「理事会業務マニュアルの策定」


マンション管理講座  平成19年11月24日

はじめに

 管理組合の適正な運営に関して、平成13年8月1日付けで、国土交通省は「マンションの管理の適正化に関する指針」を定めました。この指針は、これまでのマンション管理の不適正な実態から抜本的な管理を目指すための決意表明と受け取って差し支えないと理解しています。

 その指針の基本的方向として次のように示しています。
 マンションは、今や我が国における重要な居住形態となり、その適切な管理は、マンションの区分所有者等だけでなく、社会的にも要請されているところである。このようなマンションの重要性にかんがみ、マンションを社会的資産として、この資産価値をできる限り保全し、かつ、快適な居住環境が確保できるようにマンションの管理を行うことを基本とするべきである。


(1)マンションの管理にあたる管理組合は、これらの目的を達成するため、マンションの区分所有者等の意見が十分に反映されるように、また、長期的な見通し立って、適正な運営を行うことが重要である。特に、その経理は、健全な会計を確保するよう、十分な配慮がなされる必要がある。また、第三者に管理を委託する場合には、その内容を十分に検討して契約を締結する必要がある。


(2)管理組合を構成するマンションの区分所有者等は、管理組合の一員としての役割を十分認識して、管理組合の運営に関心を持ち、積極的に参加する等、その役割を適切に果たすよう努める必要がある。


(3)マンションの管理は、専門的な知識を必要とすることが多いため、管理組合は、問題に応じ、マンション管理士等専門的知識を有する者の支援を得ながら、主体性をもって適切な対応をするよう心がけることが重要である。


(4)マンションの管理の適正化を推進するため、国、地方公共団体及びマンション管理適正化推進センターは、その役割に応じて、必要な情報提供等を行うよう、支援体制を整備・強化することが必要である。


 そして、管理組合が留意すべき基本的な事項として、

(1)管理組合の運営  管理組合の自立的な運営は、マンションの区分所有者等の全員が参加し、その意見を反映することにより成り立つものである。そのため、管理組合の運営は、情報の開示、運営の透明化等、開かれた民主的なものとする必要がある。また、集会は、管理組合の最高意志決定機関である。したがって、管理組合において適切な判断が行われるよう配慮する必要がある。管理組合の管理者等は、マンション管理の目的が達成できるように、法令等を遵守し、マンションの区分所有者等のため、誠実にその職務を執行する必要がある。


(2)管理規約  管理規約は、マンション管理の最高自治規範であることから、その作成にあたっては、管理組合は、建物の区分所有等に関する法律に則し「中高層共同住宅標準管理規約」を参考として、当該マンションの実態及びマンションの区分所有者等の意向を踏まえ、適切なものを作成し、必要に応じて、その改正を行うことが重要である。さらに、快適な居住環境を目指し、マンションの区分所有者等間のトラブルを未然に防止するために、使用細則等マンションの実態に則した具体的な住まい方のルールを定めておくことが肝要である。管理規約又は使用細則等に違反する行為があった場合、管理組合の管理者等は、その是正のため、必要な勧告、指示等を行うとともに、法令等に則り、その是正又は排除を求める措置をとることが重要である。


(3)共用部分の範囲及び管理費用の明確化  マンションの快適な居住環境を確保するため、あらかじめ、共用部分の範囲及び管理費用を明確にし、トラブルの未然防止を図ることが重要である。特に、専有部分と共用部分の区分、専用使用部分と共用部分の管理及び駐車場の使用等に関してトラブルが生じることが多いことから、適正な利用と公平な負担が確保されるよう、各部分の範囲及びこれに対するマンションの区分所有者等の負担を明確に定めておくことが望ましい。


(4)管理組合の経理  管理組合がその機能を発揮するためには、その経済的基盤が確立されていることが重要である。このため、管理費及び特別修繕費等について必要な費用を徴収するとともに、これらの費用を明確に区分して経理を行い、適正に管理する必要がある。また、管理組合の管理者等は、必要な帳票類を作成してこれを保管するとともに、区分所有者等の請求があった時は、これを速やかに開示することにより、経理の透明性を確保する必要がある。


