第1章 マンション管理の基本と改修による再生の重要性


1.1 マンション管理の主体−管理組合

・マンションの管理の主体に関しては、区分所有法第3条において、「区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成する」ものと規定されています。

・また、平成13年8月1日に施行された「マンションの管理の適正化の推進に関する法律」では、管理組合等の努力について次のように示されています。

(管理組合等の努力)

第四条 管理組合は、マンション管理適正化指針の定めるところに留意して、マンションを適正に管理するよう努めなければならない。

2 マンションの区分所有者等は、マンションの管理に関し、管理組合の一員としての役割を適切に果たすよう努めなければならない。

さらに、同法に基づき、国土交通大臣が公表した「マンションの管理の適正化に関する指針」では、管理組合および区分所有者の役割が、より具体的に示されています。

一 マンションの管理の適正化の基本的方向

1.マンションの管理の主体は、マンションの区分所有者等で構成される管理組合であり、管理組合は、マンションの区分所有者等の意見が十分に反映されるよう、また、長期的な見通しを持って、適正な運営を行うことが重要である。(以下略)

2.管理組合を構成するマンションの区分所有者等は、管理組合の一員としての役割を十分認識して、管理組合の運営に関心を持ち、積極的に参加する等、その役割を適切に果たすよう努める必要がある。

・すなわち、マンションを所有する区分所有者は、その管理を行うための団体(=管理組合)を当然に構成し、この管理組合が主体となってマンションの管理を行うことになります。管理組合は、構成員である各区分所有者の意志の「合意」によって管理を行うものですから、各区分所有者は、管理組合の一員として組合運営に積極的に参加する等、その役割を適切に果たさなければなりません。


1.2 マンションの維持保全の仕組み

・管理業務は、マンションを適正に維持し、快適な居住と有効な資産価値を維持することを目的としており、現在のマンションを可能な限り長く使えるよう維持していくことが基本となります。そのためには、保守点検や修繕を計画的に実施することが重要になります。

(1)保守点検

・マンションを維持保全していく上では、まずは、保守点検を定期的に行う必要があります。保守点検とは、建物の機能を維持するために、建物各部の不具合点や設備機器等の作動に異常がないかどうかを定期的に検査し、消耗品の交換や作動調整、補修(軽微な修繕)等を行うことで、法律等で定められている法定点検と、任意に行う自主点検とがあります。

(2)修繕

・また、建物各部の劣化や性能・機能の低下が進んだ場合には、修繕を行うことが欠かせません。修繕とは、部材や設備の劣化部の修理や取替えを行い、劣化した建物又はその部分の性能・機能を実用上支障のない状態まで回復させる行為をいいます(一般的には、建物の建設当初の水準にまで回復させることが目標とされます。)。修繕には、劣化の発生や性能・機能の低下の都度に行う補修・小修繕と、一定の年数の経過毎に計画的に行う計画修繕とがあります。

(3)長期修繕計画等に基づく計画修繕

・計画修繕を確実に実施するためには、長期修繕計画を定める必要があります。長期修繕計画とは、マンションを構成する部材や設備の耐久性にあわせ、マンションごとに設定される長期の修繕計画であり、通常、20〜30年程度の長期展望にたち、マンション共用部分等の各部分の修繕周期と概算費用が示されます。

・計画修繕の必要額は毎年一定ではなく、この費用をその都度徴収したのでは、個々の生活に影響するだけでなく、未納等により費用の不足が発生して、計画修繕の適正な実行に支障をきたすおそれもあります。このため、定期的に少額を徴収し、まとめて計画修繕に充てる修繕積立金のしくみが一般的になっています。長期修繕計画が、必要とされる修繕積立金の算定数字の根拠となります。

