第2章 計画修繕と既存性能をグレードアップする改良工事


2.1 計画修繕工事と既存性能をグレードアップする改良工事の主な内容

・マンションの質及び価値を長期に維持していく上では、その時代その時代にマンションに求められる性能や水準に対応した住みよいマンションに改善していく必要があります。そのためには、大規模修繕工事等の計画修繕を行う際には、既存性能をグレードアップさせる改良工事を織り込んだ改修工事として実施することが重要となります。

・そこで、計画修繕の基本的な工事項目について、既存性能のグレードアップに相当する改良工事の工事概要を整理すると下表のような内容が想定されます。

・なお、実際に必要とされる工事内容は、マンションの建設当時の仕様や性能によって異なりますが、ここでは2〜3回目の大規模修繕工事を迎える建築後一定の年数を経過したマンション(高経年マンション)で、建設当時のごく標準的な仕様・性能で建築されたものを想定しています。

■計画修繕項目についての改良工事の主な内容(概要)

1.建築関係

(1)建築工事

工事項目

修繕工事の主な内容

改良工事の主な内容
(既存性能のグレードアップ)

(1)鉄・アルミ部塗装工事

屋上、バルコニー、廊下、階段室、遊戯施設・自転車置場等の外構工作物等の鉄部及びアルミ・ステンレス部の塗装塗替え

塗料のグレードアップ、吹付け塗装による仕上げ感のアップ、脱着塗装

(2)躯体改修工事

外壁、共用廊下・階段、バルコニー等のコンクリート壁・上げ裏(天井面)・手すり壁、庇等の劣化・損傷箇所の修繕

再アルカリ化等によるコンクリート躯体の中性化抑止、片持ちスラブの補強

(3)外壁仕上げ改修工事

外壁、共用廊下・階段、バルコニー等のコンクリート壁・手すり壁、庇・バルコニー上げ裏(天井面)等の吹付け塗装部の再塗装、タイルの洗浄及び劣化・損傷箇所の修繕

塗料の性能、外壁仕上げ材のグレードアップ、仕上げによる中性化抑止、外壁の外断熱改修

(4)シーリング改修工事

サッシ廻り、コンクリート打継目地、PC板目地、スリーブ廻り、庇等入隅部、金物端部等のシーリング材の劣化部の打替え防水

シーリング材の性能のグレードアップ

(5)屋根防水改修工事

屋根、屋根庇、階段出入口等の庇の防水層の劣化・漏水等に対する屋根スラブの躯体修繕及び屋根防水層の全面的な修繕・改修

防水仕様のグレードアップ、屋根の外断熱防水、笠木等の材質のグレードアップ、屋上の排水能力の向上

(6)床部改修工事

バルコニー、開放廊下・階段室の床・庇・梁型天端等の防水工事

防水層の新設、防水仕様・工法のグレードアップ、開放廊下・階段室踊り場の雨水吹き込み対策・排水対策、段差部のバリアフリー化

(7)ドア改修工事

住戸ドア及びパイプスペース・メーターボックスの扉の塗装塗替え・取替え、付属金物の取替え

住戸ドア・住戸ドアの付属金物・住戸ドア周り、パイプスペース扉等のグレードアップ、耐震玄関ドアへの取替え、住戸ドアのピッキング対策

(8)サッシ改修工事

サッシ及びサッシ廻りの付属金物の修繕・取替え、窓面格子・窓手すり・防犯雨戸・鎧戸等の取替え

サッシ及びサッシ付属金物の取替え等による性能のグレードアップ、窓面格子・窓手すりの取替え、雨戸の追加・増設、住戸窓の防犯対策

(9)金物類改修工事

上記のドア・サッシの付属金物以外の全ての金物類の劣化・損傷箇所の修繕・取替え

金物類の材質のグレードアップ、使用安全性・容易性を高めた製品への取替え、手すりの設置

(10)屋外鉄骨階段改修工事

屋外鉄骨階段の手すり・踏板・踊り場等の錆・腐食箇所の修繕

踏板の防水・排水・消音・安全性確保・耐震補強工事、屋外鉄骨階段の取替え

(11)内壁・内装改修工事

建物の内部階段・内部廊下、管理事務室・集会室等の壁面、床面、天井面の劣化・損傷箇所の修繕

内壁コンクリートの中性化防止対策、内装塗料の性能・内装材のグレードアップ、シックハウス対策

(12)エントランス改修工事

エントランスホール、エントランス周りの床・壁・天井等の内装の全面的模様替え

エントランスホール及びアプローチ部分の仕上げ等のグレードアップ・バリアフリー化、エントランスドアの性能のグレードアップ、エントランスホールの防犯対策

(13)浴室防水改修工事

住戸浴室の床防水層の劣化・損傷箇所の修繕、全面防水改修

防水仕上げ材、床・壁等の仕上げ材のグレードアップ、浴槽のグレードアップ等


2.設備関係

(1)機械設備工事

工事項目

修繕工事の主な内容

改良工事の主な内容
(既存性能のグレードアップ)

