マンションのルールと販売会社


 マンションの購入を検討される時に、管理費額、修繕積立金額、居住者向けサービス、また、それらを取り決めている管理規約、使用細則などは購入検討の重要な要素です。しかし、販売会社が提示しているこれらのものが、「絶対だ。」「将来も変更されない。」と勘違いしてはいけません。マンション販売終了後の販売会社は、マンションの運営に何の責任も持ってはいません。
 販売会社が『売り逃げ』と思われるような営業をしても、責任追及からも『売り逃げ』します。


管理組合


 区分所有者(マンション購入者)は、「共同の利益を増進し、良好な住環境を確保することを目的」とし、区分所有者全員をもって管理組合を構成します。
 管理組合とは、建物区分所有法により、マンション購入者に強制加入が義務づけられた団体であり、町内会や自治会のように好き勝手に脱退することが出来ません。


管理規約(マンションのルール)


 区分所有者の共同の利益を増進し、良好な住環境を確保することを目的として、マンションの管理又は使用に関する事項等について定められます。
 規約の設定・変更は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議によってなされます。


マンション販売員のセールストークには限界があることを理解しましょう。


『管理組合規約等は、管理組合総会によって制定、改正されるものであり、管理組合は、マンションの区分所有者により構成されるから、販売会社は、販売終了後は、マンションに対して何らの権利義務を持たない。販売会社は、マンションの販売時に、購入希望者に対して、制定予定の管理組合規約等を交付し、承認をとっているが、それは、管理組合設立総会において、円滑に管理組合規約等が制定されるようにするために行っているにすぎない。』


  @「ペット飼育は大丈夫。」
  A「修繕積立金は、最初の計画通りで十分間に合います。」
  B「駐車場使用料は無料です。」


販売会社(販売員)は、将来の管理組合運営に何の責任も持っていません。


マンションにおけるペット飼育に関して、売主である販売業者の説明義務違反及び不法行為責任が否定された事例
              (平成16年9月22日判決 福岡地方裁判所 より抜粋)


事案の概要


 被告(販売業者)が原告(マンション購入者)に対してマンションを販売する際、ペットの飼育に関して不適切な説明を行い、原告を同マンションでのペットの飼育が可能であると誤信させてその売買契約を締結させたとして、損害賠償または不当利得の返還を請求した事案。


原告(マンション購入者)の請求の趣旨


 被告(販売業者)は、債務不履行及び不法行為による損害(マンション購入代金より時価相当額を控除した額、引越し費用、慰謝料など)908万5902円を支払え。など


請求の趣旨に対する答弁(判決)


 原告の請求を棄却する。


福岡地方裁判所の判断(判決)


 証拠及び弁論の全趣旨により認められる事実。


(1)原告は、平成13年4月当時、福岡市所在のマンション(以下「旧原告宅」という。)に、B、翌年に小学校に入学する予定だった娘が住み、パグという種類の小型犬を飼育していた。
 原告及びB(以下「原告ら」という。)は、本件マンション2号室に入居後も同所において、上記犬を飼育しており、その犬は、平成15年7月当時、9歳である。
 原告らは、平成13年4月当時、自宅用にマンションを購入することを検討しており、旧原告宅が所在するX校区内にあり、ペットの飼育が可能なマンションを探していた。


(2)被告は、平成12年12月ころから、本件マンションの販売を行っていた。
 被告は、マンションの販売にあたって、購入希望者に対し、ペットの飼育は原則禁止されているが、他人に迷惑、危害を及ぼさない範囲であればできると考えられる旨説明するよう、営業担当者に指示しており、本件マンションについて、特段異なる指示はなされていなかった。


○ 被告が、購入予定者に提示した本件マンションの管理組合規約案には、以下の規定があり、同案は、本件マンションの管理組合規約として承認され、現在も通用している。


第17条 区分所有者及び占有者は、本マンション内において、次の行為を行い、又は他人に行わせてはならない。但し、建物等の保存に有害でなく、その他建物等の使用又は管理に関し、区分所有者の共同の利益を損なわず、且つ、他の居住者に迷惑を及ぼしたり、不快感を与えたりしない使用上のやむを得ない行為であって事前に管理組合の承認を受けた事項はこの限りではない。