・計画修繕は長期修繕計画に基づいて実施されますが、実際の工事を行う上では、建物各部の傷み具合に対応した有効な修繕を実施するために、調査や診断を行い、それに基づいた修繕設計により工事部位や工事内容を確定します。計画修繕では、効率的な工事実施のため、複数の部位や工事項目をまとめて実施することが多く、修繕積立金を充当して行う計画的な修繕等を大規模修繕と呼び、通常は10年以上の周期で大規模に実施されます。

(4) 計画修繕・長期修繕計画・修繕積立金の仕組みの運営概念

・計画修繕・長期修繕計画・修繕積立金からなる維持管理運営の基本手法は、最初に作っておけば自動的に働くものではありません。長い期間にわたりマンションを適正に維持管理していくためには、点検・検査・診断により、建物の経年による劣化状況等の不具合や問題点を明らかにし、具体の修繕を実施するための中短期の修繕計画を作成しつつ、修繕実績に基づき長期修繕計画を適宜見直していく必要があります。また、これと連動して修繕積立金の額も見直していく必要があります。

1.3 改修の重要性

(1)マンション性能のグレードアップを図る改修の重要性

・マンションの経年に伴う劣化や不具合に対しては、大規模修繕等の計画修繕を適切に実施していくことが必要であり、それにより、マンションの劣化を防止することができます。しかし、修繕だけではマンションの性能の維持・回復しか実現することができません。

・マンションに求められる性能・機能は、住まい方の変化や設備機器の進歩等により年々高まっており、近ごろの新築マンションの性能や居住性は著しく向上しています。これに伴い、高経年マンションでは性能・機能面での陳腐化が進行し、資産価値が低下することにもなりかねません。

■高経年マンションの陳腐化の例

住戸の居住性能

住戸面積の狭隘化

住戸面積が狭い、住戸面積が画一的で多様な規模の住戸がない、住戸内に洗濯機置場がない 等

断熱性能の低下

結露がよく発生する、省エネ仕様になっていない 等

設備の旧式化・陳腐化

材料・機器の性能が老朽化・旧式化している、給排水システムが旧式化している、電気容量が不足している 等

建物共用部分の性能

バリアフリーでない

段差がある、手すりがない、エレベーターがない 等

防犯性能が低い

オートロックでない、見通しが確保されていない、照明が薄暗い又は不足している、防犯カメラが設置されていないなど、防犯に対する配慮がなされていない 等

エントランスの陳腐化

内装仕上げ材、照明器具、集合郵便受け・掲示板等の金物類の性能、デザイン等のエントランスホールの雰囲気が陳腐化している 等

共用スペースの機能の陳腐化

管理事務所、宅配ロッカー・トランクルーム、共用倉庫、ラウンジ、プレイルーム、宿泊室等の機能がない 等

外観イメージの陳腐化

仕上げ材、デザイン等の外観の雰囲気が陳腐化している 等

敷地内の性能

バリアフリーでない

段差がある、手すりがない 等

敷地内のイメージの陳腐化

車道・歩道・広場等の舗装材料のデザイン・性能、屋外灯や外構工作物等のデザインが陳腐化している、緑化環境が整備されていない 等

附属・共用施設等が整備されていない

集会所の機能が十分でない、駐車場・駐輪場・バイク置場等が不足している 等

・こうしたことから、高経年マンションの質及び価値を長持ちさせていくためには、修繕による性能の回復に加えて、現在の居住水準・生活水準に見合うようマンションの性能をグレードアップし、住みよいマンションにしていくことが重要になります。

・なお、一般的には、性能・機能をグレードアップさせる工事のことを「改良工事」といい、修繕及び改良により建物全体の性能を改善する工事のことを「改修工事」といいます。

