管理組合の会計


会計基準がない

まず初めに、管理組合の会計には基準となる定めがなく、また、統一された会計処理様式もないという現状を理解して下さい。つまり、100のマンション管理組合があれば、すべて異なる会計処理により、100種類の決算書式で報告されているということです。

(財)マンション管理センターが平成14年度に住宅金融公庫とともに管理組合の財務状況について実態調査を行って、収集した財務関係書類を分析すると管理組合毎に様々な会計処理が行われていたとのことです。

建物の区分所有等に関する法律では、「第四十三条 管理者は、集会において、毎年一回一定の時期に、その事務に関する報告をしなければならない。」と、会計報告の必要性について定めていますが、その様式には一切触れていません。

マンションの管理の適正化に関する指針(平成13年8月1日国土交通省告示第 1288号)では、「管理組合の管理費及び特別修繕費等について、これらの費目を明確に区分して経理を行い、適正に管理する必要がある」ことを定めています。しかし、この指針は法律ではありません。

そうは言っても、管理会社へ委託しているマンションでは、決算書(収支決算書、貸借対照表、正味財産増減計算書、など)が毎年報告されています。この決算書式は、その管理会社が独自に作成しているものなのです。(さらに、同じ管理会社でも、マンション管理組合毎に書式が違っていることもあります。)

また、自力管理(自主管理)を行っているマンション管理組合では、それぞれ独自の書式により決算書が作成されています。

万が一、決算書が毎年決まった時期に報告されてない場合は、要注意を通り越して、大問題ですので、管理組合の役員に大至急確認しましょう。


注意しなければならない現象

以下の現象がありましたら、要注意です。

(1)不十分な会計書類の整備

@貸借対照表が作成されていない。

A企業会計による会計書類と同じ書式及び勘定科目(損益計算書)で作成している。

B財産目録または什器備品を管理する備品台帳を作成していない。

C月次収支計算書が整備されていない。

(2)管理費会計と修繕積立金会計の未区分の会計

@収支計算書で、管理費会計と修繕積立金会計(その他の特別会計)を区分していない。

A貸借対照表で、管理費会計と修繕積立金会計(その他の特別会計)を区分していない。

(3)現金主義の採用

@期末の未収金や未払金の処理が不明確となる現金主義を採用している。
(期中に発生している取引が、未払金・未収金として会計処理されていない。)

(4)不明確な貸借対照表の記帳

@金融機関からの借入金を負債の欄に記載していない。

A定期預金または損害保険の積立保険料を資産の欄に記載していない。
(資産取引=例えば、定期預金を取り崩して積立保険料を支払った場合に、支出として扱って貸借対照表に記載されていないような現象)

B勘定科目が変更されてもその説明がなく、経理の継続性を確認できない場合。

(5)管理組合業務の目的外の支出

@組合員の合意や管理規約等による定めがないにもかかわらず、管理組合会計から町内会費、自治会費の支払いをしている。
(原則として、町内会費・自治会費を組合経費から支払うのはいけません。組合経費から支払うには、特別な取決め=規約・総会決議が必要です。)

(6)不明確な会計書類等の保管期間

@会計書類及び会計帳簿の保存期間を定めていない。

(7)機能していない会計監査

@会計監査の経験のない区分所有者が監事として選出されている場合には、業務監査とともに実質的な会計監査が行われていないことが多い。
(監事という役職は重要です。単独で組合総会を招集出来る権限が与えられていますので、理事長よりも重要な役割とも言えます。監査報告を決算報告の付け足しのような扱いをしている管理組合は大きな間違いを犯しています。監査報告は、どのような手法を用いて監査したのか、業務監査・会計監査について詳しい報告をしてもらいましょう。)


守らなければならない会計原則

管理組合には会計基準がなくても、法人税法や地方税等における取扱いで「公益法人等」とみなされています。公益法人会計に極めて近い会計と位置づけられていますので、最低限守らなければならない会計原則があります。

(公益法人又は特定非営利活動法人では、それぞれ、公益法人会計基準(昭和60年9月17日公益法人指導監督連絡会議決定)又は特定非営利活動促進法(第27条)で会計原則が定められています。)


(1) 管理組合会計の一般原則

企業会計や公益法人会計と共通する「一般原則」。マンションの維持管理に要する収支及び管理組合の財務状況を正確に表す会計書類を作成するための原則。

@ 正規の簿記の原則

正規の簿記の原則として、次の3つの条件を満たす必要があります。

A 網羅性があること(管理組合の財産の動き及び状態をすべて表していること)

B 検証性があること(検証可能な証拠に基づいて記録されていること)

C 秩序性があること(体系的に整然と記録されていること)

簿記の方法には、単式簿記と複式簿記とがありますが、複式簿記によると適正な会計書類を作成することができることから、管理組合でも複式簿記を原則とすることが望ましいとされています。

例外的に、単式簿記を採用する場合には、単式簿記の特徴を十分理解して、会計書類を作成する必要があります。

また、会計帳簿への記帳の方法には、発生主義と現金主義とがありますが、月次の予定収支又は年次予算と当該会計期間内に発生した収入及び支出を比較することができること、及び管理費や修繕積立金などの未収金の管理がしやすいことなどから、発生主義を原則とすることが望ましいとされています。