(5)長期修繕計画の策定及び見直し等  マンションの快適な居住環境を確保し、資産価値の維持・向上を図るためには、適時適切な維持修繕を行うことが重要である。特に、経年による劣化に対応するため、あらかじめ長期修繕計画を策定し、必要な長期修繕積立金を積み立てておくことが必要である。長期修繕計画の策定及び見直しにあたっては、必要に応じ、マンション管理士等専門的知識を有する者の意見を求め、また、あらかじめ建物診断等を行って、それらを区分所有者等に十分周知させることが必要である。管理組合は、維持修繕を円滑かつ適切に実施するため、設計に関する図書等を保管することが重要である。 また、この図書等について、マンションの区分所有者等の求めに応じ適時閲覧をできるように配慮することが望ましい。なお、建築後相当の年数を経たマンションにおいては、長期修繕計画の検討を行う際には、建替えについても視野に入れて検討することが望ましい。建替えの検討にあたっては、その過程をマンションの区分所有者等に周知させるなど透明性に配慮しつつ、各区分所有者等の意向を十分把握し、合意形成を図りながら進めることが必要である。


(6)その他の配慮すべき事項  マンションが団地を構成する場合には、各棟固有の事情を踏まえながら、全棟の連携をとって、全体としての適切な管理がなされるように配慮することが重要である。また、複合用途型マンションにあっては、住宅部分と非住宅部分との利害の調整を図り、その管理、費用負担等について適切な配慮をすることが重要である。


 更に、区分所有者等が留意べき基本的事項として、
 マンションを購入しようとする者は、マンションの管理の重要性を十分認識し、売買契約だけでなく、管理規約、使用細則、管理委託契約等管理に関する事項に十分に留意する必要がある。また、マンションの区分所有者等は、マンションの居住形態が戸建てのものとは異なり、相隣関係に配慮を要する住まい方であることを十分に認識し、その上で、マンションの快適かつ適正な利用と資産価値の維持を図るため、管理組合の一員として、進んで、集会その他の管理組合の管理運営に参加すると共に、定められた管理規約、集会の決議等を遵守する必要がある。
 そのためにも、マンションの区分所有者等は、マンションの管理に関する法律等に関する理解を深める必要がある。専有部分の賃借人等の占有者は、建物又はその敷地若しくは付属施設の使用方法につき、マンションの区分所有者等が管理規約又は集会の決議に基づいて負う義務と同一の義務を負うことに十分に留意することが重要である。


 また、管理委託に関する基本的事項として、
 管理組合は、マンションの管理の主体は管理組合自身であることを認識したうえで、管理事務の全部又は一部を第三者に委託しようとする場合は、その委託内容を十分に検討し、書面をもって管理委託契約を締結することが重要である。なお、管理委託契約先を選定する場合には、管理組合の管理者等は、事前に必要な資料を収集し、マンションの区分所有者等にその情報を公開して、適正な選定がなされるように努める必要がある。また、管理委託契約先が選定されたときは、管理組合の管理者等は、マンション管理業者の行う説明会及び管理事務の報告等を活用し、当該契約内容の周知及び管理事務の適性化図られるよう努めると必要がある。万一、マンション管理業者の業務に関して問題が生じた場合には、管理組合は、当該マンション管理業者にその解決を求めるとともに、必要に応じ、マンション管理業者の所属する団体にその解決を求める等の措置を講じることが必要である。
 (以下略)等と基本的な事項を指摘しています。



 以上のような指針を示して、マンションの管理を適正に行うよう行政指導する新たな展開が開かれ、その後、平成17年12月には、管理組合が進める「マンションの管理標準指針」を決定したところです。
 この指針の公表に当たって、国土交通省は次のように述べています。