改良工事

 建物各部の性能・機能をグレードアップする工事。マンションを構成する材料や設備を新しい種類のものに取替えることや、新しい性能・機能等を付加することなどがある。

改修工事

 修繕及び改良(グレードアップ)により、建築物の性能を改善する変更工事。

・改修工事を適切に実施することで、マンションの物理的な老朽化の防止に加え、陳腐化を防止することができます。このため、建築後一定の年数を経過したマンションでは、単なる修繕工事ではなく、修繕と改良を含めた改修工事を実施することが、マンションを住みよいものにし、その質及び価値を長持ちさせていく上での重要なポイントになります。特に、マンションで一般化している大規模修繕工事は、修繕と呼ばれていますが、その実施回数を追うにつれ、改良の割合を大きくした改修工事として実施する必要があります。

(2)建替えとの比較からみた改修の重要性

・マンションは維持管理を適切に行い、なるべく長く住みつづけることができるようにすることが基本となりますが、極度に老朽化が進むと、大規模修繕や改修では安全で住みよい環境に回復・改善できなかったり、それに非常に大きな費用がかかるようになったりします。こうした場合には、建替えについての検討が必要となることがあります。

・建替えに向けた区分所有者の合意形成を円滑に進めるためには、建替えと修繕・改修とについての比較検討を十分に行い、建替えの必要性を区分所有者間で共有することが重要なポイントになると考えられます。

・建替えと修繕・改修との比較検討にあたっては、建替えと修繕・改修それぞれの場合の居住性等の改善効果を把握するとともに、所要費用を算定して比較検討することが求められます。なお、平成14年12月に改正された区分所有法においても、建替え決議を行うにあたっては、建替え費用のみならず、改修費用についても算出し、全区分所有者に通知することが要件とされています。

・このように、建替えとの検討という点からみても改修の検討は重要となります。なお、建替えと改修の比較検討の方法については、「マンションの建替えの円滑化等に関する基本的な方針」に従い、国土交通省が作成、公表した「マンションの建替えか修繕かを判断するためのマニュアル」(マンション再生協議会のホームページhttp://www.manshon.jp/からダウンロードできます。)を参照して下さい。

1.4 改修工事の基本的考え方

・計画修繕(大規模修繕)は、マンションを部材・設備等の構成部位に分解し、各構成部位ごとの修繕周期に基づいて実施する工事です。この各構成部位の修繕工事の際に、その既存性能をグレードアップする改良工事を織り込んでいくことが、マンションの性能を高めていく上での基本となります。例えば、手摺等の鉄・アルミ部、外壁仕上げ、屋根防水、サッシ、給排水管、電気設備、テレビ共聴設備など、マンションを構成する既存部位の材料や設備機器をより新しく、より性能の高いものに取替えることや、既存部位に改良を加えることなどが該当します。こうした既存性能をグレードアップする改良工事(レベル1)の方法については、第2章で説明します。

・一方、計画修繕(大規模修繕)の工事項目は建物の初期性能をもとに設定され、初期性能の影響を強く受けることから、計画修繕に取り上げられる工事項目の改良工事だけでは、既存性能の水準をグレードアップするに留まります。このため、居室の増築や空住戸を活用した住戸の2戸1戸化による住戸面積の拡大、不要となったスペースの有効活用による共用部分の大規模改造、集会所や立体駐車場の新築・建替え、エレベーターの設置など、増改築等の大掛かりな工事によりマンションに新たな性能や機能を付加する大規模な改良工事(レベル2)も必要とされます。こうした増改築等により新しい性能・機能を付加するグレードアップの方法については、第3章で説明します。

・なお、新たな性能・機能を付加する大規模な改良工事(レベル2)は、計画修繕の際に既存性能をグレードアップする改良工事(レベル1)とは別に独立して実施されることも想定されますが、効率的な工事の実施のためには、大規模修繕工事を行う際に、レベル1とレベル2の改良工事を同時に行い、マンションの性能・機能を総合的に改善する改修工事として計画することが望まれます。こうした改修工事によるマンションの性能の総合的なグレードアップの方法については、第4章で説明します。