(14)給水設備改修工事

屋内・屋外共用給水管、住戸内専用給水管の更生・取替え工事、給水装置・給水施設のオーバーホール・劣化・損傷箇所の修繕・取替え

給水管、給水装置、給水施設の材質のグレードアップ、受水槽・高置水槽の耐震工事、給水ポンプ等の防振・防音工事、電動機のグレードアップ、給水システムの変更

(15)排水設備改修工事

屋内・屋外の雑排水設備、汚水設備、雨水排水設備、屋外枡管路の劣化・損傷箇所の修繕・取替え

雑排水管・汚水管の材質のグレードアップ、排水能力のアップ、排水システムの変更、排水管清掃口の新設・増設、洗濯機パンの設置

(16)消火設備改修工事

屋内消火栓設備、連結送水管設備の劣化・損傷箇所の修繕・取替え

機器類及び配管の材質のグレードアップ

(17)ガス管改修工事

ガス管(屋内・屋外共用、住戸内専有)及びメーターの劣化・損傷箇所の取替え

ガス管の材質のグレードアップ、配管サイズのアップによる供給能力の向上

(18)給湯設備改修工事

給湯管の更生・取替え工事、給湯器の取替え工事

給湯管の材質のグレードアップ、ガス機器のシステムの変更・性能のグレードアップ、ガス給湯器から電気給湯器への取替え

(19)冷暖房設備工事

 

冷暖房設備の共用配管カバーの新設、共用廊下側へのエアコン用スリーブ・室外機置場の新設、冷暖房設備の性能のグレードアップ

(20)換気設備改修工事

換気口・換気扇・ダクト類の清掃及び修繕・取替え工事

材質のグレードアップ、共用立てダクトの給排気能力の向上

(2)電気設備工事

工事項目

修繕工事の主な内容

改良工事の主な内容
(既存性能のグレードアップ)

(21)電灯幹線・動力設備改修工事

電灯幹線及び電力設備の劣化・損傷箇所の修繕・取替え

電灯幹線の引込み数の増加、低圧引込から高圧引込への変更、幹線改修、トランスの増設による容量増量工事

(22)照明器具・配線器具改修工事

共用廊下・階段、エントランスホール等の照明器具及び配線器具の劣化・損傷箇所の修繕・取替え

照明器具の性能・デザインのグレードアップ、自動点滅器による点灯・消灯方式への変更、安定器の性能のグレードアップ、防犯灯の増設、防犯カメラの設置

(23)情報通信設備改修工事

電話端子盤、MDF盤、IDF盤、引込み管路等の劣化・損傷箇所の取替え

MDF盤・IDF盤のセキュリティー対策、インターネット接続環境の整備、インターホン設備の導入

(24)テレビ共聴設備改修工事

テレビ共聴アンテナ、増幅器盤、分岐・分配器盤、同軸ケーブル等の劣化・損傷箇所の取替え

双方向システムの導入等に伴う同軸ケーブルの性能のグレードアップ、高度な受信形態に適したテレビ配線システムの改善

(25)防災設備改修工事

自動火災報知設備、非常警報設備、誘導灯設備、非常コンセント設備、非常用照明設備等の劣化・損傷箇所の修繕・取替え

誘導灯の性能のグレードアップ、放送設備の整備

(26)避雷設備改修工事

避雷突針、避雷針支持ポール、避雷導線、接地銅板等の劣化・損傷箇所の取替え

 

(3)その他の設備工事

工事項目

修繕工事の主な内容

改良工事の主な内容
(既存性能のグレードアップ)

(27)エレベーター設備改修工事

エレベーターのロープ、モーター、巻上げ機、カゴ、扉、制御盤等の劣化・損傷箇所の修繕・取替え

エレベーターの性能のグレードアップ、マシンルームレスエレベーターへの取替え、エレベーターシャフトの耐震補強

(28)機械式駐車場工事

機械式駐車場の駐車装置、制御盤、検知装置、操作盤、昇降装置、安全装置等の劣化・損傷箇所の修繕・取替え

機械式駐車場の導入・増設、機械式駐車装置の性能のグレードアップ

3.外構・土木関係

(1)外構・土木工事

工事項目

修繕工事の主な内容

改良工事の主な内容
(既存性能のグレードアップ)

