実例に基づく新築マンションの不具合

北海道マンション管理問題支援ネット

一級建築士 細川 國雄


 新築時からマンションには不具合があります。不具合の無いマンションは1棟もありません。昨年度までに経験した実例を報告いたします。


1.共用部分の不具合


1−1.地震対策用の構造スリットが入っていなかった。
1−2.屋上防水から雨漏りがする。
1−3.外壁のタイルが浮いていた。


1−1.地震対策用の構造スリットが入っていなかった。


構造上のスリットとは、次のようなものです。
 柱周りにスリットを入れる理由鉄筋コンクリート造(以下RC造と言います)を構造計算する時、柱の高さが柱の幅の2倍あるいは、2倍半以下であると、短柱と言ってより強くしなければならない規定があります。これは、地震が来たとき、短柱は、せん断破壊と言って45度の角度でひびが入りもろい潰れ方をします。それに対して長柱(短柱以外の柱)は、地震が来たとき、曲げ破壊と言って水平にひびが入ります。曲げ破壊は、粘りのある鉄筋が降伏状態(フックの法則が成り立たなくなってから、破壊に至るまでの状態)になるので、地震のエネルギーを吸収して破壊にまで余裕があります。普通RC造の柱だけでは、短柱になることは、ありません。腰壁・たれ壁と言われるような壁が柱に付いていると柱の高さが狭まって短柱になってしまうのです。この腰壁・たれ壁を柱から隔離するためスリットを入れます。

壁周りにスリットを入れる理由
 RC造の構造計算をする時、偏心率・剛性率というものを計算しなければならない時があります。偏心率とは、建物の剛性の中心がどこにあるかという率で、例えば南側が窓ばかり、北側が壁ばかりの建物ですと、柱と壁の剛性を比べると壁の方がはるかに剛性がありますので、剛性の中心は、北側によることになります。その剛性の偏りを偏心率という数値で表しある程度以上の建物は、詳しい計算をしなければならないことになっています。また地震は、弱いところに力が集中しますので、上の例では、南側の柱を相当太くしなければならなくなります。剛性率とは、各階の剛性の比です。1階が駐車場で壁などがなく(剛性が低い)2階以上が住宅で壁がたくさんある(剛性が高い)と、剛性率が小さな値になります。ある値以下になると偏心率と同じように詳しい計算をしなければならないことになっています。同じように、地震は、弱いところに(1階)に集中しますので1階をより強くしなければなりません。 壁が有っても偏心率を0・剛性率を1にするとため構造スリットを入れます。この場合の構造スリットは、壁の周りに入れます。壁の4周に入れれば理想ですが、それでは、壁が倒れてしまいますので、3周に入れるの普通です。上からぶら下がるように壁を付ける方法と下からだけ支持する方法があります。 (コンクリートの打設の便から下のスリットが多い)いずれのスリットの幅については、安全性を確かめて幅を決めるべきですが、概ね階高の100分の1程度です。以上は、正当と認められる方法です。 構造スリットを入れずに設計する方法でも安全性を確かめれば充分でこちらの方が安全性は、高いと私は、考えています。要するに構造スリットを入れる方法は、経済設計するための便法であると思います。



建物診断の結果M社(販売主)とT社(建設業者)は施工の手抜き工事を認めて、補修工事を申し出ているが、現在継続交渉中!
新築時にスリットの施工写真の確認を要する。
理事会は専門家に診断を依頼する。
販売主だけを信じては大変なことになりますよ。



1−2.屋上防水から雨漏りがする。


パラペット上部に雪庇落し金物が設置されており、その下の屋上防水端部押へ金物が未設置であったために、雨水が防水の裏側に回って漏水した。



販売主(C社)と施工業者(A社)は施工ミスを認めて無償にて補修に応じた。
 販売主(C社)は施工業者(A社)に丸投げ状態で発注し、施工業者(A社)はバブル崩壊後に他社との合併にまで追い込まれ、その間に現場所長が3人も代わり、防水の施工状況を把握していなかった。
新築時にスリットの施工写真の確認を要する。
理事会は専門家に診断を依頼する。
販売主だけを信じては大変なことになりますよ。



1−3.外壁のタイルが浮いていた。



構造スリットの上や打継ぎ目地の上にタイルをまたがせて施工していたため、赤外線写真で確認したところ、浮きが発見された。
新築時にスリットの施工写真の確認を要する。
理事会は専門家に診断を依頼する。
販売主だけを信じては大変なことになりますよ。





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