10号 その他区分所有者の共同の利益に反し、又は他の居住者に迷惑を及ぼしたり、不快の念を抱かせる行為をすること。


第45条1項 組合員(=区分所有者=マンション購入者)は、その所有する住戸1戸につき各1個の議決権を有する。


第46条3項 次の各号に掲げる事項に関する総会の議事は、前項にかかわらず、組合員総数の4分の3以上及び議決権総数の4分の3以上で決する。

1号 規約の変更


○ 被告が、購入予定者に提示した本件マンションの使用細則案には、以下の規定があり、同案は、本件マンションの使用細則として承認され、現在も通用している。


第1条 本マンションの区分所有者または占有者並びにその家族(以下「居住者」という。)は、当該専有部分およびその専用使用部分の使用にあたり次の行為をしてはならない。

12号 その他、公序良俗に反する行為および他の居住者に迷惑・危害を及ぼす行為をすること。


(3)本件マンションの販売を担当していたCは、平成13年4月ころ、旧原告宅に電話して、電話に出たBに対し、本件マンションを販売中であることを伝えた。
 Cは、前記電話において、Bが本件マンションの購入に興味を示したため、その日のうちに、旧原告宅にパンフレットを持参した。
 Cが、旧原告宅を訪問し、Bに会った際、Cは、Bから、本件マンションでペットが飼えるかを尋ねられたので、原則は駄目だが、危害を加えるなど人に迷惑をかけなければ、具体的には、外に出るときには籠に入れるとか、抱く等すれば問題ないと思われる旨返答した。Cは、その際、旧原告宅で飼育されている犬を実際に見た。


(4)Cは、平成13年5月ころ、数回、旧原告宅を訪問し、原告及びBも、本件マンション付近に開設された現地販売事務所を訪問して、Cから本件マンションの詳細等の説明を受けたが、その間、本件マンションでのペット飼育の可否が話題になることはなかった。
 しかし、原告らは、希望予算を超えること等の理由で、本件マンションの購入を断念することとし、同年5月末ころ、BからCに対し、その旨を伝えた。


(5)原告らは、さらにX校区内で、ペット飼育が可能なマンションを探していたが、適当な物件が見当たらなかったため、平成13年8月ころには、再度本件マンションの購入を検討するようになった。
 原告らは、平成13年8月下旬以降、数回にわたり、現地販売事務所を訪れ、本件マンションについて説明を受け、同年9月17日ころ、C及び被告営業部長であるDに対し、本件マンション2号室の購入を申し入れた。その際、原告らからCらに対し、本件マンションでのペット飼育に関しての質問はなかった。


(6)C及びDは、平成13年9月22日、本件売買契約締結のため、旧原告宅を訪問した。
 Dは、原告に対し、「宅地建物取引主任者証」を提示した上、重要事項説明書を読み上げた。同重要事項説明書には、「15.管理に関する事項」の項に、「管理内容等については別途管理規約をご参照願います。」「入居者が一定数となった時点で管理組合を結成して頂きます。」との記載がある。
 また、Dは、原告から前記犬を見せられた上で、本件マンションでペットを飼育できるか尋ねられ、この程度の犬であれば特段問題はないと思う旨述べた。
 その後、原告は、Dから本件マンションの管理組合で制定される予定となっている管理組合規約等及び管理委託契約書の交付を受け、それらについて承認する旨の承認書及び本件売買契約書に署名捺印した。


(7)原告とその家族は、平成14年3月末ころ、飼育している犬と共に、本件マンション2号室に引っ越してきた。


(8)平成14年5月ころ、本件管理組合総会が開かれ、組合員の一人から、本件マンションはペット飼育禁止であるはずなのに、ペットを飼っている人がいるとの発言がなされた。
 その後、管理会社が本件マンションの購入者に対して実施したアンケートでは、回答者37名のうち、売買契約当時、被告の販売担当者からペットの飼育が可であると聞いていたと回答した者が原告を含めて2名、飼育は不可であると聞いていたと回答した者が16名、ペットの飼育に関しては何も聞いていないと回答した者が9名であり、その他の者は無回答であり、今後のペット飼育については、条件付でも不可と回答した者は2名、条件付で可とする者32名、無回答3名であった。
 また、ペットアレルギーに関するアンケートを行ったところ、回答のあった入居者35世帯中、7世帯はペットアレルギーを持つ居住者がいると回答している。


