安全性という極めて重要な事項であり、「災害は忘れた頃にやってくる」と言われています。

 まず、法定義務としての防火管理者が選任されていないマンションがあります。消防署の講習を受けて選任することが必要です。消防計画の策定とその周知、定期的な防災訓練、避難場所の確認など、常日頃から周知して、万が一に備えることが管理組合の重要な責務であります。

 また、このところ、マンション内で不審者に襲われるケースが頻繁にあり、理事会として、その対策を講ずることが求められています。理事会で検討して、具体的に対策を示さなければ成りません。


火災保険等の是正

 管理組合の行うべき業務として、火災保険等の加入が規約で義務づけられております。当初、分譲会社等が定めた保険に、そのまま加入している事例が多く、無駄な掛け金の実態の事例もあり、改めて再検討して建物等の再建築価格等の再算出も実施し、適正な価格の保険付与が必要でしょう。

 現在、保険会社によって様々な商品が発売されており、当該管理組合にとって適正な保険に加入し、管理組合の建物等の財産を守ることが重要です。


管理規約等の改正

 このところ、マンションの管理に係わる重要な法令関係が改正されました。特に、区分所有法の改正に伴う、標準管理規約の改正で、当規約を見習い改正する動きが高まっています。

 しかし、未だに改正してない管理組合もあり、早急に改正することをお薦め致します。具体的には標準管理規約等の複写などの提供を含めた、必要な支援を進めており、是非活用して時代に相応しい管理規約に是正することを希望します。


管理組合の予算・決算

 まず、会計は目的別に区分して経理をしなければなりません。例えば、管理費会計(一般会計)、修繕積立金会計、駐車場使用料会計、水道料金会計、灯油料金会計、等と会計の性格別に区分しなければ、混然として、問題の対策も立てづらくなります。

 特に、灯油料金のように入居者に係わる専有部分の収支も一般会計に混在していれば、適正に処理していない場合は、支出が多くなり管理費を結果として消費することになります。つまり、管理組合が一時立替ている、言わば立替債権は独立した会計を構成することが透明性の確保につながります。

 また、予算主義の原則(予算準拠主義)の観点から、予算を計上する際は無駄な支出にならないように検討することと、過小になって支出できないことがないようにすべきでしょう。

 予算の執行に当たっては、原則を厳しく保持しながら、柔軟に対処する方策も検討するようにしたいものです。例えば、会計細則中に予備費の計上を認め、理事会の決議で補正予算が組めるようにすることも一つの考え方ではないでしょうか。

 但し、金額の制限を設けることが必要です。歯止めをかけなければ理事会で無制限に支出ができるようになり、組合民主主義が崩壊してしまいます。通常、台風などで被害を受けることが予想されますが、その程度の額が予備費の限度額です。

 決算では各科目ごとに過大な支出になっている決算書が時々見られますが、原則を踏み外しています。会計細則等で理事会の専決事項として予備費の流用を認めるようにすれば、問題は解決します。

 このようなルールを定めないでの過大支出は大いに問題があります。


監事の業務

 監事の業務を軽視している傾向があります。管理会社が作製した関係書類に目くら印を押すことで業務は完了しません。監事の業務は管理組合の業務全般の監査と会計の監査に分けられ、業務監査は「組合員の共同の利益が確保された運営が行われているのか、どうか」つまり、適正な事業が執行されたのか、事業に見合った適正な価格が執行されたのかを評価し、利益が失われた場合は厳しく批判しなければなりません。

 また、会計監査に於いては「収支の状況は関係書類を吟味し適正に執行されたのか、どうか」行う必要があります。年に一度の監査業務が各管理組合に於いては多数のようですが、上期、下期に分けて実行することも業務の効率的在り方として検討して下さい。

 改めて、監事の監査業務を見直して、権威ある地位にし不正の発生や公正を失うような管理組合の運営を排除する役割とすべきではないでしょうか。


財産管理と滞納の対策

 管理組合の現金、貯金、有価証券、保険等は当該建物・設備等の維持・管理・保全のために厳格に確保されなければならい。しかし、このところ、役員の業務上横領事件が頻繁に発生し、不本意にも財産が失われていきます。財産管理の体制を滞りなく進めるためにも、会計細則等で保全のルールを確定し、毎月の理事会で確認することが求められます。

 滞納の問題は、最高裁の判例後時効期限は5年間になり、そのまま放置していれば毎月管理組合の財産が時効になります。

 少なくとも、3カ月以上滞納しない徴収方策を講じ、もし、3カ月過ぎたならば少額裁判等の法的手続きの行使について検討することが必要でしょう。取りあえず、民法第147条第3号の活用をお勧めします。


法定点検等の業務

 建築基準法、消防法が規定するマンションの法定点検は義務事項であり、免れることはできません。しかし、当初に分譲会社等が契約した価格をそのまま継続している管理組合もあり、価格の見直しと節減対策をお進め致します。また、これらの点検業務には担当する理事や役員が立ち会っていない管理組合が多く、管理員も含めてた立ち会いを是非実行してください。

 中でも、消防設備点検の際、火災報知器の点検は留守宅は排除されている場合が多く、管理組合として何らかの対策を講じて、少なくとも1年に1回は点検してもらはなければなりません。