(29)舗装改修工事

敷地内道路、駐車場、駐輪場、歩道、広場等の舗装、路盤、縁石、L型側溝、排水溝等の劣化・損傷箇所の修繕・取替え

舗装のバリアフリー性・デザイン性・耐久性等のグレードアップ、屋外段差部のバリアフリー化

(30)外構工作物改修工事

遊具・パーゴラ、自転車置場上屋、柵、掲示板、案内板、サイン等の劣化・損傷箇所の修繕・取替え

材料やデザインのグレードアップ、公園・プレイロットの計画的見直し、ゴミ置場の整備

(31)緑化環境整備工事

高木・灌木の枝払い、芝生の目土入れ等

樹木の生長障害への対応、樹木・植栽の間伐・再配置、植栽・生垣等による空間の区画、駐車場の緑化

(32)屋外排水設備改修工事

敷地内の雨水、汚水排水管路、排水桝の劣化・損傷箇所の修繕・取替え

 


2.2 計画修繕の概要と改良工事の具体的内容・工法等

・大規模修繕等の計画修繕を実施する際には、改良工事を適切に織り込んで実施することが望まれます。ここでは、11 頁〜14 頁の上表に示した工事項目毎に、標準的な高経年マンションを想定し、一般的な修繕周期、工事の主要部位、工事概要、グレードアップに相当する改良工事の内容・工法、概算コスト等の情報について示しています。

・なお、本マニュアルで提供しているコスト情報は、平成16年現在で想定されるコストの概算です。あくまでも一つの目安であり、個々のマンションの仕様・性能により実際のコストは異なりますので、本マニュアルを参考にしつつ、専門家に見積を依頼するようにして下さい。なお、提供している概算コストは、原則として、高経年マンションの標準タイプとして以下の二つのタイプをモデル的に設定し、コスト算定を行っています。当該工事の1 戸当たりの概算費用で示すことができる項目については、戸当たり単価で示し、戸当たり単価で示すことが適切ではない工事項目については、工事内容に即した工事単価(例えば、u当たりコスト、b当たりコスト等)で示しています。

■設定する高経年マンションの標準タイプのモデル

 

モデル1:中層モデル

モデル2:高層モデル

中層階段室型(公団分譲団地)

高層片廊下型(民間分譲マンション)

建築年

昭和40年代

昭和40年代

階 数

5 階

10階

棟当たり戸数

30戸(3階段室)

50戸

エレベーター等

なし

あり・1基(屋外避難階段あり)

構造種別

RC造・壁式構造

SRC造・ラーメン構造

住戸面積

約50u(3DK)

約60u(2LDK)


2.2.1 建築工事

(1)鉄・アルミ部等塗装工事

(1)−1 鉄部塗装工事

修繕周期

・通常の地域では4〜6 年程度。ただし、海辺地域では周期を早めます。

主要部位

・手すり、面格子、扉、物干金物、垂直避難口、竪樋支持金物、テレビアンテナ支持金物、屋上出入口マンホール蓋等、屋上、バルコニー、廊下、階段室、屋外階段等の鉄部

・遊戯施設、自転車置場等の外構工作物の鉄部

工事概要

・鉄部の防錆・美装を目的とした塗替え工事。計画修繕工事では最も短い周期で繰返し行われ、大規模修繕工事の際には各部位を集約して実施されることが一般的です。

・塗装の工程は、まず既存の鉄部に塗装されている旧塗膜や錆・汚れなどを除去する素地調整作業(ケレン:付着物はワイヤーブラシ等で除去し、錆面や既存塗膜の脆弱面は電動工具や剥離剤で除去)を行った上で、錆止め塗装(防錆性能に特化した塗料を使用した下塗り)を行い、仕上げ塗装を中塗り→上塗りの手順で行います。

改良工事の主な内容・工法等

 鉄部塗装に係る改良工事においては、塗料のグレードアップにより、防錆・防食性や耐久性を高めることがポイントとなります。また、仕上げの化粧性を高めることもポイントとなります。

1.塗料のグレードアップ等により耐久性を向上させる

・耐久性・耐候性の向上を目的として、塗料をグレードアップします。近ごろでは、防錆性と耐候性に優れた塗料が採用されるようになってきており、塗替え周期を延伸することによりトータルコストの低減を図ることも期待できます。