(9)原告が、被告に対し、本件売買契約時のペットに関する説明の状況について説明するよう求めていたところ、原告への販売担当者であったCは、平成14年11月ころに管理会社の担当者とともに、同年12月1日には一人で、原告宅を訪問した。
 Cが一人で原告宅を訪問した際、原告は、Cに対し、本件売買契約締結の際、Dが、原告が飼っている犬を見て、この程度の犬だったら外で飼うわけではないから大丈夫だと言った旨を述べ、Cは、これに対し、問題ないという趣旨のことを述べたことは覚えている旨返答した。


(10)平成15年4月5日、本件管理組合臨時組合員総会において、ペットの飼育に関し、次の三案が提示されたが、採択には至らなかった。なお、欠席者9名による不在投票の投票結果は、b案5票、c案4票であった。

a案 ペットの飼育を全面的に禁止する。

b案 規則を定め、それを遵守することを条件に現在飼育中のペットのみ1代限り認める。

c案 規則を定め、それを遵守することを条件にペット飼育可能とする。


(11)本件管理組合は、上記臨時組合員総会において、上記三案の採択までの間、ペットの飼育について、以下の規定によることを決議した。

ア 現在飼育しているペット以外の飼育は禁止する。来客のペット持ち込みも禁止する。

イ ペットと外出する際は、籠に入れて移動する。

ウ エレベーターにペットを同乗させる場合、他の同乗者に告知する。
エレベーターをおりる際には、除菌剤を使用する。

エ 管理人の日常清掃の範囲で、ペットを飼っている住戸・アレルギー体質の家族のいる住戸の前の清掃は特に念入りに行う。 


(12)原告は、現在、本件マンション2号室の原告宅で、ペットである小型犬の飼育を続けている。Bは、同犬を散歩のために室外に出す際には、できる限りエレベーターに乗らないようにしている。また、隣家にペットアレルギーを持つ子供がいるため、室内にいてもできるだけ窓を開けない、バルコニーの隣家寄り部分には洗濯物を干さない等の配慮をしている。


争点(債務不履行)について


(原告の主張)


ア 被告は、マンションの売主として、契約を締結しようとする買主に不測の財産的、精神的損害を与えないように共用部分、専有部分の用途その他利用制限等、建物または敷地の使用権に関する規約の定めの内容につき、特に重要事項として説明する信義則上の義務を負っている。


イ それにもかかわらず、被告または被告の履行補助者であるC、D(以下「D」という。)は、原告及びBに対し、本件マンションはペット飼育が可能であると説明し、ペット飼育の可否が将来において変更される可能性、他の購入者のペット飼育に関する認識を説明せず、ペット飼育に関する正確な情報を提供しなかった。さらに、被告は、他の購入者に対し、ペット飼育は禁止されていると説明していながら、原告に対しては、他にもペットを飼育している購入者がいると述べるなど、虚偽の説明をしており、被告は、上記説明義務を果たしていない。


ウ したがって、被告は、原告に対し、債務不履行責任を負う。


(被告の主張)   省 略


(裁判所の判断)


(1)ア マンションにおいて管理上必要な事項は、居住者を組合員とする管理組合が制定した管理組合規約等により定められるところ、管理組合規約等は、当該マンションの居住者の生活に直接影響を及ぼすものであるから、マンションの販売業者は、購入者に対して、管理組合規約の内容等について説明する義務を負う。そして、ペット飼育の可否についても、ペットは鳴き声、におい、糞尿、毛等によって、他の居住者に迷惑を及ぼすおそれがあるから、多数の者が居住するマンションにおいては、管理組合規約等により禁止または制限されるのが通常であって、マンション販売業者は、購入者に対して、制定予定の管理規約等の内容を説明する限りにおいては、ペット飼育の可否ないしその制限等についても説明する義務を負うといえる。
 ところで、管理組合規約等は、管理組合総会によって制定、改正されるものであり、現行管理組合規約46条3項1号においても、組合員総数の4分の3以上及び議決権総数の4分の3以上の賛成により、管理規約の変更がなされる旨規定されているところ、本件管理組合は、マンションの区分所有者により構成されるから(本件管理組合規約6条1項)、販売会社である被告は、販売終了後は、本件マンションに対して何らの権利義務を持たない(証人D)。被告は、本件マンションの販売時に、購入希望者に対して、制定予定の管理組合規約等を交付し、承認をとっているが(乙1)、それは、管理組合設立総会において、円滑に管理組合規約等が制定されるようにするために行っているにすぎない。

