第4回マンション管理講座  基 調 報 告  
柳 田  節

マンションの保険はどう考えるべきか

 マンションは個々の財産の集積した建物ですが、共用となる部分が存在し、この建物の共用部分をはじめとして、共有地や、その上に設置された工作物などの共有財産を管理保存する常設機関が管理組合とされています。
 ところで、昭和59年1月1日に「建物の区分所有等に関する法律」いわゆる「区分所有法」が改正施行されましたが、このなかで「損害保険契約」は共用部分の管理事項として定められています。
 施行からすでに20年を経過しているのに法の趣旨を理解したうえで、適正な損害保険契約を締結されている管理組合は、あまり多くを数えられないようです。
 マンションの共用部分で事故が発生したとき、その復旧や賠償は、一般的に管理組合が業務としてあたることになります。
 10数年前の首都圏のある団地で、ダストボックスの周りで遊んでいた幼児が、仕切壁が倒れたために、その下敷きになって死亡した事故がありましたが、最終的に管理組合が管理責任を問われ、事故が発生した当時の理事長が賠償金を支払うことによって和解しています。
 旧法の下において、管理組合の責任を明らかにした例ですが、現行法はこの管理責任の主体を区分所有法第9条(建物の設置又は保存に関する推定)に新設して明確にしています。

 5階建住宅の5階の家で、押し入れの天井にシミがあるのに気がつき、天袋を開けてみたところ、収納してあった衣類が水浸けの状態だ、と主婦が管理事務所に届け出てきました。常識的に判断すると屋根からの雨漏りと推測できます。管理組合は、その場で「管理の不備」すなわち「保存の暇疲」と推定し、漏水の原因の調査をしたうえで屋根を補修し、5階の家の被害の賠償をしていますが、この被害宅に対する賠償金は「施設管理者賠償責任保険」が担保しています。
 管理組合にとって、欠かしてはならない損害保険契約はなにか、と考えてみますと、共用部分の「物」の保険と、共用部分管理の業務を遂行するうえでの「賠償責任」の保険の2つがあげられます。
 「物」の保険の代表的なものは「火災保険」ですが、「掛捨」と「積立」があり、このなかで、またさらにいくつかの契約形態があります。
 一般的には、掛け捨ての火災保険が考えられますが、修繕積立金の有効な運用を図る意味合いから、積立火災保険を導入する組合が増えてきています。
 (ただ、ローンの融資契約時などに、共用部分まで含めた火災保険契約をしている組合員もいるはずですから、証券写などで確認して、適正な契約であればその住戸を外したうえで組合契約をするも考えられます。)
 「賠償責任」は前述のとおり、管理組合は最終的な責任を負う立場にありますから「共用部分の施設管理(所有)者賠償責任保険」の契約は手当てしておくべきでしょう。なお、この保険は掛け捨てになります。

   ≪どのように掛ければよいのか≫

 火災保険の場合、1年間の契約が通常ですが、保険料は掛け捨てることになります。
 マンションの規模が大きくなるほど多額になるのは道理ですが、1戸70uの200戸クラスのマンションですと、毎年、100万円を超える保険料を掛け捨てることになります。
 このようなことから、積立火災保険を導入する組合が増えてきており、保険の「質」とくに「効果性」を求める傾向になりつつあります。

   ≪積立火災保険の効果性≫

 積立火災保険は、本来の保険機能に加えて金融機能を併せもっています。
 保険機能とは、突発的な事故に遭遇したとき、保険金で対処できるということで、積立金を取り崩したり、一時金を徴収したりすることもなく、計画修繕を歪めないですみます。
 金融機能としては、一例として「預入金に対する満期受領金」を他の金融商品と比較してみても遜色はありません。これは、税法上のメリットがあることも理由のひとつです。
 さらにまた、複数年契約の積立火災保険の導入により、その期間分の掛け捨ての火災保険料が割り引きとなりますから、その契約分の保険料を節減することが出来ます。

