基調報告   「管理員業務の質的転換」



はじめに


 北海道マンションネットは「管理組合の運営が組合員の共同の利益に適うために、管理組合の運営を各分野に亘って支援」してきた。

 特に、管理員業務は「マンション管理の要」認識して、管理員に対して「管理組合が期待する業務を実施して」とエールを送ってきたところである。

 そして、具体的には「管理員は門番や清掃員」ではなく、「マンション管理の専門家」であり、これまでのような管理員業務の認識を改めて、社会に対して「業務の再評価を呼びかける」メッセージを発信した。このメッセージが取材に訪れた北海道新聞社の記者によって、新聞に掲載され大変大きな反響を呼び、第3回管理員セミナーには定員を大幅に上回る参加となった。

 また、管理会社の数社からは「本セミナーの受講修了者を管理員採用の一条件にしたい」という、望外な結果が生まれ、マンションネットの当該セミナーは緒に着いたばかりではありながら、一層、「管理組合に期待される管理員像の追及」のために情報を発信する所存である。



「管理員業務の現実」から「業務の本質を直視」


 まず、管理員業務の現実を直視すれば自ずと明らかになるように、マンション管理の日常的業務の大半は改めて議論するまでもなく管理組合の役員や管理会社のフロント担当者でなく、管理員業務を行う管理員が実行している。 管理員の勤務時間も午前8時から午後4時まで(或いは午前9時から午後5時まで)とマンションに常駐して実行して、誰よりもマンションに係わる時間が多い。そして、あらゆる問題の初期対応は全て管理員が当たっていることも本業務の性格を表現している。


 管理員が専門性を発揮し、初期の内に適切な対応を講じていたならば問題が複雑化する前に解決した事例があり、管理員が業務の本質を理解しているかどうかで、管理員業務の質的評価が変わる。

 また、これまでも明らかになったように管理員業務は管理会社の管理委託契約の業務履行上70%以上の業務量という、マンションネツトの主張を多くの管理会社自身認めているところであり、管理員業務が適切に履行されていれば、マンションの管理の目的はかなり達成したことになる。



理事会のパートナー


 管理組合が実行しなければならない、マンションの管理業務は管理組合の理事会が日常的に実行することを組合員から委任されている。従って、法律的には理事会が管理の責任を負い、具体的な日常の業務を管理会社に委託し、管理員がその業務を実行している。

 管理員は管理会社の社員であり、日常発生する職務の内容を会社に報告するが、同時にマンション内に発生したあらゆる問題は理事会に報告する義務も負っている。


 また、問題が発生して無くとも、当該管理組合理事会の月例理事会には必ず出席して、管理の状況を報告することと、問題解決の提案等、マンション管理の専門家として責務を果たさなければならない。

 従って、管理員は管理組合理事会が実行しなければならない「管理業務の重要なパートナー」と位置づけることができる。現実に、理事会の業務を遂行する上で管理員が日常発生している管理組合内の様々な情報をいちはやく報告し対処する体制の確立は「問題を初期の内に解決し複雑化しない」ことに繋がっている事例が報告されている。

 また、管理組合の運営で特に必要とされている組合員間の合意形成は常日頃のコミニュケーションのあり方にあるが、管理員が理事会と組合員の重要な媒介として重視した取り組みを進めていれば、話し合いの基盤が形成されているという報告もあり、管理員の対人関係そのものが管理組合の合意形成に寄

与している事例として、大いに注目しているところである


 このように、管理員は理事会の唯一のパートナーとして、理事会に情報を提供し理事会と共同して問題解決にあたる姿勢が求められている。しかし、現実に多くの管理組合の管理員の存在はどうなっているのか。検討したところ、管理会社もさることながら当該管理組合の理事会が管理会社に全てお任せ管理に頼って、管理員の専門性の発揮を阻害している。管理員が文字道理管理組合のパートナーとしての力量を発揮するためには管理組合理事会の意識改革も必要であろう。



管理員はマンション管理の専門家


 昨年度の本セミナーで現在管理員を務めている方の報告の例が示しているように、管理組合理事会はマンションに常駐している管理員が全ての業務に精通して対処している場合は理事会のパートナーとして認めることができる。しかし、従来のような「門番や清掃員」の認識ではパートナーとしての地位を確保できるわけにはいかない。