 そうであるとすれば、被告(販売会社は、将来制定される管理組合規約等の内容については、これを確定的に説明することはできないから、被告が、本件マンションを販売するにあたって購入予定者に対して説明し得るのは、制定予定の管理組合規約等の内容に限られるものであり、ペット飼育の可否を含む管理に関する事項に関しても、被告は、制定予定の管理組合規約等の内容を説明する義務を負うに止まり、それを超えてペット飼育の可否についての説明義務までは負わない。


イ また、原告は、被告は原告に対し、被告が他の購入者に対して、本件マンションではペットの飼育が禁止されている旨説明し、他の購入者の中に、ペットの飼育が禁止されているとの認識のもとに本件マンションの各居室を購入した者がいるという事情について説明する義務を負うと主張する。

 しかしながら、被告が他の購入者に対して行った説明の内容それ自体が、本件マンションにおけるペットの飼育の可否に影響するものでないことはいうまでもない。また、他の購入者が本件マンションにおいてペットの飼育が禁止されていると認識していたとしても、管理組合規約等を改正して、ペット飼育を可能とすることもあり得るし、逆に、全ての居住者がペット飼育可能と認識して入居したとしても、その後、管理組合規約等を改正してペットの飼育を禁止することが求められることもあり得ること、ペット飼育にあたって、他の居住者に対する配慮は、他の居住者が、ペット飼育が可能であると認識していたとしても必要なものであることからすれば、他の購入者の認識は本件マンションにおけるペットの飼育の可否に事実上の影響も含めて、結びつくものではない。

 そもそも、購入者が、被告の説明以外の情報により、ペット飼育に関して被告から受けた説明と異なる認識をすることもあり得るのであるから、購入者の認識という内心に関わる事項を、被告が正確に把握することは不可能である。

 したがって、被告が、原告に対し、被告が他の購入者に対して行った説明の内容、他の購入者の中にペットの飼育が禁止であるとの認識のもとに本件マンションを購入した者がいるという事情を説明する義務があるとはいえない。


(2)以下、被告が、ペット飼育の可否ないしその制限に関し、制定予定の管理組合規約等の内容を説明する義務を果たしたかを検討するに、原告は、C及びDが、ペット飼育が可能であると断定する虚偽の説明したと主張し、それに沿う供述をする(原告本人)。

 しかし、Bの証言によっても、Cは、ペットを飼育するに関して、他人に危害を加えたり、迷惑をかけないこと、外に出るときは籠に入れるか、抱く必要がある旨述べたと認められること(証人B)、原告も、Cが平成14年12月に原告宅を訪れた際、同人に対し、本件売買契約締結の際、Dが、原告が飼っている犬を見て、この程度の犬だったら外で飼うわけではないから大丈夫だと言ったと述べていること(甲18)、C及びDは、原告が飼っている犬を見た上で、その犬について飼育が可能と思われる旨述べているにすぎないこと(証人B)からすれば、C及びDが、本件マンションにおいてペット飼育が一般的に可能であると断定する説明したとの原告の供述は直ちには採用できず、むしろ、C及びDは、本件マンションにおけるペット飼育に制約があることを説明したと認められる。

 そして、本件売買契約時に制定予定とされていた管理規約等によれば、ペット飼育は、他の居住者に迷惑・危害を及ぼす行為に該当する場合に禁止されることになるから、危害を加えるなど人に迷惑をかけなければ、具体的には、外に出るときには籠に入れる、抱く等すれば、問題ないと思われる旨の被告の説明は、制定予定の管理組合規約等の解釈として不適切とはいえず、C及びDの説明をもって、説明義務に違反する虚偽または不正確な説明であったということはできない。


(3)以上から、ペットの飼育の可否について、被告に説明義務違反があったとはいえず、被告は、原告に対し、債務不履行責任を負わない。


争点(不法行為)について


(原告の主張)