1.5 改修工事の進め方

・大規模修繕時等に行う改修工事の基本的な進め方は、発意→検討体制の確立→専門家等の選定→調査診断→改修基本計画→改修設計→工事費見積→資金計画→合意形成・集会における決議→工事実施、という手順となります。

・各手順の概要と進め方の留意点等を整理すると次のようになります。

(1)検討体制の確立

・改修工事は専門技術的な知識を必要とし、その準備から工事完成までに3〜5年程度を要するのが一般的です。これを通常1〜2年ごとに理事が交代する理事会のみで対応することには、知識面や時間面で限界がありますから、専門委員会(修繕委員会、長期修繕計画委員会等の名称がよく用いられます。)を設置して継続的に検討を行うことになります。専門委員会のメンバーには、歴代の理事経験者、区分所有者のうちの建築や設備等の専門家等が含まれることが一般的です。

・専門委員会は理事会の諮問機関として設置されることが多く、必要とされる改修工事の内容、実施上の問題点、その解決方策等を調査検討します。専門委員会の役割は、専門的見地からの調査検討結果に基づく提案を行うところまでであり、最終的な方向付けは理事会による決定になりますので、専門委員会は理事会と良好な関係を維持しながら協力して検討を行っていくことが重要になります。

(2)専門家等の選定

・改修工事の実施にあたっては、まずは、管理組合のパートナーとしてマンションの改修業務に精通した専門家等を選ぶ必要があります。マンション管理士の有資格者又は設計事務所等、管理会社・建設会社等が考えられます。専門家等の関わり方には、設計監理方式と責任施工方式とがあります。

設計監理方式

・建築士又は建築士を有する建築設計事務所・建設会社・管理会社等を選定し、合意形成までの段階では、調査診断・改修設計・施工会社の選定・資金計画等の専門的、技術的、実務的な業務を委託し、工事実施段階では工事監理を委託する方式。

・工事費以外にも専門家の費用が発生しますが、診断・改修設計と施工が分離しているので、必要とされる工事を客観的に見極めた上で工事内容を定めることができることや、競争入札等の競争原理を導入して施工会社を選定することができ、管理組合の立場にたった工事監理が行われることなどのメリットがあります。工事内容・工事費用の透明性の確保、責任所在の明確さなどの点で望ましい方式であるといえます。

責任施工方式

・建築士を有する施工会社(設計・施工・監理部門を有する建設会社や管理会社等)を選定し、調査診断・改修設計・資金計画から工事の実施までの全てを請け負わせる方式。

・マンションの事情に精通した信頼できる施工会社がいる場合に採用されることがあり、所期の段階から施工性(工事中の仮設計画や工事実施手順等)に配慮した検討を行うことができ、設計監理方式のような専門家の費用を必要としないというメリットがあります。

・ただし、設計と施工が一体化するため、工事内容と費用内訳の関係が不明瞭となりやすく、また、技術的知識が施工会社のみに偏るため、正しい判断で必要な工事内容を定めるという点で問題となる場合があります。この方式を採用する場合は、検討結果の適切な情報開示や検討内容ごとの費用内訳の提示等を受けることが重要になります。

・専門家や施工会社の選定にあたっては、まずは候補者を選びます。他の管理組合等から推薦を受ける方法、業界紙等で公募する方法、関係する公益法人・地方公共団体等から情報提供を受ける方法が考えられます。候補者をリストアップしたら、ヒアリング等を十分に行い、当該管理組合にとって最もふさわしいと考える専門家を選びます。競争によらずに1社を随意に選定する場合と、計画提案を依頼し提示された計画案を比較し最も適切と考える1社を選定する場合とがあります。

・選定にあたっては、専門家の提案力(課題に対する提案の的確性・実現性等)、技術力(過去の業務実績、保有技術者数・有資格者数等)、体制(業務体制、業務の基本スタンス、瑕疵があった場合の対応等)等についても考慮する必要があります。また、責任施工方式の場合は、施工会社の会社内容(資本金、年間工事受注額、経営の安定性等)等についても考慮する必要があります。なお、専門家技術力については、グレードアップ(改良)工事を必要とする場合は、修繕だけではなく、マンション(住宅)の新築についての知識・技術等も十分に有する専門家を選ぶことが重要であると考えられます。