A 真実性の原則

会計書類は、会計帳簿に基づいて、収支及び財務状況に関する真実な内容を表示したものとすること。

貸借対照表及び収支計算書などの会計書類は、会計帳簿に基づいて作成される必要があり、会計帳簿以外の資料から作成されてはならない。また、会計帳簿に記載されていれば、すべて正しく貸借対照表及び収支計算書に反映されなければならない。簿外帳簿は許されないという原則です。


B 明瞭性の原則

会計書類は、区分所有者などの利害関係者に、収支及び財務状況を明瞭に表示したものとすること。

貸借対照表及び収支計算書などの会計書類は、適切な区分経理と勘定科目に分類するなど、収支状況と財務状況を区分所有者に明瞭に、かつ、わかりやすく示す必要があります。

なお、法令上規定されている宅地建物取引業者からの照会がある場合には、区分所有者以外にも適宜、情報を公開する必要があります。

C 継続性の原則

会計処理の基準及び手続きについては、毎年継続して適用し、みだりにこれを変更しないこと。

管理組合として一度選択した会計処理の方法は、原則として、正当な理由のない限り変更することはできず、継続して適用しなければならなりません。

なお、会計処理の方法を変更する場合には、その変更の理由及び変更前後の金額を明示し、総会(集会)の決議を経るなど、適正な手続きを経る必要があります。


(2) 管理組合会計の特有原則

管理組合の特性から導き出される特有の会計原則です。

@ 予算準拠の原則

この予算準拠の原則とは、管理組合の特性から導き出される特有の原則です。つまり、管理業務の遂行に際して、管理者(理事長)や特定の役員の恣意に流されることになってはならず、予算に基づいて執行されることが必要であるとする原則です。

したがって、収入及び支出は総会(集会)で決議された収支予算書に従って行われる必要があり、特に、支出については予算内にとどめることが重要です。ただし、支出が予算を上回る場合には、管理規約で定めた予備費の流用や臨時総会(臨時集会)による決議などによって、予算と支出の整合性を保つ必要があります。

管理組合の収入及び支出は、予算に基づいて行う必要があること。


A 区分経理の原則

管理組合には、日常の維持管理に関する会計業務、将来の大規模な修繕工事費用の修繕積立金に関する会計業務、そして、駐車場や駐輪場などの使用料に関する会計業務があります。特に、大規模な修繕工事のためには修繕積立金を定期的に積み立てていくことが必要であり、また、積み立てられた資金は大規模な工事費のために支出することが求められています。

それぞれの会計を混同すると適正な管理に支障が生ずるため、日常の維持管理に要する会計(管理費会計または一般会計)と大規模な修繕工事費に備えるため会計(修繕積立金会計または特別会計)は、区分して経理する必要があります。

また、管理費会計の剰余金の一部を修繕積立金会計に繰り入れることについては、総会の決議で行うことができます。

このように区分経理を行うことによって、いわゆる管理会計という観点からも、予算と実績の推移を適正に把握し、管理することができます。



収支予算書、収支計算書、貸借対照表の事例


(参考1)管理費会計の収支予算書

自 平成○○年 4月 1日

至 平成○○年 3月31日

○○○マンション管理組合                    (単位:円)

項   目

○○年度予算

前年度実績

対  比

備  考

(収入の部合計)


管理費

駐車場使用料

専用庭使用料

雑収入

受取利息

町内会費(徴収代行)

管理組合が代行して徴収するもの。

(支出の部合計)

管理事務委託費

事務管理業務費、管理員業務費、清掃業務費、設備管理業務費を含む。

水道光熱費

 電気料

 水道料

ガス料

損害保険料

排水管洗浄費

什器備品費

小修繕費

組合運営費

雑費

町内会費(支払代行)

管理組合が代行して支払うもの。

予備費

(当期収支差額)

(前期繰越収支差額)

(次期繰越収支差額)

(参考2)修繕積立金会計の収支予算書

自 平成○○年 4月 1日

至 平成○○年 3月31日

○○○マンション管理組合                   (単位:円)

項   目

○○年度予算

前年度実績

対  比

備  考

(収入の部合計)

修繕積立金

駐車場使用料

受取利息

(支出の部合計)

○○修繕費

△△修繕費

(当期収支差額)

(前期繰越収支差額)

(次期繰越収支差額)

(参考3)管理費会計の収支計算書

自 平成○○年 4月 1日

至 平成○○年 3月31日

○○○マンション管理組合                    (単位:円)

項   目

決  算

予  算

差  額

備  考

(収入の部合計)

管理費

駐車場使用料

専用庭使用料

雑収入

受取利息

町内会費(徴収代行)

管理組合が代行して徴収するもの。

(支出の部合計)

管理事務委託費

事務管理業務費、管理員業務費、清掃業務費、設備管理業務費を含む。

水道光熱費

 電気料

 水道料

ガス料

損害保険料

排水管洗浄費

什器備品費

小修繕費

組合運営費