大規模修繕工事に係わる設計監理契約書とは

北海道マンション管理問題支援ネット

一級建築士 細川 國雄


 マンションの長期保全のためには、劣化診断のもと適正な大規模修繕工事等を実施することが求められています。そのために、理事会のパートナーとも言うべき信頼できる一級建築士に工事に係わる設計や工事監理を委任することになります。
 しかし、理事会等の無関心や情報不足につけ込み管理会社等が不当な設計監理契約を結び不当な利益を上げている実態があります。このような問題が、自分の管理組合で行われたらどうなるでしょう。事例から教訓を学び、組合員の共同の利益を確保できる適正な設計監理契約とはどのようなものか。検討してみたいと思います。


● 設計監理について


 住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)発行の「大規模修繕工事マニュアル」にも記してありますが、パートナーとなる一級建築士が必要になります。また、様々なトラブルも想定されます。


    【よくある事例】    

○ 役員が建設会社の関係者で、発注先にその会社を選びたがっている。

○ 役員が塗料メーカーの関係者で、発注先にそのメーカーを選びたがっている。

○ 理事会が総会で決議されたにもかかわらず、突然、大規模修繕を中止する。

○ 大規模修繕を中止したため、関わっていた設計事務所に費用を支払わない。

○ 区分所有者でない理事長や修繕委員長が大規模修繕を指揮している。

○ 区分所有者が工事のための専有部分の立ち入りに協力しない。

○ 共用部分か専有部分かはっきり定めていない部分の費用負担など。


    【札幌市内の事例】    

○ 500戸のマンションで5億円支払って大規模修繕を終了したが、他のマンションの事例に当てはめると費用は約3億円で済んだと思われる。

○ 200戸のマンションで2億円支払って大規模修繕を終了したが、他のマンションの事例に当てはめると費用は約1億2千万円で済んだと思われる。

○ 管理会社に大規模修繕工事監理を依頼したら、工事費の15%要求された。

○ 工事監理費については「国土交通省告示1206号」により定められている。



告示1206号  (参考)

 設計事務所が、設計業務や監理業務を行うために、建築主が支払う費用のことを設計報酬(一般に設計料)といいます。

 これは、国土交通省告示1206号の中で、詳しくその算定方法の基準が定められております。
 過去のデータを基に、工事費に対して設計手間がどのくらいかかるのかを、人日数で表わして計算します

 報酬額=直接人件費+直接経費+間接経費+技術料+特別経費+消費税

 しかし契約時点で実際にかかる経費を前もって計算するのは、不可能といってもいいでしょう。
そこで略算方法によって業務報酬を計算することとなります。
 以下参照
 略算による算定方式(Man・Day方式)






直接人件費 経費
技術料
特別経費 消費税
(直接人件費と同額) の0〜50%
の間で調整
その業務の従事者の 直接経費 間接経費 その業務に係る その業務に係る 取引に係る
給与
賞与
諸手当
退職金
法定保険料

など
印刷製本費

複写費

交通費

など
事務所管理・
運営人件費
研究・調査費
研修費
減価消却費
通信費
消耗品費
賠償保険料
書籍費
など
技術力

創造力

など
出張旅費

特許使用料

など
消費税額

 以上の様に経費は、直接人件費と同額となっています。技術料については、その難易度によって直接人件費の0〜50%の間で調節する事となっています。特別経費については無い場合がほとんどですが、遠方の現場などである程度予測がたつ場合、想定計算して計上し後日清算、その都度請求、もしくは全て後日請求となります。すなわち、直接人件費がこの計算式のもとになっています。それでは、その直接人件費の割り出し方法は、

直接人件費=(業務人・日数)×日額

となります。業務人・日数とは、1級建築士経験3年未満、もしくは2級建築士経験8年未満の者が、
設計又は工事監理等を行うために必要な人・日数で、下表より選択します。