(3)調査診断と改修設計

・本マニュアルでは、2〜3回目の大規模修繕工事を迎える高経年マンションについて、建設当時のごく標準的な仕様・性能を想定し、この標準的なマンションに考えられる様々な改修工事の内容について示しています。しかし、実際に行われる改修工事では、各マンションの物的状況、居住者の属性及び住宅に対するニーズ等により、必要とされる工事内容が大きく異なります。また、費用などの点で、必要とされる改修工事の全てが一度に実現できるとも限りません。

・このため、以下のような手順で、実際に行う改修工事の内容を絞り込んでいく必要があります。

@調査診断及び改修基本計画の作成

・建物の調査診断(竣工図書・修繕記録等によるチェック、現地観察・調査・詳細診断の実施等)を行い、建物各部の現状の劣化・損傷の程度、不具合点や問題点、有している性能の程度等を正確に把握します。調査診断を行う際には、不具合や問題点が、経年劣化によるものか建設時又は前回改修時の設計や施工の不備によるものかの判定が重要となります。それによって対処方法(改修方法や費用負担)が異なってくるからです。また、工事実施までの間に危険が生じる可能性があるなど、緊急に対処する必要がある箇所については、その対応方策についても検討する必要があります。

・調査診断の段階では、区分所有者に対する意向調査を行い、当該マンションが抱えている問題点や居住者の改善ニーズを把握することも重要です。この改善ニーズと調査診断結果をもとにして、問題点に対する基本的対応方策を検討し、改修基本計画を作成します。この際、多数の区分所有者が必要としている工事かそれとも特定の一部の区分所有者が共通して必要としている工事なのか、また、安全性に関わる工事かそれとも日常生活を便利にするための工事なのかなど、改修工事の目的と必要性を明確にしながら、工事の優先順位を定めることも大切です。

・なお、調査診断の時期は、管理組合の資金計画や合意形成などの運営面からみて、長期修繕計画に定められた工事実施時期の2年前程度に行うことが望ましいと考えられます。

A改修設計

・改修基本計画に基づき、改修設計を行います。改修設計では、改修により実現しようとする耐久性・耐用性・居住性等の目標値及び実際に採用する材料・工法を定め、工事を行うための設計図書(工事仕様書及び設計図)を作成します。

・工事内容を定める上では、工期・工程・仮設計画等の検討や、工事中の窓の開閉制限、バルコニーの使用制限、仮住居への引っ越しの必要性の有無など、工事による日常生活への支障の程度についての検討も必要となります。


(4)工事費見積・施工会社の選定

・設計管理方式の工事実施段階において施工会社を選定するにあたっては、まずは工事費見積を依頼する会社を選ぶ必要があります。推薦を受ける方法、公募等の方法がありますが、公正さや透明性を確保する上では、業界紙やマンション内での募集掲示等による公募が望ましいと考えられます。

・公募をする際には、応募業者の工事実績(改修工事の実施件数・金額、当該マンションと同規模のマンションでの改修実績の有無等)、技術資格者数、会社内容(資本金、年間工事受注額、社員数、経営の安定性等)等の書類の提出を受けて(これらの項目についてあらかじめ一定の参加条件を設定する場合もあります。)、見積参加業者を選びます。

・見積参加業者が決まると、当該マンションで見積依頼内容の説明をします。見積は共通の条件をもとに行われる必要があるため、工事の見積条件を設定するためには、事前に調査診断によってマンションの現状を正しく把握した上で、改修設計(図面、仕様書、数量書、概算書の作成)を行った結果をもとに、見積りを依頼する相手方に対して、次のような資料を提示する必要があります。