「マンション管理標準指針」について

 分譲マンションは、平成16年末の総戸数が約466万戸、推計居住者数は国民の約1割にあたる約1,200万人となり、重要な居住形態として定着しており、マンションにおける快適な住生活の確保やストック(財産)としてのマンションの価値の維持・向上は、重要な課題となっています。
 このためには、管理組合の適切な運営の下で、居住のルールや会計が明確化されるとともに、長期修繕計画等に基づいて適切な維持・改善が行われることが不可欠です。
 マンション管理については、マンション管理会社やマンション管理士などを活用していくことも重要ですが、その主体は、区分所有者から構成される団体、すなわち管理組合です。
 しかし、広範多岐にわたるマンション管理の具体的な内容を管理組合役員が判断し、改善項目を把握することは必ずしも容易でないことも事実です。
 そのため、この度、「マンション管理標準指針検討委員会」における検討結果を踏まえ、マンションの維持・管理のため、「何を」「どのような点に」留意すべきかいわばマンション管理の重要事項に関する標準指針を示すこととしました。


< 本指針のご活用にあたって >

1 主な対象
 マンションには様々な形態がありますが、この「マンション管理標準指針」(以下、「本指針」と言います)では、一般分譲の住居専用の単棟型のマンションであって法人格を有しないものを主な対象としています。 したがって、その他の類型(例えば、複数棟から構成される団地型マンションや管理組合法人となっているものなど)にはそのままあてはめられない項目もあります。
 一部の項目においては、少戸数の管理組合や大規模なマンションも同様です。なお、こうした項目については、出来る限り、その他の類型に関する考え方をコメントで示すことにしています。

2 項目の選定について
 マンションを適正に管理するために考慮すべき事項は非常に多岐にわたりますが、本指針では、その中でも特に重要性の高い項目を選定しています。
 なお、項目は大きく、次の5分野に分類しています。
 一 管理組合の運営    二 管理規約の作成及び改正    三 管理組合の経理
 四 建物・設備の維持管理    五 管理業務の委託



理事会業務マニュアルとは

 国土交通省がマンション管理の指針や標準指針を示す以前から、区分所有法の規定により多くの管理組合は適正な管理・運営を目指してきましたが、適正化法が制定されて以降は、より明確な支援策が示され管理組合にとっても方向性が定まったと見ています。
 さて、様々な法令や支援策ができましたが、考え方の基本は学ぶことができても具体的に示しているわけではありません。
 マンションの管理は既に周知のように、マンションの実態(建物・設備が全て違うことや、住民の意識の違いなど様々な実態がある)によって、管理・運営の方法に違いがあります。
 従って、具体的に、それぞれの管理組合で進める業務は、マンションの実態を反映した内容を自ら策定しなければならないのは言うまでもありません。
 例えば、本日の講座のテーマにあるように、ロードヒーティングの敷設してあるマンションと敷設していないマンションとでは、除雪の方法が異なることや、修学児童が多いマンションは通学時間に合わせた除雪が必要です。このように、マンションの実態によって、管理の方法が異なっています。

 理事会業務マニュアルとは、区分所有者から日常の業務を委任されている理事会が、その業務を進めるための具体的方法と言うことになります。
 この具体的対策を文章化して、管理を適正に実行している管理組合は現実に極僅かであると言われており、理事会のメンバーが替われば業務の仕方も変わるし、これまで培われてきたノウハウも引き継がないということが状態化しているのが現状でしょう。
 このような状態を放置していることは、管理組合の運営にとって多大な損失を生んでいます。理事会が苦労して集めた情報を、理事会のメンバーが替わる度に喪失することは、重大な問題であります。



どのようにしてマニュアルを策定するのか


(1)現在実行している理事会業務を文章化する
 何も、特別なものを策定するのでなく、現在実行している業務の内容を文章化して誰が理事になっても、その情報が直ちに業務に生かせるようにすることです。従って、肩肘の張らない業務そのものの進め方を端的に表すことが必要です。