・ただし、塗装の仕様を定める上では、適用部位、部位の耐用年数、既存塗膜と新規塗料との相性等を考慮する必要があります。

・なお、錆の発生が著しい場合は、アルミ・ステンレス製等のものへ取替えを行うこともあります。

2.吹付け塗装により仕上がり感を高める

・塗装のムラをなくし仕上がり感を高めるためには、エレベーター扉等は、水磨ぎ等の下地処理の上、吹付け塗装を行うことが望まれます。

3.脱着塗装を行う

・外壁との取合い部で塗装が困難な場合や取り外しての塗装により耐久性・美装性がアップする場合は、取り外して塗装後、再取付け(脱着塗装)を行うことが望まれます。鉄部に貼られているラベル・シール類は剥がした上で塗装を施し、新しいラベル・シール類に貼り替えます。

概算コスト

・標準的な高経年マンションで、鉄部全体の塗装塗り替えを行う場合のコストは、戸当たりに換算して概ね次のように想定されます。

項目

工事

工法・材料等

コスト

鉄部塗装

塗替え

一般塗装

5〜8万円/戸

塗替え

脱着塗装

10〜16万円/戸


(1)−2 アルミ・ステンレス部塗装工事

修繕周期

・鉄部塗装と同時に行われます。足場仮設が必要な部位にある物は10〜15 年周期。

主要部位

・手すり、面格子、扉、物干金物、垂直避難口、竪樋支持金物、テレビアンテナ支持金物、屋上出入口、マンホール蓋等、屋上、バルコニー、廊下、階段室、屋外階段等のアルミ・ステンレス部及び

・遊戯施設、自転車置場等の外構工作物のアルミ・ステンレス部

工事概要

・アルミ・ステンレス部の防錆・美装を目的としたクリーニング、塗替え工事。

・中性洗剤や専用洗浄剤によりクリーニングします。また、錆のクリーニング・除去後に塗装又は取替えをする場合もあります。

修繕工事の概要

・アルミやステンレスは耐久性が優れているため無塗装(アルミはクリア塗装されていますが)で用いられることが多いですが、メンテナンスフリーで錆びることがないわけではありません。長い期間放置すると、部分的に白い点錆が発生することがあります。表面に絶えず付着物が着いていない状態に保つことで、長期間維持することが可能となりますので、クリーニングを計画的かつ頻繁に行うことが最も重要です。

@汚れの付着が多くても錆の発生が少ない場合は、専用洗浄剤により錆のクリーニング・除去を行います。使用する専用洗浄剤の種類、洗浄工程、錆の除去方法等については、十分に検討する必要があります。

A錆の発生が多く美観を損ねている場合は、錆のクリーニング・除去後に塗装を行います。この場合も、洗浄剤の種類、洗浄工程、錆の除去方法、塗装仕様等について十分に検討する必要があります。

B錆の発生が著しい場合は、取替えを行うこともあります。

概算コスト

・アルミ・ステンレス部の清掃・錆除去・塗装等を行う場合のコスト(単価)は、概ね次のように想定されます。

項目

工事

工法・材料等

コスト

アルミ 
ステンレス

清掃・錆除去

専用の洗浄剤の使用

2,000〜3,000円/u

塗装

清掃・錆除去後に塗装

3,000〜6,000円/u


(2)躯体改修工事

修繕周期

・足場架設を要するものが多く、他の工事も同時に行われることから、十数年に一度の大規模な修繕工事となります。一般的には、10〜15 年周期で行います。

主要部位

・外壁、共用廊下・階段・バルコニー等のコンクリート壁・手すり壁・上げ裏(天井面)、庇等のコンクリート躯体

工事概要

・コンクリート躯体のひび割れ(小ひび・大ひび)・欠損、鉄筋の発錆・露出、コールトジョイント(コンクリート打継ぎのひび割れ)、ジャンカ(分離コンクリートによる豆板)、モルタル・タイルの浮き・剥離、エフロレッセンス(遊離アルカリの流出)・漏水等のコンクリート躯体の劣化・損傷箇所の修繕工事。

修繕工事の概要

 コンクリート躯体のひび割れ等の劣化現象は、美観上好ましくないだけでなく、鉄筋に錆を誘発することによる構造耐力の低下や漏水、外壁仕上げ材の剥離等の原因となります。ひび割れ、鉄筋露出、欠損等の劣化・損傷箇所については、適切な修繕工事が必要となります。
 なお、躯体の不具合の状況や躯体への影響の程度等によって修繕の方法が異なり、次のような方法があります。