@改修工事設計図:改修する範囲の明示

A改修工事仕様書:足場仮設の方法、下地処理の方法、仕上げ材料の種類・量・塗付方法等の明示

B数量内訳書:工事対象数量の明示

Cその他:工事の期間、工事金の支払方法、監督・検査の方法など工事に関わる条件

・各社から見積書が提出されれば、個々の見積内容、単価、金額等をチェックし、金額に大きな差がある場合などはその理由を確認します。また、施工者の能力や施工体制等のヒアリングを別途行います。こうした検討を行い、最終的に適切であると考える施工会社を選定します。


(5)資金計画

・改修工事の費用は、修繕積立金によりまかなわれることが一般的ですが、積立金が不足している場合には、金融機関からの借入金か、区分所有者からの一時金徴収かでまかなう必要があります。また、借入金と一時金徴収とを併用する場合もあります。

・借入金の場合は、住宅金融公庫(マンション共用部分リフォーム融資)や民間金融機関から借り入れることになります。また、地方公共団体の中には、住宅金融公庫の共用部分リフォーム融資に連動して一定の融資制度等を設けているところもあります。巻末の「〈参考4〉住宅金融公庫のマンション共用部分リフォーム融資」及び「〈参考5〉地方公共団体におけるマンション共用部分の改修に係る融資制度等」を参照の上、詳細は、住宅金融公庫各支店又は地元の地方公共団体にお尋ね下さい。

・なお、耐震改修工事については補助制度を利用することも可能です。巻末の「〈参考3〉耐震改修工事に係る補助及び税制特例」を参照して下さい。また、地方公共団体の中には、自治会によるマンションの居住環境改善に適用される補助事業を設けているところがあります。基本的には自治体による活動を対象にしていますが、管理組合でも利用できる場合があります。巻末の「〈参考6〉マンションの居住環境改善に係る自治会活動に対する補助事業」を参照の上、詳細は、地元の地方公共団体にお尋ね下さい。


(6)合意形成と集会における決議

@合意形成

・改修に向けた合意形成の最大のポイントは、資金計画にあります。修繕積立金を取り崩した場合に残額はいくらで将来の修繕工事はどうなるのか、借入をした場合は以降の毎月の修繕積立金額がいくらに増額されるのか、一時金を徴収する場合はその徴収額はいくらになるのか、などの内容について十分に検討した上で合意形成をする必要があります。

・いずれの場合も区分所有者が相応の負担をすることになるため、区分所有者の改善ニーズをアンケートやヒアリング等により十分に把握し、改修内容の必要性について検討した上で、合意形成に努める必要があります。数案を比較検討することも考えられます。合意形成を容易にするため、予算に合わせてできる範囲の工事だけを行ってしまう場合がありますが、中途半端な工事は長い目で見れば無理・無駄が多くなってしまいますので、改修基本計画に基づいて計画的に改修工事を定めることが重要です。

A集会における決議

・改修工事の実施の最終的な決定は、区分所有法の規定に基づき、管理組合の集会(総会)における決議で行います。

・大規模修繕工事(同時に行われる改修工事を含む)は、その規模・内容・程度等から、共用部分の変更にあたる工事となります。共用部分を変更する行為の決議用件は、共用部分の形状又は効用の著しい変更を伴う場合と、そうでない場合とでは決議用件が異なります。著しい変更を伴う場合には、区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数による特別多数決議が必要となります(ただし、区分所有者の定数は規約でその過半数にまで減じることができます。)。一方、著しい変更を伴わない場合は、区分所有者及び議決権の各過半数による普通決議で決することができます(ただし、規約で別段の定めをすることができます。)。

・なお、共用部分の変更工事が、形状又は効用の著しい変更にあたるか否かの考え方については、巻末の「〈参考2〉マンション改修に関する区分所有法上の手続き」を参照して下さい。