(2)一遍に完璧なマニュアルは作れない
 はじめから完璧なマニュアル作製は望めません。業務を進めながら補充し完成を目指していくことが重要です。業務もはじめから完成されたものでなく、業務を進めながら理事会で議論して完成していくことです。


(3)業務の見直し毎に進化させる
 前理事会で策定されたマニュアルについて、改良の必要がでたのならば理事会で議論して、進化させることも必要です。10年前に策定されたものは、その後、改良を重ねて進化させることが求められています。


(4)業務毎に整理する
 マニュアルは、バラバラに作製するのでなく、整理して使いやすくすることが必要です。その点では標準指針を参考にすべきでしょう。


(5)業務に必要な書式の確定
 業務を進めるためには、様々な書式を確定しなければなりません。書式は業務マニュアルの一端として軽視すべきではありません。



マンション管理標準指針を活用


 指針は管理組合の運営を五本柱で仕分けして進め方を示しています。これから、策定を予定している管理組合は指針を参考にして、それぞれの管理組合の実態を加味して策定することをお薦めいたします。


1.管理組合の運営

(1)総会の運営
 総会開催時期の明確化、総会前の情報の適正な提供、総会議事録の配布、総会関係書面の閲覧、広報を適正に文書化することです。


(2)理事会の運営
 理事会が次期理事会にバトンタッチする際、殆どの管理組合で、引き継ぎが行われておりません。引継書を作成して、懸案事項や必要な書類の引き継ぎを行うようにすべきです。
 また、理事会の開催を定例化して行うことが求められています。
 理事会の運営は組合員に情報として公開するために、広報を作成して定期的に発行することも必要です。
 更に、管理委託経費・各種メンテナンス経費の見直し手順なども定式化することです。


(3)防災・防犯
 消防計画、災害対策等の取り組みを具体化すること、防犯対策も具体的に策定することが求められています。


(4)その他
 損害保険給付の保全が万全でありません。管理会社が給付を受け取った例がありますが、管理組合の収入に計上しなければなりません。また、この収入を計上していない事例もあり、管理組合の会計原則である予算主義の原則を逸脱しております。
 除雪対策(ロードヒーティングの稼働方法等)の具体化、電気の点灯・消灯の進め方もマニュアルに含めたいものです。


2.管理規約の作成・改正

(1)管理規約の内容


(2)管理規約の周知


(3)管理規約の保管・閲覧


(4)管理規約の見直


3.管理組合の経理

(1)予算決算
 事業計画と予算案の一体化、無駄のない効率的な予算計上が必要。そのためにも、適正な情報収集による価格の決定が求められる。
 予備費の計上等で柔軟な会計の運営が可能なルールを確立。


(2)管理費等の徴収
 滞納金の把握、催促、規約に基づく遅延損害金の徴収、法定手続きと裁判手続きの進め方を具体的に策定する。


(3)財産の保全
 現金、預金通帳、債券等の財産の保全方法を明示する。


(4)帳簿類の作成・保管
 支出決定書、支出稟議書、組合員別月別一覧表、収入調書、未収金調書、請求書、領収書、総勘定元帳、等の作成と保存の励行の定式化


4.建物・設備の維持管理

(1)保守点検の実施
 法定点検等の明確化と点検後の書類の保存。


(2)長期修繕計画の作成・見直し
 総会決議による計画の作成と見直しのルールの確立


(3)修繕積立金の積立
 一時金の徴収等という不祥事を発生させない計画的な積立金の徴収。


(4)大規模修繕工事の実施


(5)耐震性の検討


(6)設計図書の保管・閲覧


5.管理業務の委託

(1)委託契約の締結
 標準管理委託契約書の採用と業務仕様の見直しを行い、管理組合主導の管理委託契約が行われるような定式化をつくることが重要です。そのための、契約先の選定をどうするのか決めること。


(2)管理事務の報告
 毎月の事務管理報告の確立。



   

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