 まず、管理員自ら「管理員業務はマンション管理の専門家」という認識を持って、一々課題を管理会社や理事会から与えられる前にノウハウの開発に努める努力が求められる。自ら、問題意識をもって事に当たるのと、何時も指示待ちの姿勢では業務の質はことのほか大きい。


 管理員業務の基本は記録

 さて、管理員はマンション管理の専門家として、次の業務を履行することになるが、業務の性格からして起こりうる全ての事実を正確に記録することが重要である。マンション管理の基盤は記録からはじまり記録に終わる、ことを認識しなければならない。


 そのためにも、管理員室にはパソコンの常備とインターネットの接続が望まれる。今後、マンションネットが支援する管理委託契約には本項目を加えて、管理員業務の質的向上を求めるようにしたい。

 インターネットの機器を常備する目的は管理員業の向上であるが、具体的には「会社との連絡を密にすること」「管理組合役員への報告、連絡等管理の実体を日々明らかにできること」「管理組合内のネットワークの形成と広報活動の充実」「管理組合のホームページの開設」などが可能になり、管理員業務の基本である「管理員業務の記録」が容易になされるようになる。


 専門家として欠かすことのできない業務項目

  A 建物敷地・設備等の点検と記録及び問題箇所の報告(勤務日全て)

  B 窓口(住民と外来者等)対応と記録(勤務日全て)

  C 法定点検や修繕工事等の立会と記録(該当日)

  D 電気・灯油等の経費の節減の実行と記録(必要に応じて)

  E 共同の利益に反する行為者の記録と報告(必要に応じて)

  F 管理委託契約に明記されている事項(必要に応じて)

  G 管理規約やマンション関連法令の熟知と実行(勤務日全て)

  H 会社と理事会に対する関連業務の文書(パソコン)による報告(月例と随時)

  I 月例理事会に出席し、文書による報告と問題の提起(毎月)

  J 違法行為の初期対応(必要に応じて)

  K 管理組合の経営に対する政策提言(必要に応じて)


 「管理員業務仕様」に明記されない事項

 これまでにも、問題提起してきたように管理員業務として管理委託契約書別表に明記されていない事項で現実対応しなければならない場合が多い。管理員業務を履行する上で契約に明記されて無くとも履行しなければ本業務は成立しない。それらの問題を把握して、処理を実行するためにはマンション管理に係わる法令の熟知、社会常識が求められるところから「管理員はマンション管理の専門家」と位置づけたい。


 専門職に相応しい労働条件の確保

 しかし、現実に専門家に相応しい労働条件は確保されていない。当マンションネットは週40時間以内のフルタイム労働では月額150,000円以上を提言し、実際、新たな契約を締結進める支援では契約書に明記させて実行させている。管理員の適正な労働条件の確保は管理組合が期待する管理員業務を達成させるためにも重要な要件になっている。



管理員業務の質的転換


 以上のように、管理員業務の質的向上を提言したが管理組合理事会と管理員とのパートナー関係が樹立すれば、管理会社のフロント担当者の業務が軽減され、管理会社も質の高いサービスを管理組合に提供できるようになる。管理組合も常駐している管理員が専門家としての力量を発揮できれば、問題の滞留は避けられ、無駄な経費の削減にもつなげることができる。


 今後の課題 

  @ 管理会社も「管理員をマンション管理の専門家」と位置づけて、相応しい労働条件の確保と能力の開発を支援すること

  A 管理組合は「管理組合が期待する業務」を履行させるために、相応しい労働条件の確保のために必要な契約を締結すること

  B 管理組合も管理会社も当該マンションの管理に係わる全ての情報を管理員に提供すること

  C マンションネットは管理員間交流を行い、情報の交換等ネットワークの拡大に努めること

  D マンションの管理に係わる全ての関係者は「管理員業務の制度的改善」に努め、文字通り専門家としての制度改革に当たること

  E マンションネットは「新しいマンション管理員像」の探求と「管理員業務の新たな見直し」の提言を行うこと




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