■コンクリート躯体の不具合に対する主な修繕方法

躯体に発生するひび割れ

躯体に発生するひび割れに対しては、ひび割れ部分にエポキシ樹脂等を注入し止水するか、又は、Uカットシール材充填工法(外壁表面をU字型にカットし、エポキシ樹脂等のシール材を充填し、ポリマーセメントモルタルで平滑に仕上げる)により修繕します。

躯体の欠損

躯体の欠損に対しては、ポリマーセメントモルタル等の付着力の強い無機材を充填し成型します。

鉄筋の発錆・露出

鉄筋の発錆・露出に対しては、鉄筋の錆びている範囲のコンクリートをハツリ取り、鉄筋の錆を除去し防錆材を塗布し、ポリマーセメントモルタルで埋め、コンクリート表面を平滑になるように仕上げます。

コールドジョイント

コールドジョイントとは、コンクリートの打ち継ぎ部に生じる不連続面で、1回目のコンクリート打設から2回目の打設までに長い時間が経過し、コンクリートが一体化しない場合に生じる空隙です。コールドジョイントに対しては、止水材の注入、又は、Uカットシール材充填工法により修繕します。

ジャンカ

ジャンカとは、コンクリート打設の際、モルタルペーストの回りが悪く砂利が集まった状態で、コンクリートの強度低下や防水上の問題を引き起こしかねません。ジャンカに対しては、当該部分をハツリ除去し、無収縮モルタルやポリマーセメントモルタルで埋め戻します。

モルタルの浮き・剥離

モルタルの床面浮きに対しては、エポキシ樹脂を注入します。モルタルの外壁面の浮きにはエポキシ樹脂を注入し、ステンレスピンを挿入します。浮きが激しい場合はモルタルを全面撤去し、モルタルを塗り直します。

改良工事の主な内容・工法等

 高経年マンションの躯体改修工事においては、劣化・損傷箇所の修繕に加え、コンクリート躯体の中性化抑止や片持ちスラブの補強を行うことなどがポイントとなります。

1.再アルカリ化等によりコンクリート躯体の中性化抑止を行う

 コンクリートやモルタルが、空気中の炭酸ガス等の作用によりアルカリ性を失って中性化すると、コンクリート中の鉄筋が発錆し、コンクリートのひび割れ、鉄筋のコンクリートへの付着力の低下、鉄筋の断面欠損等が生じ、躯体の耐久性が低下します。躯体改良により中性化を抑制する方法としては、次のような方法があります。

@アルカリ性の付与による中性化抑止

・中性化の進行した外壁等の既存塗膜を撤去しコンクリート素地を露出させ、アルカリを付与する水溶液を塗布・含浸させることにより、外壁躯体にアルカリ性を付与し、鉄筋の腐食抑制雰囲気を与えます。仕上げ材による中性化抑止(次項の「(3)外壁仕上げ改修工事」を参照)との併用により、外壁躯体の耐久性向上を図ることが期待できます。

A電気化学的再アルカリ工法

・中性化したコンクリートに電気化学的にアルカリを再付与し、再生化する工法です。コンクリート躯体の外側に外部電極(+)を仮設し、外部電極と内部鉄筋の間に所定の電流密度で直流電流を流し、特殊アルカリ溶液をコンクリートの微細な孔内部に浸透させ、コンクリートを再アルカリ化させます。

2.共用廊下、バルコニーなどの片持ちスラブの補強を行う

・共用廊下、バルコニー等の片持ちスラブの躯体内に雨水が浸入し、鉄筋腐食によりスラブの耐力が低下していると、地震による上下動で片持ちスラブが脱落するケースがあります。避難経路となる共用廊下・バルコニー等の耐力を調査し、必要に応じて、鋼材ブラケット等による補強をします。

概算コスト

・躯体の修繕工事のコスト(単価)は、概ね次のように想定されます。

項目

工事

コスト

躯体

ひび割れの修繕(エポキシ樹脂注入・Uカットシール工法)

2,000〜4,000円/m

欠損箇所の修繕(小さな箇所の場合)

1,000〜1,500円/1ヶ所

鉄筋の発錆・露出修繕

3,000〜5,000円/m

モルタル浮きの修繕

6千円〜1万円/u

モルタルの全面撤去及び再モルタル修復

8千円〜1.2万円/u

・再アルカリ化等によるコンクリート躯体の中性化抑止の改良工事は、まだ実績が多くないため、一般的なコストを示すことは難しいですが、アルカリ性付与による中性化抑止のコスト(単価)は、概ね次のように想定されます。

項目

工事

工法等

コスト

躯体

コンクリート中性化抑止

アルカリ性付与による中性化抑止

5,000円/u程度



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