   ≪契約者は理事長≫

 「損害保険契約」は、物品の調達や工事の請負の契約などとは異なり、互いに内容を承諾したうえで成立する「諾成」の契約です。契約者の都合で任意に解約もできますし、保険種目によっては借入もできます。
 したがって、管理組合が保険会社との間で交わすべき契約を第三者たる管理会社に任せたりすることは本来考えられません。
 保険契約者は、管理組合理事長です。「被保険利益」が管理組合にあるべきはずの契約が、理事長名の契約になっていませんと、管理組合は、保険金の請求権や受領権を行使することができません。とくに、積立火災保険の契約は、自分たちのお金であるにもかかわらず自由にならないなど権利を制限されてしまいます。
 ただし、積立部分と掛け捨ての火災保険部分については、それぞれ別々の会計処理が妥当と考えられます。
 この手法は、建物のリスクマネジメントと積立金のフアイナンシヤルプランニングを同時に可能にしますので、管理組合にもたらす経済効果のもっとも高い火災保険契約といえます。

 「物」保険には一般的なものとして、火災保険(住宅火災保険、住宅総合保険、普通火災保険、店舗総合保険)、機械保険、ガラス保険等があります。又最近はマンションの共用部分に付ける「物」保険として、ほとんどの保険会社で、「マンション総合保険」、「積立マンション保険」というような名称で、管理組合向け専用の損害保険を販売しています。このような共用部分専用の保険は、マンションの特性に合わせた商品内容として次のような特徴がありますので、管理組合にとっては有利といえるでしょう。ただし、保険会社により補償の内容が多少異なる場合がありますので、契約の際には確認が必要です。また保険金額は時価相当額が原則ですが、最近は時価にかかわらず掛ける事の出来る保険もありますので検討されると良いでしょう。

(1)共用部分専用商品のメリット

1.積立保険であれば、修繕積立金の運用を兼ね、一定期間後に、満期返戻金が受け取れる。また、満期の前に予期せぬ補修等が必要になった場合には、補償はそのままにして一定額の貸付けが受けられる契約者貸付制度もある。

2.特約を追加することにより、機械設備やガラスなども補償の対象にしたり、賠償責任保険も単独で契約するより割安な保険料で補償内容を充実できる。

(2)補償の範囲

1.マンション共用部分専用商品(マンション総合保険等)の補償範囲は次のとおりです。

 

a. 火災
b. 落雷
c. 破裂・爆発
d. 建物外部からの物体の飛来・衝突
e. 水漏れ
f. 騒じょう・集団行為
g. 風災・ひょう災・雪災(20万円以上)
h. 盗難
i. 水災
j. 臨時費用(上記a〜gの事故)
k. 残存物取片付け(上記a〜gの事故)
l. 失火見舞金(上記a、cの事故)
m. 地震火災費用
n. 傷害費用(上記a〜iの事故)
o. 傷害防止費用((上記a〜cの事故)

2. 特約を追加することにより補償される範囲

ア. 施設賠償責任担保特約
マンションの共用分の使用・管理につき、管理組合が法律上の損害賠償責任を負担した場合に補償される。
(例)・外壁が剥がれ落ち、通行人に怪我をさせた。
   ・共用部分の給排水管の事故により漏水し、専有部分に損害が生じた。

イ. 水漏れ損害担保特約
居住者の個室で生じた事故(専有部分の事故)により漏水し、保険の目的である共用部分に損害が生じた場合の補償。

ウ. 個人賠償責任包括特約
マンションの専有部分に係わる居住者の賠償事故を補償。
(例)・居住者が水道の蛇口を閉め忘れ、階下の個室内の家財に損害をおよぼした。
   ・居住者がベランダから物を落とし、通行人に怪我をさせた。

エ. ガラス損害特約
投石、強風による物の飛来、車両の飛びこみ、居住者・来訪者の不注意等により、エントランスドアのガラスを割った場合に補償。

オ. 設備損害担保特約
エレベーター、給排水設備、車両のセキュリティーシステム等マンション内の機械、設備に生じた電気的、機械的事故を補償。

(3)地震保険

  地震、噴火、津波により、建物が損壊、火災(延焼、拡大を含む)、埋没、流失した場合は、火災保険だけでは補償を受けられません。別途地震保険への加入が必要となります。地震保険は、主契約に付帯して加入し、限度額があります。


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