設計・工事監理標準業務人・日数表
  第1類 第2類 第3類 第4類
                    A B
 
設計
監理
合計
設計
監理
合計
設計
監理
合計
設計
監理
合計
設計
監理
合計
1000万円
                 
25
12
37
14
7
21
1500万円
                 
36
18
54
19
9
28
2000万円
                 
47
23
70
24
12
36
2500万円
                 
57
28
85
28
14
42
3000万円
47
24
71
52
26
78
57
29
86
67
33
100
33
16
49
3500万円
53
26
79
59
29
88
65
32
97
77
38
115
37
18
55
4000万円
58
29
87
65
32
97
71
36
107
87
43
130
40
20
60
4500万円
64
32
96
71
35
106
78
39
117
97
48
145
44
22
66
5000万円
69
34
103
77
38
115
85
42
127
106
52
158
48
23
71
6000万円
80
39
119
89
43
131
97
47
144
125
62
187
55
27
82
7000万円
90
43
133
100
48
148
110
53
163
144
71
215
62
30
92
8000万円
99
48
147
110
53
163
122
58
180
162
80
242
68
33
101
9000万円
109
52
161
121
58
179
133
63
196
180
89
269
74
36
110
1億円
118
56
174
131
62
193
144
68
212
198
97
295
80
39
119
1.2億円
136
64
200
151
71
222
166
78
244
233
115
348
     
1.4億円
153
71
224
170
79
249
187
87
274
267
132
399
     
1.6億円
169
78
247
188
87
275
207
96
303
301
148
449
     
1.8億円
185
85
270
206
95
301
226
104
330
334
165
499
     
2億円
201
92
293
223
102
325
245
112
357
367
181
548
     
2.2億円
216
98
314
240
109
349
264
120
384
400
197
597
     
2.4億円
231
105
336
256
116
372
282
128
410
432
213
645
     
2.6億円
245
111
356
273
123
396
300
135
435
465
229
694
     
2.8億円
260
117
377
288
130
418
317
143
460
495
244
740
     
3億円
274
123
397
304
136
440
335
150
485
528
260
788
     

建築物の用途等による分類
    建築物の用途等
第1類   工場、車庫、市場、倉庫等
第2類   体育館、観覧場、学校、研究所、庁舎、事務所、駅舎、百貨店、店舗、共同住宅、寄宿舎等及び1類の複雑なもの
第3類   銀行、美術館、博物館、図書館、公会堂、劇場、映画館、集会場(オーディトリアムを有するものに限る)
ナイトクラブ、ホテル、旅館、料理店、放送局、病院、診療所、複合建築物等及び1・2類の複雑なもの
第4類
A
戸建住宅(一般的な木造戸建住宅を除く)
 
B
一般的な木造戸建住宅
注:記念建造物、社寺、教会堂、茶室、室内装飾、家具造作等に関する特殊なものは、上記の類に含まれない。

業務経験年数等による技術者区分モデル

建築士等の資格・業務経験等による区分 業務能力の換算率 10年度日額(基準)
1級建築士18年以上・2級建築士23年以上の業務 経験
及び、大学卒業後23年以上相当の能力のある者
1.83 57,828 円
1級建築士13年以上・2級建築士18年以上の業務 経験
及び、大学卒業後18年以上相当の能力のある者
1.80 56,880 円
1級建築士8年以上・2級建築士13年以上の業務経験 
及び、大学卒業後13年以上相当の能力のある者
1.56 49,296 円
1級建築士3年以上・2級建築士8年以上の業務経験  
及び、大学卒業後8年以上相当の能力のある者 
1.23 38,868 円
1級建築士3年未満・2級建築士5年以上の業務経験  
及び、大学卒業後5年以上相当の能力のある者 
1.00 31,600 円
上記に該当しない者 0.69 21,804 円

この表の日額は、人件費年額を年間稼動日数で除した額です。
又ここでいう年間稼動日数とは、170日〜200日です。
(1年365日−一般休日数−有給休暇20日−技術研修、情報収集、社会活動等にようする日数)



● 建物診断書について、従来の建物診断の方法は、

1.手の届く範囲を調査して、10階建てなら10倍掛けて数量を想定する。

2.双眼鏡などで上階のひび割れを確認する。

3.ゴンドラなどを下げて全面打診調査をする。(費用が300万円以上かかる)

4.過去の経験から外壁のひび割れを3%と想定する。


● 3Dレーザー測量とは


 離れた所から足場不要で改良された測量トータルステーションで、クラック(ひび割れ)の幅、形状、位置、建築構造物自体の形状等、非常に効率的に三次元のデーターを取得できるシステム。
 現場で取得してデーターは、シームレスにCADデーターとして出力され、編集作業も大幅に省力化されています。
 費用面と診断書退出の浮きもゴンドラなどを下げて全面診断をする場合と比較して、1/3程度になります。


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