ア 被告は、C及びDをして、原告及びBに対し、本件マンションにおいてペット飼育が可能であると説明し、ペット飼育の可否が将来において変更される可能性、他の居住者のペット飼育に関する認識を説明しなかった。

 他方で、被告は、その従業員をして、原告他数名を除く購入者に対して、ペット飼育が禁止されていると説明し、また、原告宅の隣室をペットアレルギーを持つ家族がいる者に販売し、本件マンションでのペットの飼育を事実上困難な状況にしたのであるから、被告が、原告に対して行った説明は、ペット飼育が将来において禁止される、または困難になる可能性があるにもかかわらず、将来においてもペット飼育が可能であると積極的に原告を欺罔する詐欺行為であり、被告は、不法行為責任を負う。


イ 仮に、C及びDの上記詐欺行為が被告自身の不法行為にあたらないとしても、C及びDの行為は、本件マンションの販売という被告の業務の執行においてなされたものであるから、被告は、使用者責任に基づき、その責任を負う。


(被告の主張)   省 略


(裁判所の判断)


(1)前記のとおり、被告が原告に対して行った説明は、制定予定の管理組合規約等の規定に従ったもので、説明義務違反があったということはできないから、被告が原告を欺罔したということはできず、また、被告が行った説明が、不十分、不適切だったともいえないから、被告の説明が不法行為にあたるとはいえない。


(2)ア 原告は、被告が、原告とその他の購入者に対し、相反する説明を行ったため、ペット飼育が不可能になる可能性が高くなり、また、事実上ペット飼育は困難な状況になったと主張する。確かに、本件マンションの購入者の中には、本件マンションではペット飼育が禁止されているとの説明を受けたと陳述したり(甲19ないし21)、管理会社が行ったアンケートにおいても、16名がペット飼育は禁止されていると説明を受けたと回答している(甲2)ことが認められる。


イ しかし、制定予定の管理組合規約等では「他の居住者に迷惑・危害を及ぼす行為をすること」が規定されているのみであり、被告が前記のとおり、ペット飼育について制約があることを説明したことに対し、その受取り方につき、購入者間に、認識の差が生じたとしても、これをもって、被告が相反する説明をしたということはできない。そして、他の居住者が、被告からペット飼育は原則禁止されているとの説明を受け、ペット飼育は一切禁止されていると認識して入居していたとしても、前記のとおり、それによってただちに本件マンションにおけるペット飼育が禁止されるに至るものではなく、また、他の居住者の認識が、本件マンションにおけるペット飼育の可否に直接結びつくものでもない。
 したがって、被告が他の購入者に対して行った説明が、原告に対する不法行為になると解することはできない。


(3)さらに、原告は、被告が、原告の隣室3号室を販売したE(以下「E」という。)の子供はペットアレルギーを持っており、そのため、原告のペット飼育は困難になったと主張する。

 しかし、原告が供述するとおり、Dが、本件マンションにおいて原告がペットを飼育することをすでに承知の上で、Eに対して、本件マンションではペット飼育は一切禁止されている、他の購入者にペットを飼っている人がいないと説明していたとしても(原告本人,甲18)、それがEに対する関係で不法行為になり得るかはともかく、原告との関係でみれば、Eは、ペットの飼育に関して、一代限りであれば可能としてよいと考えており(甲2,原告本人,証人D)、また、管理組合規約の改正には組合員の4分の3以上の決議が必要であり、E一人の意見でペット飼育の可否が決まるものではないことからすれば、原告の隣の居室を同人に販売したことにより、原告がペットを飼育することが不可能になるとはいえないし、原告が、Eに対しての配慮として行っていることは、ペットの飼育が可能なマンションであっても、当然に必要とされるものであるから、特段、原告のペットの飼育を困難にするものとはいえず、被告がEに対して、原告が主張するとおりの説明を行ったとしても、それは、原告に対する不法行為とはなり得ない。


 以上より、本件売買契約に関し、被告に債務不履行及び不法行為があったとは認められず、また、本件売買契約は有効に成立しており、原告による取消しも認められないから、被告は、原告に対し、損害賠償義務及び不当利得返還義務を負わない。 (福岡地方裁判所第5民事部)