建物等の劣化診断の実施

 法定点検以外にも、定期的に点検している管理組合もありますが、少なくとも築後10年経ったマンションは経年劣化も進んでいることでしょうから、マンションの構造等に精通している建築士に依頼した目視診断をお薦めします。

 その、診断結果に基づいて、初めての大規模修繕工事の時期や工事内容を決めることになります。


長期修繕計画の見直し

 分譲当初の計画を見直さず10年程度放置している管理組合は、直ちに診断を実施して、数量調書に基づく正確な計画の再算定を進めたいものです。

 管理組合独自での作製が不可能な場合は、本業務に精通している建築士に依頼して作成し、本計画と付随する財政計画も見直すことが必要です。


適正な修繕積立金の確保

 大規模修繕工事のために、積み立てている修繕積立金の必要なガイドラインは国土交通省等から示されているところです。昨年の12月に発表された「管理指針」でも概ね1戸当たり30年間で500万円〜600万円という数字になっています。大規模のマンションは低くなり、小規模のマンションは示されている金額を超えることも予想できます。現在、修繕積立金が低く抑えている管理組合では数量調書に基づく計画の見直しを進める前にも、不足する分の計画的引き上げは焦眉の課題であります。

 1u当たり、40円〜100円未満の低い徴収金の管理組合は直ちに引き上げのための計画策定に入ることをお薦め致します。


全ての経費をローリング

 管理組合の運営にとって無駄な経費の支出は共同の利益を失うことを意味しています。分譲当初からの費用が現在も続いている管理組合は、間違いなく無駄な経費を垂れ流しています。

 まず、これらの経費の見直しを実行し、一般会計の余剰金は全て修繕積立金会計に繰出て適正な修繕積立金の確保に寄与させるべきです。

 そのことによって、区分所有者の負担の軽減に繋がり、現在のような不景気でリストラや給料の削減に見舞われている場合、この方策こそ選択すべきところでしょう。


管理委託契約書の点検と価格等の是正

 多くの管理組合が締結している「管理委託契約」に関して、マンション管理適正化法制定後、標準管理委託契約書が改正され、消費者保護の観点から任意解約権が導入されたものになりました。

 これまで一度、契約すれば中々解除されずらい内容でありましたが、何時でも管理組合の一方的な都合で解除できることが最大の特徴であります。勿論、最悪の自動継続条項は排除され、単年度契約になりました。

 本契約書を採用していない管理組合は年度途中であろうとも、管理会社に申し入れて契約の見直しを行うことが必要です。

 さて、この契約書改訂作業と平行して、全ての委託経費の見直しと、管理委託契約の中にあった各種のメンテナンス契約は契約から排除し、関係業者と直接契約に切り替えて価格の見直しを進める事であります。 また、マンション管理適正化法が要求する義務事項として、「管理委託契約に際して、当該管理組合の組合員全員に重要事項の説明責任が規定されていること」「省令で規定している会計等の関係書類の引き渡し」は当然履行しなければなりません。

 しかし、残念なことに登録業者でありながら、法律施行後4年間一度も義務事項を果たしていない管理会社が存在しております。何故、このような法令違反の業者が存在しているのでしょうか。

 当然、厳しい監査が入り登録の取り消しまで進むことが予想されます。このような法令違反の業者との契約は破棄し、時代に沿った新たな管理会社との契約の締結こそ必要であります。


法令の遵守と不法行為の排除

 管理組合の執行する業務は管理規約(細則等)に定めているとおり実行することが前提であり、「規約は規約、その時々の理事会が適当に実行すれば良い」という、考え方はそもそも存在致しません。

 しかし、少なくない、管理組合で規約の規定がないがしろにされている事実もあります。このような状態が長期に継続されれば、規約の求めるレベルに引き戻すのにとてつもない労働と時間が求められます。

 さて、規約違反している区分所有者等に対して、どのような対処が求められるのでしょうか。頭を悩ませる問題であり、先送りしている事例が目につきます。「是正させたいが、別の理事会で対処して欲しい。自分たちは問題にしたくない」という、方々が主流のようです。

 しかし、何時かは是正させなければなりません。ある事例として、「違反者に事実をありのままに伝えて、是正を要請することを二回行い、三回目は法的執行を予定した文書を送付して、何とか解決した」としていますが、これは大変うまくいった例です。中々このように行かないのが現実です。

 何度、要求しても誠意の無い場合は、法的に解決しなければならないのは言うまでもありません。規約の遵守は管理組合の秩序の確立であり、社会の規範の範囲内です。もし、法令に反する規約が制定されていれば、それは論外であり、むしろ、その規約を是正させることが必要であります。

 また、規約にも反しその他一般の法理にも反した行為を続けている方も中にはおり、その管理組合ではいよいよ裁判提訴を前提にした弁護士に委任した事例もあります。

 このような行為を黙認している管理組合には、暴力団を始め反社会的な行為を行う者を誘導する要因になります。住んで良かったというマンションライフを確立するために、不法行為の排除は当然管理組合理事会の絶対的業務であります。



   

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