(7)工事の実施

@契約の締結

・集会決議が成立すると、管理組合(発注者)と施工会社(受注者)の間で工事請負契約書を締結します。また、工事施工者と工事監理者との間で工事監理業務委託契約書を交わします。

A施工実施計画・工事説明会の開催

・工事実施請負契約の前提となる工事計画をもとに、施工者が施工実施計画(工事工程計画、仮設計画、工事施工計画)を検討し、管理組合の意見を踏まえて最終決定します。

・改修工事は居住者の協力なくしては進めることができません。施工実施計画が出来上がると、工事説明会の資料(簡易な工事実施のしおり等)を配付し、工事内容・施工体制、工事工程、作業時間、現場事務所の設置、仮設・足場・安全対策、品質管理方法、注意お願い事項等の説明会を行います。

B工事着手と監理の重要

・工事の適切な実施に向けては、工事工程の進捗状況、施工状況等を厳正にチェックする「監理」の役割が非常に重要となります。建築基準法や建築士法では、新築、増築、大規模な修繕・模様替え等の工事をする場合には、建築士である工事監理者を置くことが義務づけられています。

・工事実施期間中は、管理組合、施工者、工事監理者による工事報告会を月1回程度は開催し、工事の進捗・施工状況の確認や問題点に対する対策の検討、追加・変更工事の検討・承認等を行います。

C工事検査と竣工後の手続き

・工事実施期間中の重要な時期には、管理組合の立ち会いの下で、中間検査を行います。また、工事の施工が最終工程を終えた時点で竣工検査(足場解体前検査及び最終検査)を行います。竣工検査では、施工者検査、監理者検査に加え、管理組合による検査も行います。

・管理組合は、竣工後できるだけ速やかに、竣工図書の引渡しを受けるようにする必要があります。


1.6 マンションの共用部分・専有部分の基本区分と本マニュアルで扱う改修工事の対象

・マンションの共用部分と専有部分の基本区分を示すと以下のようになります。

対 象 部 位

共用部分

専有部分

建 物

@構造躯体(基礎・柱・梁・壁・スラブ・屋根等)

Aエントランスホール、廊下、階段、エレベーター室


(※1)(※2)

Bバルコニー、ルーフバルコニー

C壁仕上げ材、防水材、鉄・アルミ部等の金物

D各戸玄関ドア(住戸外側)、サッシ

E給排水設備、消火設備、ガス、給湯・冷暖房、換気設備、電灯幹線・動力設備、照明器具・配線器具、情報通信設備、テレビ共聴設備、防災設備等の(パイプスペース内の)立て管、各住戸入口までの配管・配線等

F上記Eの各種設備の住戸内の配管・配線


(※2)

G住戸内の居住空間、内装仕上げ材、設備機器等


(※3)

附属施設等

@管理事務所、集会所・コミュニティーセンター、給水塔、クラブハウス、倉庫等

A駐車場、バイク置場、自転車置場

B外構工作物(遊具・柵・掲示板・サイン等)、屋外灯

敷地

@建物の敷地、道路、歩道、広場、緑地等

A専用庭


(※1)(※2)

※1:ただし、通常、専用使用権が設定されています。

※2:管理組合の規約により、共用部分の範囲又は共同管理をする範囲を定めている場合があり、マンション毎に扱いが異なる場合があります。

※3:機器等については共用管等の容量等に影響を及ぼす場合があり、一定の設置ルールを定めている場合があります。

・本マニュアルで対象とする工事は、共用部分の工事であり、住戸内(専有部分)のいわゆるリフォーム工事は扱いません。ただし、専有部分の工事であっても、専用給排水管の更生・取替え工事など、共用配管と一体的に扱うことが必要とされる工事、浴室防水工事や給湯設備・冷暖房設備工事など専有部分の改善のために共有部分に変更を加える必要がある工事等については、本マニュアルで扱います。


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